こんにちは。PENTAXデザインチームのyoneです。

チームメンバーとしては新参者なので、カメラ開発について学ぶことが多く、日々周りで繰り広げられる写真談義に聞き耳を立ててます。そして、以前より「写真」について考えることが増えました。

ある日、ミーティング終了後に雑談をしてるとチームの一人が「最近、モノクロで写真撮ってないな」とポツリ。
すると別の人も「確かに。後処理でモノクロにすることあるけど、最初からモノクロってやらなくなったね」と言う。現代はカラーで撮影することが当たり前になってると再認識。

その後「モノクロって、なぜか恰好良いよね。」
「色が無い分、主役が引き立つ」
「被写体の形や、光の濃淡が強調される。」などと話が盛り上がる。

私が「モノクロ写真ってデッサンに似てますね」というと、残っていた企画の人が興味深そうに訊いてきた。

「デザイナーもデッサンするんですか?画家だけかと思ってた。」
「はい。幾つかの美大の受験科目にあるので、描きます。」
「やっぱり、デッサンは基本なの?」
「人間の目は、光と影によって物を捉えます。濃淡だけで表現するデッサンは、人間がどのように物を見てるか理解し、それを表現する訓練になります。だから全体が真っ白の石膏像を良く描きました」

他のデザインメンバーも加わりデッサンの話が膨らむ。
ざっとまとめると、、、

石膏デッサンの心得
・単純に形を描き写すのではない。自分と対象物との間の空間を感じさせるよう、彫刻の様に形を削り出すつもりで描く。
・光ってる部分でも紙の白以上に明るくできないから、部位の大きさや周りの濃淡の差(コントラスト)で演出し、光ってるように見せる。
・濃淡だけなので、構図(フレーミング)が良し悪しに大きく影響する。

ミニマムの美学
・デッサンを上達するために、真っ黒な墨汁やマジックペンで最小限の影だけを描く方法がある。
・上手な人は黒一色だけで遠近まで表現できる。

 


残念ですが墨汁やマジックペンで描いたデッサンを用意できず、写真を加工してイメージ画像を作りました。

真っ白い石膏像だけでなく、色がついた物をモチーフにしたデッサンも描くという話になると、、、

「上手い人のデッサンは、形や空間だけでなく色彩まで感じることがある(もちろん錯覚です) 。眼に見えない何かが伝わってくるのだと思う。」
などと、次第にディープな領域に突入。

物をモチーフにしたデッサン(静物デッサンと呼ばれます)の心得
・硬いモノは硬度Hなどの芯が硬い鉛筆で描くと表現しやすい。柔らかい場合は4Bなどの柔らかい鉛筆で描く。
・鉛筆の粒子の大小で質感を表現できる。

 

それまで黙って聞いていた企画の人がポツリと、、、
「そう言えば、絵を描いてる人は写真が上手い。理由が分かった気がする。」
一同「確かにそうかも。」

モノクロの視点を養うとカラーの撮り方も変わるかもしれません。液晶モニターでモノクロに変換した映像を見るのではなく、ファインダーで実際の光景を見ながら脳内でモノクロの絵を描いて撮影する。その繰り返しが、デッサンと同じように感性を養うのかも。自分の予想と全く違う印象の写真が撮れた時、良し悪しを含めて新しい気づきがありそうです。

などと書いてますが、単純にモノクロ写真というだけで恰好良く見えるというのも本音です。