~広い広い世界を、自分の思い通りに切り取れるなんて最高じゃないか。

第8回「モノクロフィルムで切り取る」

今日の相棒は、PENTAX SFX。1987年に発売された世界初のフラッシュ内蔵AF一眼レフ。通常シャッターボタンのある右肩にあるLCD表示パネルがペンタ部にあり、逆にペンタ部にあることが多いホットシューが右肩にあるなど、ちょっと変わったカメラである。そこには、開発陣の「新しいことをやってやろう」という意気込みを感じる。と同時に、「他とは違うことをやりたい」という純真な子供心のようなものも感じるのは、私だけだろうか。

 

 

 

フィルムを装填するためにボディを手に持つ。フィルムを入れる際には、直射日光を避け、自らの身体で作った影の中にカメラを入れる。そして、裏ぶたロックボタンを押しながら、裏ぶた開放レバーを押し下げる。フィルム・パトレーネをフィルム室にセットし、ゆっくりとフィルムの先を引き出す。フィルムがたるまない様に、その先端をボデイ内部の先端マークにそっと合わせる。裏ぶたを閉めると、カシャーン、カシャーン、カシャーンと、撮影可能な1枚目までフィルムを自動で送ってくれる。一連の動作は、フィルムカメラを使う作法といえるだろう。その作法が、写真と向き合う心を整えてくれる。

 

 

 

 

語弊を恐れずに言えば、モノクロ写真のいいところは、色がないことだ。色には意味があるが、それにだけに目を奪われると本質が見えなくなることがある。切り取るべき、そのものに潜む一本の線(芯)を見つけるには、モノクロ写真は、向いている様に思う。

 

 

 

今までカラーでしか撮ったことない人にとっては、最初モノクロは難しいだろう。目で見ている風景がカラーなのだから、当たり前だ。どこか捉え所のない写真を量産してしまうだろう。でも、撮っては見返しを繰り返し「モノクロの目」が出来てくれば、自然と形や線、光や陰影が見えてくる。「カラーの目」では、見えていなかったものが見えてくると写真はもっと楽しくなる。物の形や光の階調は、こんなにも美しいのか。それに気づいた時、あなたの写真はもっとあなたの想いに近づいてくれるはずだ。

 

 

 

今回はフィルムカメラにモノクロフィルム(オリエンタル ニューシーガル400)を使ったが、難しく考えずに、今持っているデジタルカメラのカスタムイメージを「モノトーン(モノクロ)」にして撮ってみて欲しい。注意して欲しいのは、最初から、モノクロモードで撮影することだ。カラーで撮って後から、気になるものだけモノクロにしようと思っていると、モノクロでこそいい写真を見逃してしまう。