コロナになって3度目の夏。コロナウイルスもなかなかしぶとい。ニュースでは夏の旅行がどうなるか、という話題も取り上げられている。僕は仕事で旅行どころか帰省もままなりませぬ。というかこの連載の執筆もままならなかった。

そういえば今年のGWにはK-3 Mark IIIを持って京都と奈良に行っていた。その話を書こうと思って、写真を必要以上に熟成させてしまっていた。少し発酵しているかもしれない。

 

 

京都に行ったのはKYOTO GRAPHIE(京都国際写真祭)を見るため。パスポートを買い、2日間で見られるだけ見ていくことにした。大小40くらいの展示を見たと思うが、SNSで多くの人たちが圧倒されたといっていたアーヴィング・ペンの回顧展は、僕もやはり圧倒された。パリのヨーロッパ写真美術館が所有するペンのヴィンテージプリントは100点以上。その中から80点を展示したそうだ。

 

有名な吸い殻の写真も初めて生で見ることができた。ニューヨークの路上で拾い集めた吸い殻を、顕微鏡レンズを着けた8×10の大判カメラで撮影。プラチナプリントで仕上げた作品だ。2014年に東京のタカ・イシイギャラリーで展示されたのだが、見逃した後で方々から「すごい展示だった」と聞いた僕は、いつか見たいと願っていた。そして実際に見て、ニーチェやアインシュタイン、ル・コルビジェなど多くの偉人が用いた「God is in the details」という格言を思い出した。訳せば神は細部に宿る、である。すぐ向かいの平安神宮にいらっしゃる神様は、どんな感想をお持ちになっただろうか。

 

 

ガーナ人アーティスト、プリンス・ジャスィも強烈な印象を受けた(すぐ上の商店街の写真に、アーケードに吊るされた彼の作品が見える)。アフリカ特有の強い光と色彩が巨大なプリントで展示されていたが、それを撮影したカメラはiPhone。会場内で上映されていたメイキングムービーでは「カメラを買うお金がないからこれで撮ったのさ」と答えていた。プリントは解像度を補間していると思われるものの、ディテールは損なわれて色は塗り絵のようにべったり。しかしそれがあの印象につながったのだと思う。写真は難しいし、おもしろい。

難しいし、おもしろいといえばノースフェイスの店舗で展示されていた西野壮平さんの展示「同じ波は二度来ない」もまさにそうだった。難しいというのは制作面の話で、膨大な写真を撮って、切り貼りをして仕上げているのだが、まさにGod is in the detailsな作品だった。

 

そういえば先日、東京・四谷に待望の「PENTAXクラブハウス」がオープンした。少し落ち着いてから僕も伺ったのだが、メーカーとユーザーの距離の近さを象徴するような(あえて「狭い」とはいわないよ絶対)素敵な施設だった。新宿と大阪にあったリコーイメージングスクエアにはギャラリーがあり、僕自身は残念ながら展示をする機会がなかったが、新宿で数えきれないほどの展示を拝見した。友人やお世話になっている諸先輩方が展示することもあったし、まったく知らなかった方の作品に触れることもあった。「PENTAXクラブハウス」にも、まっさらな白い壁があった。いずれそこに写真を飾っていくらしい。どんな写真に出会えるのだろう。

 

そんな話を書いていたら、友人知人に音楽好きが多いせいか、SNSではたびたびフェスの話題で盛り上がっている。そういえばKYOTOGRAPHIEもまさに写真のフェスだ。まさに今、北海道東川町で開催中の東川町国際写真フェスティバルも、“日本のポートランド”といわれるカフェやショップも多い美しい町で、一日中写真に浸ることができた。今年はコロナの影響もあるのか展示が少ないようだが、そろそろそういう寂しさもウイルスと一緒にどこかへ消えてほしい今日この頃である。皆さん、引き続きよい夏を。