8月のお題は…『水景

小林義明 師範

日本の自然風景は水と縁の深いものが多い。夏の渓谷は涼しくて気持ちいいし、海の波はいつまでいても飽きることがない。雲や霧だって水が空気中に漂う姿であり、冬になれば氷となって独特の造形も見せてくれる。このように水はさまざまな表情を見せてくれるので、いつでも撮れるすばらしい被写体であり、見方・感じ方によって大きく作品は変化するだろう。あなたならではの水のもつ魅力を活かした景色を探してみよう。

 

小林義明 師範からの8月のお題は『水景』でした。
このお題に投稿いただいた中から師範が選んだ作品を、添削コメントを添えてご紹介します。

8月の挑戦者その1:Shinta603さん

自分の撮った写真のなかでもお気に入りの1枚。「生命の息吹」と言ってもいいのではないでしょうか。
青々とした緑の森、そこに流れ落ちる滝、そして朽ちた倒木にまた新たに芽生える緑が好きです。

Shinta603
千葉県在住、男性。小さい頃からPENTAX機材に囲まれて育ち、カメラには全然興味がなかったものの、気がついたら手にしていました。主に風景や植物を撮影しています。PENTAX K-3とTAMRON SP AF17-50mm F2.8  XR Di IIで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

小林義明 師範からの添削コメント

 

涼しげな滝の姿、猛暑の夏にふさわしい被写体だね。周りの森もきれいでいい場所を撮影している。手前の倒木の感じやコケのつき具合もいいと思う。

フレーミングに関しては安定していて、画面左上に見えている斜めの黒い枝が入らなければ良かったかなというくらいで、上手くまとめていると思う。

ただ惜しいのは、滝の質感を失ってしまったこと。明るめに仕上げているつもりだと思うけれど、滝のハイライトが白とびしていることで滝の質感がなくなってしまった。滝壺のあたりは明るくてきれいに見えるけれど、ベタッと平面的になってしまっているのが分かると思う。

主役である滝の質感をきちんと見せるのは、滝を撮影するときの基本だと思う。

そこで、まずは滝のハイライトの階調を基準に露出を決めること。ただ、ハイライトが飛ばない露出で撮影すると、まわりの景色はかなり暗く写ってしまうよね。この写真は後処理で仕上げているようだけれど、撮影するときにカスタムイメージを調整していくと、ハイライトの調子を残したまままわりを明るく撮影することもできる。

具体的には、カスタムイメージのキーとコントラストを調整して撮影するんだ。キーをあげると中間調の部分が明るく再現されるようになるので、階調性が肉眼で見ているものに近くなる。ややコントラストの低い画像になるけれど、そこから再調整することで階調豊かな仕上がりにできるはずだ。

私はふだん後処理はほとんどしないのだけれど、滝の撮影だけは別。撮影現場で階調をしっかり残すように撮影しておき、必要ならちょっと調整するようにしている。ぜひ、一度試してみて欲しい。

8月の挑戦者その2:あつしさん

災害によってできてしまった湖に佇む立ち枯れた木々を朝霧が覆い、
それを湖面が優しく反射する様に儚さと美しさを感じてシャッターを切りました。
自然の厳しさを映した鏡のような湖面に見惚れました。

あつし
愛知県在住、男性。K-mに始まり今はKPとK-1 Mark IIを使い風景や野鳥撮影を楽しんでいます。日々勉強することばかりですがPENTAXのカメラと共に楽しく撮影をしています。PENTAX K-1 Mark IIとHD PENTAX-D FA★70-200mmF2.8ED DC AWで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

小林義明 師範からの添削コメント

 

霧に霞む湖面の景色だろうか。色を作り込んで独自の世界を生み出しているね。カラーともモノトーンとも言えない色彩が気持ちいい。この場所の雰囲気をうまく伝えることができていると思う。

でも、いくつか気になるところがあるんだ。

ひとつはフレーミング。
ピントを合わせている枝の中央あたりと、後ろのぼけている枝が重なってしまっていること。視点がピントの合っているところから後ろへ移動していく部分なので、意外と気になる。
これはアングルを高くするかカメラポジションを右に移動すれば重ならずに撮影できたと思う。また、画面左下の小さな黒い部分は意図的だったのだろうか。意外と目立つので入れない方がいいと思う。

もうひとつは絞りの選択。
ここで開放絞りを選んだのも意図的なものだろうか。背景をぼかす場合、写真を見るサイズによって適度なボケ具合があり、この場合は小さく見るとちょうどいいのだが、大きく伸ばしたときには背景がボケすぎに感じる。霧で背景がうっすらと霞んでいてくっきり見えることはないので、もう少し絞り込んで後ろにもピントを合わせて良かったのではないかと感じている。そうすると、水面の細かな様子や波紋ができている様子などもきちんと伝わるようになると感じる。

伝えたいイメージを表現できるいいセンスがあるのだから、基本となる撮影技術を磨いて、より完成度を高めるようにして欲しいと思う。

8月の挑戦者その3:風丸さん

不幸があり、止むを得ず帰省した際の写真です。本来はハスの花が咲き乱れている水面ですが、
大雨の影響か岸辺にハスは殆ど見当たりませんでした。代わりに青空が水面を彩っていました。

風丸
東京都在住、男性。お盆の帰省もままならず、東京で身を潜めておりますが時折無性に写真が撮りたくなり、注意しながら撮影しています。PENTAX KPとSIGMA 10-20mm F3.5 EX DC HSMで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

もう一歩!

小林義明 師範からの添削コメント

 

まるでウユニ塩湖のような美しい水面への映り込みが印象的な作品だね。この写真は場所も分かりにくいようなフレーミングがされているのもいいと思う。風景はいつでも同じものが撮れるわけではないので、いい出会いがあったよね。

理想をいえば完全に水面が凪いでくれれば良かったけれど、それは難しいかな。

ひとつ気になるのは、手前の水中の地面が見えているところ。この部分は色が違うために目立つように思うので、見せなくても良かったように思う。せっかく画面を青空の気持ちいい青で統一できているので、その統一感を貫きたかった。

そのために、カメラアングルを変えてみたりカメラポジションを前後にすることで手前まで青空の反射を入れることはできなかっただろうか。
空のムラの出方からC-PLフィルターは使っていないように思うのだけれど、使っていたとしたらあえてここでは使わずに手前まで水面の反射を残しておいて良かったと思う。

このようなシーンは撮れそうで次に撮ろうと思ってもなかなかチャンスに恵まれないもの。いい景色と出会うことができたら、構図をちょっとずつ変えておくとかフィルターの効果を変えておくなどいろいろな撮り方を試しておき、確実に残しておくというのもあとで後悔しない方法だと思う。

師範より8月の総評

猛暑のなかたくさんの応募、ありがとう!
力作が多くて今回の選考はなかなか悩ましかった。

暑い時期は私も水辺の撮影が好きなのでこのテーマとしたのだけれど、暑さを忘れるにはちょうどよかっただろうか。

そのなかで気になったことがひとつ。
滝や水の流れをスローシャッターで撮影している写真が多く見られたのだけれど、カメラブレしてしまっているものが多かった。
SRが搭載されているとはいえ、ちょっとしたことでカメラブレは起きてしまう。作品として人に見てもらうのであれば、そのあたりは自分に厳しくチェックしておいて欲しい。

免許皆伝の目安としては大伸ばしをしても十分耐えられるシャープさが必要だということは覚えておいて欲しい。

 

記念品のお届けについて

風丸さんには「免許中伝ミニ木札」、Shinta603さん、あつしさんには「門前払いミニ木札」をお贈りします!

記念品は10月上旬にお届け予定ですので、しばしお待ちくださいませ。

その他の投稿作品をご紹介

最後に、8月のお題の投稿作品の一部をご紹介させていただきます。
こちらは師範の評価とは関係なく、今後挑戦される方に参考にしていただけるよう編集部にて選んで掲載しております。

〔クリックで写真が大きくなります〕

以降のお題へのご投稿もお待ちしています!

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