近頃はどうやら北に縁があるようで、9月も終わりが見えてきた早朝、北海道へ向かった。秋めいた景色を期待してやってきたのだが、到着したその日の札幌の気温は25度。夏日である。札幌市内であればさほど大きな移動をせずとも良いだろうと思ったが甘い考えであったか。ひとまず荷物をホテルに預け、天ざるで腹を満たす。
蕎麦屋でじっとしているとうっかり冷酒を手元に呼び寄せてしまいそうになるので、札幌からバスで一時間ほどの距離にある定山渓温泉へ向かうことにした。バスの車中から木々を睨みつけるようにして見続けていたが、私の視線で赤くなる葉などあるはずもなく、行けども行けども青々とした林が続く。
札幌へ来る前日、彼岸花の撮影に出かけた。彼岸花の群生地へ行くのは初めてだったが、秋のカスタムイメージ Special Edition「九秋(KYUSHU)」で撮影すると、朱がかった落ち着いた色味で写し出され、日が暮れかけたなか、しっとりとした存在感が浮き出るようである。2021年に発表されたカスタムイメージの「里び(SATOBI)」も好みの色味だが、九秋は里びの渋さに艶やかさが加わった、なんとも良い色調だ。
この色味を活かすためにもやはり赤々とした紅葉はなんとしても撮りたいところである。翌日のプランを練り直さなければならない。コンビニでサッポロクラシックを仕入れ、ホテルに戻ることにした。
翌朝、朝一で旭岳近くの渓谷へ向かう。往復7時間半。なんとか札幌から日帰り行ける距離だろう。念のため熊鈴も手に入れたことだし、準備万端である。列車とバスを乗り継ぎ目的地へ到着すると既に10時過ぎ。ここまで来ればどうにか紅葉しているようだ。ほっと胸を撫で下ろしつつ向かったのはその名も紅葉谷。今回は K-3 Mark IIIにHD PENTAX-DA 70mmF2.4 Limited、K-1 Mark IIにはHD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limitedの二台体制だが、ボディとレンズのバランスが良いためだろうか、不思議と重さはあまり感じない。滝へ続く山道ではいくつか難所はあったものの、どうにか目的は達することができたようだ。安堵感からか、疲労はありつつも気持ちは軽い。自然と足がすすきの方面へと向かう。
見ず知らずの酒場のカウンターで取り出すカメラとして K-3 Mark IIIやK-1 Mark IIは少し大げさな気がしないでもない。ここはGRあたりに任せることにして、 一眼レフはホテルに置いてバーの扉を開いた。
いい酒をたっぷり飲んで目覚めた朝は気持ちがよいものだ。撮影最終日ではあるが、目当ての場所はまだまだある。札幌郊外の庭園で一通り撮影を済ませたあと、急遽思いついて果樹園へ向かうことにした。バスを降りて目的地に向かうと、人が見当たらない。スマホで位置を確認しても合っているはずだ。どうしてもりんごを撮影したかった私は記載されている番号に電話をかけると、突拍子もないことを口走った。「あの!りんごの赤を撮らせていただきたいんです!」
果樹園の主人も驚いたことだろう。どうやらりんごの収穫シーズンはこれからのようで、この日は一般客への解放はしていないとのことだが、事情を説明するとどうぞと快く迎え入れてくれた。
九秋で撮るりんごは、ほんのりとした赤味がまるまるとしたフォルムと相まってなんともキュートだ。存分に撮影させていただいた後、再びバス停へと向かう。ふと停留所のポールにくくりつけられた貼り紙を見ると、「ヒグマ注意」との文字が。熊鈴はホテルのトランクの中だ。あわてて筋子のおにぎりを口の中に押し込んだ。
※最後の1枚以外はすべてカスタムイメージ Special Edition「九秋(KYUSHU)」で撮影しています。
〔関連情報〕
>>PENTAX K-3 Mark III製品ページ | 機能拡張FW
>>PENTAX K-1 Mark II製品ページ | 機能拡張FW
|