>>前回は掲載時点ではまだ未発売だったHD PENTAX-DA★16-50mmF2.8ED PLM AWで撮った写真を掲載した。注目のレンズだけに多くの方に注目していただいたようだが、皆さまお買い上げいただきましたでしょうか? ハイありがとうございます。僕はまだ買っていません。人に勧めておいてなんなんだとお叱りを受けそうだが、実のところ迷っている。K-3 MarkIIIで常用しているHD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WRにとても満足しており、今回の写真もすべてこれ。サイズと重量がちょうどいいのだ。だから16-50mmを買っても、気がついたら文鎮か漬物石になってしまうのではないか。いやおまえは小さい男だな、紙や漬物をしっかり押さえてくれて、いざとなればカメラに着けて写真も撮れる二刀流だと考えてみろ。お彼岸だからか、祖父が天国でそう言っている気もする。祖父は旅行へ出掛けるたびに新しいカメラやレンズを買っていたらしい。見習わなくては。

(編集後記:その後HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8ED PLM AWもご購入いただけました。鹿野さんお買い上げありがとうございます!)

 

 

そういえば最後に旅らしい旅をしたのは、コロナウイルスが日本ではまだ横浜沖のクルーズ船だけで流行っていた頃だった。何かの仕事で京都に行き、そのついでに一泊して…どこへ行ったのか。もうほとんど忘れてしまった。ただ春節を利用して訪れると見られていた中国人をはじめ、外国人がほとんどいなくて「ちょっと前の京都ってこうだったよね」と、現地で落ち合った神戸在住の友人と話した記憶がある。人生も折り返し地点を過ぎると1年半前なんて昨日のことのように思えるのに、この1年半はとても長く感じる。

 

 

 

もともと僕は面倒臭がり屋でふらっと旅をすることはあまりないのだが、仕事ではあらゆる場所を旅してきた。仕事だから旅というより出張なのだが、その出張のついでに寄り道をするのが何よりも楽しい。自分の意思と関係なく行き先や日程が決まりながら、それをいかに楽しくするかというのは実に創造的である。飛行機や新幹線で行く出張だけでなく、地下鉄や自転車で行く都内の仕事でも、前後にどこへ寄れるか真剣に考える。たまたま仕事先の近くが興味深い場所ならよいが、「地名 街並み」とかでググってもめぼしい検索結果がないこともある。知らない町をあてもなく歩くと、釣果のないことも多いが、それでも気になる光景のひとつふたつはあるものだ。

 

 

 

この夏も五輪+コロナ禍で例年より暇だったものの、それなりに外へ出掛け、いろいろな写真を撮った。先に書いた通りどこも人影が少ないし、かろうじて人流が見られる銀座・新宿・渋谷なども、道ゆく人はみなマスク姿。それでもコロナ禍前とは意識を変えて、なるべくシャッターを切るようにしている。人影がなくて寂しいのならば、その寂しさを表現すればいいし、みんなマスク姿ならそれを撮ればいい。今見えているものをフレームの中でどう生かすか、さらには見えないものをどう感じさせるか、それはいつの時代や社会でも写真の基本だと思う。

 

 

 

 

僕は昨年3月に初めての緊急事態宣言が発令された日から、それが終了する日まで毎日徒歩圏内を出歩いてスナップを撮っていた。うちを一歩出た瞬間から、意識が向いたものすべてレンズを向け、絵になろうがならなかろうがシャッターを切った。6月終わりには近所のルーニィ247ファインアーツで「明日COLOR」という写真展を行い、それらをまとめて発表した。それまで僕は頭の中で構図やイメージを練り、それに近い瞬間を狙ってシャッターを切ることが多かった。写真展や写真集というゴールがあると、どうしてもそれに使えそうな絵や欲しい絵を欲しくなってしまうのだ。

 

 

 

しかしこの「明日COLOR」を機に、何も狙わないというのも悪くないな、と思い始めた。まあシャッターを押してみなくちゃ写真は写らないし、押してみたら予期せぬものが写ることもある。それを後からセレクトしていくのは、撮影の時点で自分の写真を型にハメるよりずっと創造的ともいえる。とまあそんなことは理屈ではわかっているのだが、経験と年齢を重ねるごとに脳味噌は固くなり、実践するのは意外と難しい。ただ従来のやり方が難しいのなら、反対に今まで難しかったやり方に挑戦してみるのもひとつのアイデアである。なんだかどこかのビジネス書に書いてありそうな内容だが、物事がうまくいかないときの解決策なんてものはだいたい同じ。遠くに行けずにウズウズしていたら、近くを撮ってみればいい。近くしか撮れずに退屈しているなら、もっと近くを撮ればいい。そんなわけで今、僕は小さいのに等倍まで寄れるHD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limitedが気になっています。ま、祖父もそんな理屈であれやこれや買っていたんだろうな。

 

〔こちらの記事でご紹介した製品の情報はこちら〕

>>PENTAX K-3 Mark III製品ページ

>>HD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WR製品ページ