3月のお題は…『身近な早春』

小林義明 師範

少しずつ暖かくなり気持ちも明るくなってくる季節。野山の植物や虫達も行動を始めて、日ごとに少しずつ変化する景色に気づくと嬉しくなる。まだ本格的な春ではないけれど、身近なところを毎日のように見ていると、ちょっとした変化にも気づくことができるようになる。お気に入りの場所を散歩しながら、春を探してみよう。あなたはどんな春をみつけることができるだろうか。写真を見る人の気持ちも温かくなるような春を楽しみにしているよ。

 

小林義明 師範からの3月のお題は『身近な早春』でした。
このお題に投稿いただいた中から師範が選んだ作品を、添削コメントを添えてご紹介します。

3月の挑戦者その4:koothさん

近所の花壇にキタテハが出てきました。
気温やや低めでまだ動きが鈍いので、のんびり寄って撮影。

F値は大体F8-F11辺りを動かしながら撮ったので不正確です。

kooth
神奈川県在住、男性。Qシリーズをメインで、KPをサブで使っています。PENTAX Q10とLAOWA 60mm F2.8 Ultra-Macroで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

もう一歩!

小林義明 師範からの添削コメント

 

ムスカリにやって来たキタテハをかなりアップで撮影できている。しかもミラーレス機であるQの小さな液晶モニターで、マニュアルフォーカスながらしっかりピントを合わせているね。

色の組み合わせもよく、画面いっぱいにキタテハのオレンジとムスカリの青を入れることで、それぞれの存在をしっかりと伝えられている。蜜を吸おうと口吻を伸ばそうとしている瞬間を捉えているのもいい。

うまく撮影できていると思うのだけれど、ちょっとマニアックになった感じもするんだ。それはキタテハの翅が先端まで画面に入っていないので、この切り取り方だと知らない人はチョウであることが分かりにくいのではないだろうか。虫好きなら、ああ〜って分かるけどね。

もしかすると越冬から覚めたばかりで翅の先端が傷んでいたのかもしれないけれど、それも春を感じるひとつの姿だし、翅を広げて日向ぼっこをしている感じも伝えられる。なによりも誰が見てもチョウと花が写っているということが伝わることが大切だと思う。

逆にもっと顔をアップで狙って目の感じや口吻の形を強調して怪獣みたいに見せることで意外性を感じさせる撮り方とか、顔を見せずに羽根の模様や色だけを強調する撮り方も写真として面白いけど、春を感じさせるには難しいよね。

だから、ここではキタテハの全身を見せた方が良かったと思うな。

技術的な問題はないし、この機材だともっとアップも撮れそうなので、別のテーマのときにまた面白い写真を見せて欲しい。

3月の挑戦者その5:アフリカおやぢさん

四季を通じて登っている地元の山で、毎年早春に咲く雪割草を楽しみに待っています。

ちっちゃい雪割草を手持ちマクロで撮るのはブレとの闘いゆえ、
K-1 Mark IIの手ぶれ補正の素晴らしい性能に脱帽です。

アフリカおやぢ
新潟県在住、男性。ヘタレなのに山を歩きながら、ペンタで写真撮ってます。PENTAX K-1 Mark IIとsmc PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8 WRで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

小林義明 師範からの添削コメント

 

ユキワリソウを優しい雰囲気で捉えているね。フワッとしたボケ具合とシャープなピントの組み合わせがとてもきれいだ。シベについた小さな花粉もしっかり見えているね。このユキワリソウの見せ方に関してはいいと思う。

あとは背景とかまわりの雰囲気をどう伝えるかを考えてみよう。この写真だと、まわりの雰囲気がこの場にいた人しか分からないと思うんだ。

ユキワリソウが咲き始める時期は、景色としてはあまりきれいではないけれど、どんなところに咲いているのかとか、他の花が咲いているのかなども伝わってくると写真を見ながら大きな景色も想像できるようになる。

また、背景をぼかしているけれど枯れ草か枝の線状になっているボケはちょっと気になる。背が低い花だけにこのへんは難しいところなんだけれど、大きくぼかすとしてもこのような直線的なボケは入れない方がすっきりする。

ユキワリソウの明るい色を強調するため背景に暗い色を選べると、花のポートレートみたいな作品にできるよね。背景が暗くなれば草などがあっても目立たなくなるメリットもある。

方法としては何かを利用して花の後ろが影になるようにするだけ。一緒に撮影に行っている人がいたら影を作ってもらうのもいいね。小細工するのはあまり勧めないのだけれど、ちょっとした工夫で大きく印象が変わるので、どうにもならないときには試してみて欲しい。

3月の挑戦者その6:Day-Oさん

初めて投稿します。寒緋桜とヒヨドリです。
春の穏やかな日の雰囲気が出ていればよいのですが。

Day-O
神奈川県在住、男性。初心者ですが、この道場のお題を念頭に、カメラをぶら下げて散歩をするのが趣味です。PENTAX KPとHD PENTAX-DA 55-300mmF4.5-6.3ED PLM WR REで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

小林義明 師範からの添削コメント

 

寒緋桜とヒヨドリの組み合わせ、春らしいよね。背景のぼけているところもピンクと白の組み合わせで暖かな感じだ。うまく春をみつけていると思うよ。

さて、いい被写体をみつけているのだけれど、まだそのイメージをすっきりと伝えられる写真には仕上がっていないみたいだ。

ここでは寒緋桜にピントを合わせているので、主役にしたいのはここだと思うのだけれど、このピントを合わせているところも花や枝同士が重なっていたり手前の前ボケが重なってゴチャゴチャしているため主役としての印象が弱くなってしまっている。脇役として画面に入っているヒヨドリの方が顔に表情があり、そこをはっきりみたいという感じにもなる。

一瞬のことで構図を考える余裕がなかったかもしれないけれど、私だったらちょっと右に移動して、ヒヨドリに枝が重ならない場所からヒヨドリにピントを合わせて撮影したと思う。ただ、手前にも枝がボケて入っているので、まったくヒヨドリに枝が重ならないようにできたかどうか??

とくにこういった枝が混みいった花木を撮るときは、花以上に枝が目立つので気をつけて枝の配置を見るようにしよう。

あと、撮影データを見ると深度優先のプログラムAEで撮影していて、自分で絞りをコントロールしていなかったようなので、もっと絞りを開けて撮影したら、ちょっと印象が違ったと思うんだよね。ファインダーで見ているときは開放絞りに近いボケ具合なので、F9まで絞り込んでいると前ボケの印象は違ってきていると思う。このあたりは自分で意識してコントロールするようにしよう。

師範より3月後半の総評

みんな身近な春を感じているようで、うらやましい。
それに前回もいったけれど、それぞれの視点で春を探しているのがいいね。

自然を素材として作品を撮影するときは、自然の事象をしっかり捉える撮り方と自分の印象・心象を作品に盛り込む撮り方があるけれど、いずれもその内容が誰にでも分かりやすく伝わることが大切。

カメラやレンズを選択するだけでなく、自分も積極的に動いてどうやったらその内容が伝わりやすくなるのかを考えて撮影していこう。

今年の春は例年よりもだいぶ早くて、撮影に行きたいというみんなの気持ちを自然がくみとってくれたようにも思う。はやく自由に撮影に出られるような状況になって欲しいよね。

記念品のお届けについて

koothさんには「免許中伝ミニ木札」、アフリカおやぢさん、Day-Oさんには「門前払いミニ木札」をお贈りします!

記念品は4月中旬にお届け予定ですので、しばしお待ちくださいませ。

その他の投稿作品をご紹介

最後に、3月後半のお題の投稿作品の一部をご紹介させていただきます。
こちらは師範の評価とは関係なく、今後挑戦される方に参考にしていただけるよう編集部にて選んで掲載しております。

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以降のお題へのご投稿もお待ちしています!

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