~広い広い世界を、自分の思い通りに切り取れるなんて最高じゃないか。

第13回「移ろう季節を切り取る」

「余白色」という言葉をご存知だろうか?風になびくススキの綿毛。陽に透けて白くなる、ねこじゃらしの輪郭。夏の色彩から本格的な紅葉へと移る間の白。この白を余白色というのだそうだ。なんと美しい言葉だろう。

そんな移ろいゆく季節を感じにKPを手に出かけてみた。

 

 

 

 

 

 

 

東京で暮らし始めた時、街の中で感じる季節に驚いた。子供の頃に過ごした故郷と変わらぬ季節の光や匂いがあったからだ。大自然に出かけて行かなくとも、季節は自分のまわりにいつもちゃんとあるのだ。それは今まで過ごしてきた記憶と結びつくからだろう。春夏秋冬、それぞれの記憶。

 



 



KPのファインダーを覗いて季節を感じることは、頬を撫でる風を感じることに似ている。それぐらいに何気なく、でも気付けばちゃんとその優しさに包み込まれる。目で見ているのではなく、肌で感じているのだ。

とにかく大切なことは、そのままを感じることだ。その点で、私にとっては、光学式のファインダーは、EVFよりアドバンテージがある。

 

 

 

 

 

 

私は整備された大きな公園が好きだ。田舎育ちだから、本当の自然より都会的なものに憧れるのだろうか。

人の手で過ごしやすいように作られた公園も、秋になれば木々は赤や黄色に色づき、虫の声もする。人が作った「自然」もまた立派な自然だと思う。

 

 

 

 

秋へと向かう季節を切り取っていると、とても心地が良い。どうしてなのか?きっと自分の人生の季節と似ているからだろうと思い至った。

生きる命の匂いを四方に発していた夏から、命を大切に内にしまうような秋の季節へ。光は、対決を挑むような夏の太陽から、暖かさを与える優しい秋の太陽へと変わる。

季節は移ろう。あなたは、今、どんな季節を過ごしているだろう。