9月のお題は…『雲のある景色』

小林義明 師範

どんなところにいても、空を見上げるといろいろな表情が広がっている。とくに空を流れる雲はさまざまな形や色合いを見せてくれて、二度と同じ姿はないと言っていいだろう。ぼーっと眺めているだけでも楽しい雲の姿だけれど、この雲を主役に景色を撮影してみよう。朝焼け、夕焼けはきれいだけれど、色の迫力だけになってしまうことも多いので、今回のテーマからは省かせて欲しい。あなたが見つけた何気ない雲の表情を捉えてみよう。

小林義明 師範からの9月のお題は雲のある景色でした。
このお題に投稿いただいた中から師範が選んだ作品を、添削コメントを添えてご紹介します。

9月の挑戦者その4:ekarumawasさん

山の形をした雲が等間隔で並んでいて面白いなと感じた一枚です。 富士山の子供みたいで可愛いです。

ekarumawas
長野県在住、男性。長野県で主に自然風景を撮影しています。PENTAX K-1とHD PENTAX-D FA★70-200mmF2.8ED DC AWで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

もう一歩!

 

 

小林義明 師範からの添削コメント

富士山と同じような形の雲が手前に並んでいて、とても面白い雲に出会えたね。なかなかないいシーンを捉えていると思う。余分な空間をなくすために横長のフレームにしているのも狙いがはっきりしていていい。

惜しかったのは、山のような形をしている雲の辺りのコントラストが低いためにその存在感が弱かったこと。雲というよりも雲海のような感じもするので、周りが同じような雲だから仕方ないところがあるけれど、仕上げとして不自然にならない範囲でコントラストを上げてもいいと思う。

C-PLフィルターを使っていないように見えるので、フィルターを使うことで雲をくっきり見せることができたと思うよ。ただ、その時は空が少し暗くなって富士山の形が分かりにくくなるので、適度に効果を抑えることも必要になる。

雲海が動き出すのは日がある程度高くなって気温が上がり始めてからなのでこのような光になってしまうのだけれど、もっと日が低く赤みが強い時間帯に雲が動いてくれたら最高だったね。

9月の挑戦者その5:tokutoku1002さん

雨の中、奈良の奥深い山合いで撮影していると雨が上がりゆっくりと向かいの山が見えてきました。雲のある風景ということでこれも雲のある風景かと思っています。

tokutoku1002
東京都在住、男性。風景写真を中心に、旅写真やスナップを楽しんでいます。コロナの影響で遠出を控えて過去の写真を見直しています。PENTAX K10Dとsmc PENTAX-FA★80-200mm F2.8ED[IF]で撮影。

 

師範の判定結果は・・・

もう一歩!

 

 

小林義明 師範からの添削コメント

満開のシダレザクラと背後の山から湧き上がる水蒸気。この水蒸気が雲になっていくんだよね。サクラの後ろの稜線が雲の中からしっかり見えていて、なかなかドラマチックなシーンを捉えることができたと思う。

サクラを主役にした写真としてはこれでいいと思う。ただ、今回の雲がある景色とした場合、もう少し雲を多く入れたいかなという感じもする。なので、このテーマとしては免許中伝としたい。

上をどのくらい入れられるかわからないのだけれど、湧き上がる水蒸気の上の方まで見せられると、水蒸気が上に向かって昇る様子が伝わって動きも出てきたと思うし、景色に広がりも出たと思う。

可能であれば、このような滅多に出会えない景色は、フレーミングや構図を変えていろいろ撮影しておきたい。そうすると自分の狙いのほかに違うテーマにも対応しやすくなるよ。

9月の挑戦者その6:慎平さん

大きな台風がやってくる数日前、まさに「嵐の前の静けさ」のような日に撮影した写真です。 地上でも少し風は吹いていましたが、上空では四方八方に風がふき、雲が様々な形に流されているのが印象的でした。 空の雄大さと様々雲の形を一枚に収めたいと思い、魚眼レンズで撮影しました。

慎平
奈良県在住、男性。フラフラと写真を撮っています。 PENTAX道場のおかげで自分のテーマとは何かを考えるようになりました。 これからも精進していきたいと思います。PENTAX KPとHD PENTAX-DA FISH-EYE10-17mmF3.5-4.5EDで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

もう一歩!

 

 

小林義明 師範からの添削コメント

空の広がりを感じられる気持ちのいい写真だ。台風が来る前の空ということだけれど、筋雲が多くて秋空のよさが出ている。フィッシュアイレンズを使って適度に地平線を歪ませているところも効果的だ。

ここで惜しいと思ったのは、太陽と雲を重ねてしまったこと。
どちらも白く写る被写体なので、重ねたことで雲の形が曖昧になってしまった。

台風が近づいているということで雲は流れていて、移動するのも速かったと思うので、じっくり雲の変化を眺めながら雲の形が分かりやすくなるタイミングを狙って欲しかった。しばらく待っていたら、もっとドラマチックな雲が現れたかもしれない。

狙いは正しいので、こういう変化が激しい時はしばらく眺めているようにすると、他にもいろいろなものが見えてくるよ。

師範よりPENTAX道場にご参加いただいたみなさまへ

いよいよ最後の道場となった。
今回もいろいろな雲を見つめてくれて、今まででも一番多い数の挑戦があったことに感謝する。

街中で撮影した写真も多かったけれど、街中でも見方によっては自然を感じられるのを実感してもらえたのではないだろうか。この視点で他のものにも目を向けていくと、遠出するばかりがネイチャーではないことが理解してもらえると思う。

判定に関しては、かなり厳しく見てきたので免許皆伝はほとんど出せなかった。
ちょっとしたことで写真は印象が変わるため、そのちょっとしたことを理解してもらいたかったんだ。

基本的なピントの正確さやブレを防ぐこと、微妙なカメラポジションの違いや光の読み方など、これを確実に毎回行うのは難しいこと。でも、カメラが撮ってくれるではなくて、自分でそれらをコントロールしてその場で最高の条件を生み出していくんだ。

これは私もいつも撮影時に注意してることだし、いつも最高の条件を生み出せるわけではなく苦労している。みんなの写真を見てコメントを考えながら、自分も反省しているんだ。
そして、その最高のイメージを持ちながら、日々、自然と語り合っている。

PENTAX道場はこれで終わりだけれど、また何かの機会にみんなと一緒にさらなる上を目指していける機会が訪れることを期待している。

3年間の間、みんな本当にありがとう!

 

記念品のお届けについて

ekarumawasさん、tokutoku1002さん、慎平さんには「免許中伝ミニ木札」をお贈りします!

記念品は10月中旬にお届け予定ですので、しばしお待ちくださいませ。

最後の編集部セレクトはこちらの作品です!

最後に、9月後半のお題の投稿作品の一部を編集部セレクトでご紹介させていただきます。
毎回たくさんの挑戦ありがとうございました!SNSで拝見するニックネームでの挑戦があったり、リアルイベントでお会いしたことのある方だったり、まったくお見かけしたことのない新規の挑戦者様だったり、作品とコメントを拝見するのが毎回楽しみでした。

最終回も師範の選考とはまったく関係なく、編集部メンバーでセレクトした作品をいつもより多めに掲載させていただきます。
3年間、たくさんのご投稿ありがとうございました!

 

〔クリックで写真が大きくなります〕

PENTAX official編集長よりみなさまへ

Yuzu
完全にデジタル世代のPENTAX official編集長。新たにECサイト業務を手探り中、そのほか製品プロモーションやコンテンツ制作、イベント担当。撮影機材おたくで、座右の銘(?)は「機材を買う前に悩むくらいなら、買ってから支払いに悩む」。愛用の機材は、PENTAX K-3 Mark III、J limited 01、MX
2019年10月よりスタートした「PENTAX道場」も丸3年を迎えここで一区切り、終了を迎えることといたしました。そもそもこの道場企画はどうやって生まれたのか。最後にお話ししておきたいと思います。まずはこのサイト「PENTAX official」を立ち上げるに至った経緯から。 

PENTAXとして各都市でイベントを開催すれば、ありがたいことに熱烈なファンの方々が集ってくださり盛り上がる様を見てきました。一方で、年々参加者の総数が減っている現実も。もちろん理由はカメラ業界全体の規模が減衰してきたせいだけではありません。

 

ですが、日本中にはきっとこれまでお目にかかることはできなくても、PENTAXのカメラとともに写真を生涯の趣味として愉しんでくださっている方がきっといるはず…。

 

そこで、日本全国にいらっしゃるPENTAXユーザーの皆さまが集まるWEBコミュニティのようなものを検討し始めました。PCだけでなく、スマートフォンが人々の暮らしに欠かせない存在となり、情報にいつでも触れられる時代だからこその。

 

ただ、検討を進めるにつれて、WEBコミュニティは立ち上げ・維持のコストや運営負担などが当社の所帯には見合わないことが浮き彫りになってきました。(やけに正直)

 

そこで「基本的にはWEBメディア的なサイト。でもただの製品のアピールではなく、何かユーザーさんの写真生活の糧になるようなことを発信したい。ときには参加して楽しんでいただき、手元にも何か思い出や勲章が残せるようなことがしたい」と、PENTAX official委員会(立ち上げプロジェクト)のメンバーと共に考えました。

 

〔思い出になるようなもの〕



「カメラが好き」「写真が好き」「すごく好きなものがあって、それを写真に残すのが好き」「思い出を美しく残したい」etc…写真の好きにはいろんな形があります。

写真を撮り続けること、カメラを持つことが少し特別な行為になりつつある現代において、写真を撮るモチベーションを考えました。

 

 

これは一例でしかないですが、例えば…「撮れた!!」というガッツポーズをしてしまうような手応えを感じられたとき。きっと次の撮影に向けての意欲も高まることでしょう。

 

でも、「なんだか自分にはうまく撮れないや…」。一度そう感じてしまったとしたらどうでしょう?もしかしたら愉しい趣味にはならないかもしれないし、カメラ自体を持ち出す頻度は減っていくかもしれない。

 

 

説明書や、書籍を読めば、カメラの使い方はある程度学ぶことができます。でも「写真を撮る」この行為は考えれば考えるほどにとことん深い。

 

感性、想像力、技術、経験則、あるいは被写体や目のまえの事柄に対する知識、関係性、あらゆるものが作用してくる世界。

 

 

PENTAXと「写真を学ぶ」というコンセプトはどうだろう?PENTAX officialのコンセプトが決まりました。

>>PENTAX officialについて

 

PENTAX道場は、写真に対する「学び」と「一緒に楽しみながら成長する」ことに重きを置いた、看板コンテンツでした。(道場だけに)長文・駄文失礼しました。

 

約3年にわたり「PENTAX道場」に挑戦いただいた皆さま、挑戦者の行く末を見守ってくださった皆さま、そして小林義明師範をはじめ歴代師範を務めてくださった写真家の皆さま、これまで本当にありがとうございました!この場を借りて御礼申し上げます。