4月のお題は…『懐かしさ』

こばやし かをる 師範

懐かしいという感情や過去を思い返す能力は、ほかの動物にはない人間特有のものだと言われています。誰しもが感じる「懐かしさ」は、自分の過去を肯定し生きている時間を感じること。変わらない空気、あの頃のままの姿、小さい頃の自分、印象深い思い出などを表現してみてください。それぞれのバックボーンを感じさせてもらえる作品を期待しています。
なぜ懐かしく感じるのか。コメントを添えていただければと思います。

 



こばやし かをる 師範からの4月のお題は『懐かしさ』でした。
このお題に投稿いただいた中から師範が選んだ作品を、添削コメントを添えてご紹介します。

4月の挑戦者その4:capriさん

古民家に置かれていた数々のおもちゃ。
子供の頃、毎日のように遊んでいたことを思い出しました。

capri
埼玉県在住、男性。スナップ、風景写真を中心に写真を撮っています。最近気になっているカメラはPENTAX K-3 Mark IIIです。PENTAX KPとHD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WRで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

こばやし かをる 師範からの添削コメント

 

お手玉、メンコ、だるま落としに輪投げ。日本の文化を感じられる一枚です。
玩具箱から見ても、長い年月の間手入れをしながら丁寧に保管している方の心づかいも感じます。
トーンや色合いも相応しく、質感もよく伝わります。

ーしかし、何かが足りない。
なぜか。
「子供の頃毎日のように遊んでいた」とありましたが、懐かしさを感じるワクワクする気持ちが伝わってこなかった。
良質なイメージ写真にとどまっているということです。
この玩具を差し出してくれるご老人がいたらどうでしょう?
あるいは、古民家であれば縁側や軒先、畳の部屋など、自分自身が遊んでいた空間はどうなっているのでしょう?
ぜひ子供の頃に見た日常を合わせて切り取ってみてください。そこに古き良き物語が生まれてくるはずです。

4月の挑戦者その5:阿部 史日呼さん

少し前までは犬は外で飼うもの。庭を駆けまわり、気配を感じて顔を出す。
そんな風景をよく見かけた気がします。

阿部 史日呼
大阪府在住、男性。初めて購入した一眼レフがPENTAX K100D。それからずっとPENTAXを使い続けています。
かっこいいカメラが大好きです。PENTAX K-1 Mark IIとRICOH XR RIKENON 50mm F2で撮影。

 

師範の判定結果は・・・

もう一歩!

こばやし かをる 師範からの添削コメント

 

コメントを見て「確かに」と納得。今はなかなか外庭で犬を飼うお宅も少なくなりました。
塀越しに切ない表情で遠くを見つめる犬の視線気になります。
しかし、このシーンでは犬の心情ではなく、「あそこには犬がいるから帰りに寄ろう」「今日は元気かな?」という出会いへの好奇心、ひと時のコミュニケーションを通じて〝よく見かけた光景〟である日常の物語を伝えてもらいたいと思います。

犬がこちらに気づいて振り向くタイミングを待つことが重要です。
そうすることで、自分自身がその場にいることを見ている人に感じさせることができます。
また、塀と軒下の影が重たく画面のバランスがとれていないので、もう少し左側をあけると良いでしょう。

4月の挑戦者その6:クウさん

雨上がり、夕暮れ迫る帰り道。学生のころ毎日通った道を、今また子ども達が歩いて行く。
友達と笑いながら帰った日々を思い出しながら撮影しました。

クウ
東京都在住、男性。K-50からKPへ。趣味は写真ですって言えるくらいに使い込んでいきたい。PENTAX KPとsmc PENTAX-DA★50-135mmF2.8ED[IF] SDMで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

もう一歩!

こばやし かをる 師範からの添削コメント

 

暮れなずむ空、二人きりで歩く河原。手をつないで歩くなんて年を重ねるとなかなかできないことも多い。
そんな二人に学生時代の自分自身の思いを投じた好ましい作品です。広々と広がる空も、バランスの良い構図も、水たまりに写り込む姿も二人だけの空間であることを強めてくれています。

残念なのは全体の色。WBで色温度をカスタマイズしているようですが、全体が緑色になっており、かえって色に偏りと濁りが生じているのはいただけない。
思い切ってWBマルチパターンオートやWB太陽光で〝あの頃の清々しい気持ち〟をストレートに表現した方が良いと思います。また、懐かしさを強調するためにデジタルフィルターのシェーディングやトイカメラを使ってみてもいいでしょう。
あと一歩の工夫、丁寧な画作りを心掛けてください。

師範より4月の総評

初道場への挑戦ありがとうございます。
たくさんの作品に触れることができて嬉しく思います。選ばれた作品の他にも添削をして差し上げたい作品は多数ありました。

皆さんの心意気を感じながらも厳しい判定をしましたが、「懐かしさ」=単純に古いものではないということ、何気なく過ごす日常生活の中にも物語が存在することを理解していただけたのではないかと思います。
上手に、キレイに撮るだけではなく、伝えることの難しさや気持ちの表現、視点を変えれば自分だけの世界が生まれること。
この「日常×物語」道場で思考の幅をグッと広げゆくきっかけにしてもらいたいです。

次回5月は「爽やかさ」です。被写体は問いません。挑戦お待ちしております!

記念品のお届けについて

阿部 史日呼さん、クウさんには「免許中伝ミニ木札」、capriさんには「門前払いミニ木札」をお贈りします!

記念品は5月中旬にお届け予定ですので、しばしお待ちくださいませ。

その他の投稿作品をご紹介

最後に、4月後半のお題の投稿作品の一部をご紹介させていただきます。
こちらは師範の評価とは関係なく、今後挑戦される方に参考にしていただけるよう編集部にて選んで掲載しております。

〔クリックで写真が大きくなります〕

以降のお題へのご投稿もお待ちしています!

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