1月のお題は…『小さな冬』

小林義明 師範

2020年の夏は猛暑となり季節感が変わってしまったところも多かった。2021年の自然はどんな景色を見せてくれるだろうか。大きな景色は天候に恵まれないと難しいところもあるので、ちょっと視点を小さくして冬を探してみてもらいたいと思う。沖縄から北海道までそれぞれの冬があるので、地域ごとに特徴的な冬の姿をクローズアップしてみよう。ちょっと一般的ではないと思われる被写体のときは解説も加えておいて欲しい。幅広い日本、意外な冬が見られることを期待している。

 

小林義明 師範からの1月のお題は小さな冬でした。
このお題に投稿いただいた中から師範が選んだ作品を、添削コメントを添えてご紹介します。

1月の挑戦者その4:あおべーさん

北関東平野部の冬は毎日のように晴天が続き、その分夜には放射冷却が起こって、
朝晩の冷え込みが厳しくなるのが特徴です。
観察してみると、湿度や夜の気温の下がり具合によって、
霜の結晶のでき方が違ってくるようです。
雨が降った数日後の、夜の気温がぐんと下がった朝。
霜の結晶が長く伸びたところがおもしろく、撮ってみました。
しかしそれも、太陽が上がって朝日が当たると夢のように消えていき、
今日も冬晴れの一日となるのです。

あおべー
栃木県在住、女性。足元にある小さな自然や美しい色をしたものを撮るのが好きです。門前払いの木札が増えるごとに、打たれ強くなっている気がします(笑)PENTAX K-50とsmc PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8 WRで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

小林義明 師範からの添削コメント

 

枯れた草原についた小さな霜。いかにも冬らしい被写体だね。分かりやすくていいと思うよ。しっかりと結晶ができていて、良い状態の霜をみつけていると思う。

霜っていつでもできるように思っている人も多いかもしれないけれど、いつでも見られるものではなく、気温が低いことと適度な湿度が必要だ。冬でも乾燥しているところにはできないし、暖かい場所ならよけいにみつけるのは難しい。それに早起きしなければ見ることもできないしね。

さて、作品として見てみると基本的な狙い方はいいと思う。

暗い影の部分を背景に光の当たっている霜を配置しているので、その存在をしっかりと見せることができている。

あとはこの霜をどう強調するかが大切なのだけれど、まわりに同じように白い部分が多いので、主役が目立ちにくくなってしまった感じがする。

このようにコントラストが高い画面ではどうしても明るい(白い)部分に視点が向いてしまうので、画面の右側に視点が寄せられてしまうんだ。
マクロレンズで撮影しているので、もうちょっとアップで撮影できるのなら、画面右側を減らすようなフレーミングにすると、主役の霜を引き立てることができるよ。

もうひとつ気になったのは、ピントの合わせ方。
測距点が5点のエリアを使っているようだけれど、こういうマクロ撮影では被写体のどこにピントが合っているかで印象が大きく変わってくる。
セレクト1点で自分がここだと思う場所にピントを合わせるようにしよう。

構図が整ったら、あとはもう少し絞り込んでおいた方が、被写界深度が深くなって霜の結晶をきちんと見せられるようになるよ。可能であれば三脚を使ってじっくり撮ることもしてみて欲しい。

1月の挑戦者その5:彩北写人さん

この日の朝の最低気温は、-26.4℃小さな赤い実も。霧氷が付きました。

彩北写人
北海道在住、男性。北海道在住の、古希70歳になる田舎ジジィです。身近にある、下手な風景などを撮っています。よろしくお願いします。PENTAX K-70とSIGMA 18-200mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSMで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

小林義明 師範からの添削コメント

 

スカッとした青空を背景に、赤い実と枝についた霜の白が映えているね。撮影した日の朝はマイナス26.4℃だったということで、その空気感も伝わってくる。よく見ると赤い実のひとつは皮が破れて中の種も見えている。小鳥がつついたのだろうか。そんなことが想像できるところもいいね。

光の選び方もよくて、赤い実の色をきれいに再現できているし、霧氷の質感や立体感も良く出ている。種のところに光が当たっていれば、もっとその種もよく見せることができたね。

この写真で惜しいと思うのは、小枝が混み入っていることだ。まわりの枝が視点を引き寄せてしまっているので、もう少しすっきりと見せられるようにしたかったところ。
理想をいえば、赤い実とその下のピントが合っている芽がついている小枝だけで充分だと思うんだ。

この場合はもっとアップで切り取るか、他の赤い実を探すという方法が考えられる。
撮影データを見ると、ズームレンズの画角はまだ余裕があったから、もう少しアップで撮ることもできたかな?そのときは画面左側にちょっとだけ見えている枝の先を見せないようにフレーミングすることでだいぶすっきりする。トリミングしたものをつけておくので、参考にしてみて欲しい。

他の赤い実を探す場合は、納得するまでじっくり探してみよう。自分のイメージに合った被写体をみつけるということはとても大切なので、イメージに合わなければ撮らないという選択をしてみるのもいいと思う。

大きな風景を撮影するのと違って、じっくり見れば見るほどいろいろな被写体が見えて来るし、自分だけの被写体をみつけやすいのも小さな自然の面白いところ。それだからこそこだわりを持って撮影してみよう。

 

1月の挑戦者その6:kazeさん

栗林公園の蓮池は毎年冬になると枯れた蓮で荒涼とした景色が広がります。
その一部を切り取って撮影しました。

kaze
香川県在住、男性。光学ファインダーに魅せられてPENTAX一眼レフの虜になりました。祖父に貰ったSP FからLX~K-1 Mark IIまでずっとPENTAXのカメラを使っています。機材オタク?でもあります。PENTAX K-1 Mark IIとHD PENTAX-D FA70-210mmF4ED SDMで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

小林義明 師範からの添削コメント

 

地元の冬を探して公園の蓮池の様子を切り取ってみたということだね。暖かい地方では、冬といっても霜も雪もないという場所もあるから、自分なりに被写体を探してみた狙いはいいと思う。ハスは枯れた葉や茎だけでなく花托も面白い形をしていて、被写体としてもいいよね。

ただ、意図が伝わりにくい写真になってしまったように思うんだ。

かなりコントラストが高く暗い画面にしたことで、何が写っているのか分かりにくくなってしまった。ここにも花托が写っているようだけれど、分かりにくいよね。

この写真の失敗は、テクニックに走ってしまったからのように思う。もっとストレートに撮影したら撮りたかったイメージは伝わりやすくなったのではないだろうか。

というのは、カスタムイメージを銀残しにしているのだけれど、これでは黒っぽいところやシャドー部がつぶれてしまい、見せたい花托を見せられなくなってしまった。
銀残しはコントラストを上げてハイライトを強調するカスタムイメージなので、シャドー部を見せるのには不向きなんだよね。

結果的に明るい茎や葉の形、松葉の作る流れが目立っていて肝心の花托が目立たなくなっている。

この構図は花托を画面の中央に配置しているので、ここが見せたかったポイントになると思うんだ。でも、そこを分かりにくくしてしまったために意図が伝わりにくくなっている。

この構図ではなく、思い切って画面左側をカットするようにすると、明るいハスの茎の付け根に花托がひっそりと落ちているという感じに見せられると思うよ。

カスタムイメージを変更するときは、その効果が活きるように構図も考え直してみよう。

師範より1月後半の総評

小さな冬の2回目。マクロ的な視点で身近なところからいろいろなものを探してもらおうと意図していたのだけれど、冬という部分が難しかっただろうか。

氷とか霜といったものに限らず、地元で見られる冬の自然の姿はたくさんあると思う。
冬にやってくる小鳥や、冬芽、越冬している蝶のサナギなどが思いつくし、具体的なものとしてではなく、光の感じや空気感など自分が感じた冬を表現してくれればいいのだと思う。

私の道場では、作者の撮りたかったであろうイメージをどうしたらきちんと表現できるのかを主体に最終的に大伸ばししても恥ずかしくない作品を仕上げてもらうことを考えている。

こんなものを見せたら恥ずかしいとか考えずに、テーマを自分なりに読み取って、作品を撮ってみて欲しい。

記念品のお届けについて

あおべーさん、彩北写人さん、kazeさんには「門前払いミニ木札」をお贈りします!

記念品は2月下旬にお届け予定ですので、しばしお待ちくださいませ。

その他の投稿作品をご紹介

最後に、1月のお題の投稿作品の一部をご紹介させていただきます。
こちらは師範の評価とは関係なく、今後挑戦される方に参考にしていただけるよう編集部にて選んで掲載しております。

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