10月のお題は…『ちいさないのち』

小林義明 師範

すでに何度かテーマとして取り上げているけれど、身の回りにあるちいさないのちを探してみよう。
都会のなかでも、ちょっとした生け垣や草の茂るような空き地があれば、虫や花などたくさんのいのちが見つかるはずだ。

そして、ただ撮影するだけではなく、そのいのちの魅力をしっかり捉えて欲しい。色や形、動きなどよく見てどう見せるのがいいか考えてみよう。

小林義明 師範からの10月のお題はちいさないのちでした。
このお題に投稿いただいた中から師範が選んだ作品を、添削コメントを添えてご紹介します。

10月の挑戦者その1:高橋ユタカさん

近所のカマキリたちの卵鞘をチェックし孵化の様子を撮るのですが仕事もありなかなか立ち会えません。
これは最後の一匹でしょうか、すれすれで間に合いました。

高橋ユタカ
千葉県在住、男性。子供たちの成長を写すためにK-xを購入、そこからどんどんと写真を撮ることにに魅了されました。今は主にカマキリを追っています。PENTAX K-3とsmc PENTAX-D FA MACRO 50mmF2.8で撮影。

 

師範の判定結果は・・・

もう一歩!

小林義明 師範からの添削コメント

 

カマキリの子供が孵化してきて卵嚢から糸でつり下がっているところを捉えている。コメントでは最後の一匹かもとあるけれど、はじめの一匹でこれからたくさん出てくるようにも見えて、いい瞬間だね。

ライフワークで身近なカマキリを撮影しているということで、じっくりと観察していろいろなシーンを撮影しているのもいいと思う。構図もいいし、この調子で撮影し続けたら、カマキリをテーマにした写真展の開催も夢ではないと思う。

そこでレベルアップして欲しいのがピント合わせ。
今回、ビシッとピントが決まっていたら免許皆伝だった。

前回採用したときもそうだったんだけれど、もうワンランク上のシャープさが欲しいところ。この写真もピントが合っている卵嚢や葉の部分はシャープに写っているので、ぶれているわけではない。
でも、主役であるカマキリに対してのピントがちょっと甘いんだ。

この状態のカマキリの体はコントラストが低いので、なかなかピントを判断しにくいところだけれど、顔や体の節、足の様子などまだはっきりと見せられるはずだ。
風で動いているとしたら、納得いくまで何度もシャッターを押して後悔しないようにしたい。

マニュアルフォーカスということなので、ふだんから素早くピントを合わせる練習やバッタやカマキリといった質感の場合はどんな感じがピントが合っているのか再確認しておくようにしよう。ファインダーの視度調整もこまめにやるといいと思うよ。

10月の挑戦者その2:あおベーさん

マクロレンズを通して、イヌタデに花が咲く、ということに去年初めて気がつきました。
淡いピンクの花びらと金平糖のようなおしべがかわいいのですが、
さらにそこにやってくる小さなアリがいることも知り、この2つを画面に納めたいと思いながら待つこと1年。
今年もイヌタデの花の季節となり、つい先日、この場面に遭遇しました。

あおベー
栃木県在住、女性。足元にある小さな自然や美しい色をしたものを撮るのが好きです。PENTAX K-3 Mark IIIとsmc PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8 WRで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

もう一歩!

小林義明 師範からの添削コメント

 

イヌタデの上にいる小さなアリにシャープにピントを合わせたね!
体の細かな毛もしっかり見えているし、ちょうど開いたばかりの花に来ているところもしっかりと分かる。アリのサイズも伝わり、まとまった構図で撮影できている。

基本的にはうまく撮れているのだけれど、ひとつ惜しいと思ったのが被写界深度のコントロールだ。写真はものの形が見えているけれど微妙にボケている状態は、けっこう気になるんだよね。
ここではイヌタデの花全体が画面に入っているので、花全体にピントを合わせてしまった方が見やすい画面になると思う。アリが小さいので、アリに視点がたどり着く前にイヌタデのボケているところが見えて気になってくる。

マクロレンズなので被写界深度を稼ぐのが難しい条件ということを考えても、アリが視点を集めるためにどうしても見えて来るイヌタデの右側にもピントが欲しかったところ。そうすれば落ち着いて見えて来る。あと一段くらい(F11あたりまで)絞ると違ってくると思う。

あと、花の左側にはカメムシの幼虫がいるのに気づいていたかな。赤と黒のツートンの虫がいるんだよ。傷んだ花のようにも見えるけれど、これも気づいてしまうとここにもピントを合わせておきたい感じがする。

ひとつのシーンで余裕があれば、絞りを変えて撮ってみよう。

10月の挑戦者その3:くうさん

夕陽に照らされる芒とミヤマアカネを捉えました。
こういう景色に出会うと夏の終わりと秋の訪れを感じます。

くう
東京都在住、男性。K-50からKPへ。趣味は写真ですって言えるくらいに使い込んでいきたい。PENTAX KPとHD PENTAX-D FA 150-450mmF4.5-5.6ED DC AWで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

もう一歩!

小林義明 師範からの添削コメント

 

夕暮れの草むらの雰囲気をうまく捉えていると思う。トンボって、こんな感じに意外とふつうに草むらで休んでいるんだよね。まわりの草なども分かりやすいことからトンボのサイズ感が出ているのがいいと思う。

それは、それぞれの草などの要素をシルエットできちんと見せられているからだね。形を見せるためにしっかり絞り込んで、被写界深度もきちんとコントロールできているね。

ちょっと惜しいと思ったのは、画面左側の草の重なりが多くなってしまっているところ。手前にある芒は奥行きを出す上では有効なのだけど、右側のすっきりした画面の良さを崩してしまっている。もしかするとファインダー上ではあまり見えていなかったのかもしれないけれど、この芒を入れないようにするか、画面左の上まで伸びている茎を入れないくらいの感じで切り取ると、もっと視点がトンボの方に向かうようになると思う。

絞り込んでいることや逆光なので、ファインダー上だけでは仕上がりをイメージしにくいところがあると思うので、撮影したあとにすぐクイックビューを見てイメージを確認することも大切だと思う。

太陽の動きが速い時間帯だからじっくり考えている余裕がなければ、構図や絞り、露出などを変えながら撮っておいて、あとから選ぶという方法もあるよ。

師範より10月前半の総評

先月の「身近ないのち」から「ちいさないのち」と似ているけれどちょっと違うテーマとなって、戸惑った人もいたかもしれない。「ちいさい」という言葉から、被写体を小さく撮るという感じに捉えてしまった人が多かったのかな。

私の狙いとしては、被写体を小さく撮るのではなくて、そのサイズ感を出して欲しいと思っていたんだ。
そのためには、まわりの景色や一緒に写るものなどを利用してそのサイズを見せることもできるし、ドアップでも小さいがゆえに気づかなかった美しさ、面白さを見せることができるんじゃないかと思う。

小さいがゆえになかなか気づけない被写体の魅力を探してうまく表現してみて欲しい。

記念品のお届けについて

高橋ユタカさん、あおベーさん、くうさんには「免許中伝ミニ木札」をお贈りします!

記念品は11月中旬にお届け予定ですので、しばしお待ちくださいませ。

その他の投稿作品をご紹介

最後に、10月前半のお題の投稿作品の一部をご紹介させていただきます。
こちらは師範の評価とは関係なく、今後挑戦される方に参考にしていただけるよう編集部にて選んで掲載しております。

〔クリックで写真が大きくなります〕

以降のお題へのご投稿もお待ちしています!

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