3月のお題は…『身近な早春』

小林義明 師範

少しずつ暖かくなり気持ちも明るくなってくる季節。野山の植物や虫達も行動を始めて、日ごとに少しずつ変化する景色に気づくと嬉しくなる。まだ本格的な春ではないけれど、身近なところを毎日のように見ていると、ちょっとした変化にも気づくことができるようになる。お気に入りの場所を散歩しながら、春を探してみよう。あなたはどんな春をみつけることができるだろうか。写真を見る人の気持ちも温かくなるような春を楽しみにしているよ。

 

小林義明 師範からの3月のお題は『身近な早春』でした。
このお題に投稿いただいた中から師範が選んだ作品を、添削コメントを添えてご紹介します。

3月の挑戦者その1:tokutoku1002さん

梅林に福寿草が咲き始めました。
福寿草は春を告げる花、晴天の順光で早春をイメージしてみました。

tokutoku1002
東京都在住、男性。風景写真を中心に、旅写真やスナップ写真を楽しんでいます。
PENTAX KPとHD PENTAX-DA★11-18mmF2.8 ED DC AWで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

小林義明 師範からの添削コメント

 

満開のフクジュソウ、そのうしろには紅梅が咲いているという感じかな。すっきりと晴れた青空もきれいだし、春らしい色合いがいいね。影が出ると黄色が濁ってしまうけれど、順光で影があまり出ない状態で撮影しているのもいいと思うよ。

この構図、悪くないと思うけれど、ピント位置がちょっと違う感じがするね。画面のなかでは右側のフクジュソウが大きく写っていて目立つからここにピントを合わせているのだと思うけれど、花が重なりすぎていてフクジュソウの形が分かりにくい。
この場合は真ん中にあるフクジュソウにピントを合わせて、手前の花はぼかしてしまった方が花の形なども伝わりやすくなったんじゃないかな。

このような花がたくさん集まっているときは、ボリュームがあるように見せることも必要なんだけれど、花の形がきちんと分かるようにすることが大切なんだ。そうしないとただの色の固まりになってしまう。これは梅や桜を撮影するときにも共通することなので、覚えておくといいよ。

あとは中央のフクジュソウの後ろでぼけている葉がちょっと目立つ感じがするので、数cmカメラポジションを右に移動して、手前の花で隠すようにするといいね。

それにしても色鮮やかな花の景色、羨ましいなぁ。
北海道はこの添削をしているときにやっと雪融けのシーズンでフクジュソウが咲き始めた頃だからね。

3月の挑戦者その2:ススムさん

2月の終わりにウメの花をついばむメジロを撮影しました。
空の青色、ウメの薄紅色、メジロの緑色というシンプルな色づかいが、早春の爽やかさを演出しています。

ススム
埼玉県在住、男性。生き物の写真を撮るのが趣味で、特に昆虫のマクロ撮影が大好きです。PENTAX K-1とHD PENTAX-D FA 150-450mmF4.5-5.6ED DC AWで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

もう一歩!

小林義明 師範からの添削コメント

 

ウメの蜜を吸っているメジロの姿、見事に捉えているね。ウメの咲き具合もいいし、背景の青空もすっきりとしていてとてもきれいだ。撮影データではトリミングしたことになっているけれど、クロップしただけでこのフレーミングができるのであれば、かなり近くで撮らせてもらっていていい感じだ。

かなり完成度が高くなっているけれど、ひとつだけ気になったことがある。
それは、顔の影なんだ。

いきものを撮影するときに晴れている日の撮影は影の出方に注意する必要がある。このシーンでも顔の目のあたりがちょっと影になってしまったのが惜しいね。
理想を言えば、顔のあたりにも光がきちんと当たって顔の色がきれいに再現され、目にキャッチライトが入っていて欲しかった。そうなればメジロの表情ももっと生き生きとして見えるようになる。

そのような動きをしてくれるかは運次第だし、小鳥の動きはとても速いのでその一瞬を捉えるのもなかなか難しい。

でも日頃からいきものを撮影するのが好きということなので、被写体の表情を生き生きと見せることを意識してさらに精進して欲しい。

3月の挑戦者その3:いなちゃんさん

雨後のチューリッブの葉に春の青空が浮かんでいました。

いなちゃん
長野県在住、男性。のんびりじっくり虫や草花の写真を撮るのが好きです。PENTAX K-5IIsとsmc PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8 WRで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

小林義明 師範からの添削コメント

 

とてもいいところに注目しているね!
こういう視点は大好きだよ。

庭に植えてあるチューリップなのだろうか。その葉の中にたまった水に青空が映り込んでいるところを撮影しているということだね。
芽吹いてきたチューリップの葉に温かくなった雨が降って水がたまり、青空が見えてきてまたいっそう暖かくなっていく、そんなことが想像できるよね。

さて、写真としての難しさは、そういった状況などを言葉で説明しないで写真の内容で伝えること。
撮影した本人はまわりの状況も含めて知っているから自分の写真を見るといろいろなことが思い出せるんだけれど、写真だけを見ている人に対していろいろなことが伝わるかというと、やっぱり難しい。

だから必要最低限のことを分かりやすく画面に盛り込んで伝える必要があるんだ。

この写真を狙った意図はとてもいいと思うのだけれど、水がたまっている様子や雨が降ったことなども伝えようとすると、ちょっと足りない。
たとえば、葉のまわりに水滴がついていると雨が降ったあとのように見えるし、水の透明感もあるといいね。

見ていて想像がふくらんでいく写真が撮れるようになったら、自分の世界を伝えることができるようになるよ。

そのために、自分がイメージしたことを写真で伝えるために何が必要かじっくり考えてみよう。ただ、1枚の写真の中にたくさんの情報を盛り込もうとするとただの状況写真になってしまうことも多いので、そういうときは組写真として作品をまとめるようにするといいんだよ。

師範より3月前半の総評

北海道はまだ雪が残っていて春が待ち遠しいと思っていたところに春らしい写真がたくさん送られてきて、とても羨ましかったなぁ。
やはり春の色彩は気持ちがうきうきしてくるし、きれいだよね。

春は自然の変化も大きいし、ちょっとした変化に気づくとたくさんの被写体をみつけることができるいい時期だ。

ただ、鮮やかな色に目をひかれてしまってそのものだけを見ている写真になってしまうことも多い。被写体だけを見ているためにまわりが見えていなくて画面整理の必要な写真があったよ。逆にまわりを見せようとしているのだけれど、整理しすぎて雰囲気が伝わらないというものもあったな。

写真だけで伝えるということを意識して、いろいろ工夫してみよう。

記念品のお届けについて

ススムさんには「免許中伝ミニ木札」、tokutoku1002さん、いなちゃんさんには「門前払いミニ木札」をお贈りします!

記念品は4月中旬にお届け予定ですので、しばしお待ちくださいませ。

その他の投稿作品をご紹介

最後に、3月前半のお題の投稿作品の一部をご紹介させていただきます。
こちらは師範の評価とは関係なく、今後挑戦される方に参考にしていただけるよう編集部にて選んで掲載しております。

〔クリックで写真が大きくなります〕

以降のお題へのご投稿もお待ちしています!

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