ペンタックスからKFが発表されてすぐ、このサイトの編集長に「ちょっと使ってみたい」とメールしたところ、待ってましたとばかりに「白がいいですか、青がいいですか」という返答が。翌日には希望した白のデモ機が届いた。

エントリークラス、すなわち入門機かな、と思うくらい小さくて軽いKFだが、ペンタックスでの位置付けは「ミドルクラス」。たしかにK-30やK-70の流れを汲むモデルで、スペックや操作性は必要にして十分。K-3 Mark IIIの剛性感や上質感はさすがにないけれど、
軽快でありながら動作に安っぽさはない。たとえば散歩や外出のお供なら、HD PENTAX-DA 21mmF3.2AL Limitedを装着してもおもしろいし、あるいは…

こんな組み合わせも。真っ白なsmc PENTAX-DA 35mmF2.4ALは今回の撮影中、偶然中古で見つけて慌てて購入した。レンズそのものは現行品だが、ブラック以外の11色を選べる「オーダーカラー受注サービス」は2017年の年末に終わっている。しかし”工房的”ものづくりを掲げる今こそ、このサービスを復活するべきではないのか? 個人的には青KFに黄レンズでスウェーデンカラーとか、白KFに赤レンズで日の丸とか、いろいろ組み合わせが浮かぶけれど、せめて白と青くらいは復刻できないですかね?

それはともかく、KFが届いたちょうどその日に、先日逝去された大学時代の恩師を送る会が行われた。場所はかつての学び舎。ゆるい会なので子連れでもいいですよという案内をいただいたので、息子を連れていくことにした。校舎に囲まれたキャンパスの真ん中には芝生の広場があり、息子を遊ばせたら喜ぶだろうなと思ったのだ。KFのバッテリーを急いで充電し、小さなバッグに放り込んだ。

今の大学にはなかなか余裕がないのか、はたまた築50〜60年の古い校舎たちが寿命に差し掛かっているのか、芝生の広場だった場所には新しい校舎と食堂が建てられていた。一方会場である広いスタジオでは、映像作家だった恩師の作品が上映されていた。多くの卒業生が集まっているようで、暗いものの静かな熱気が伝わってきた。待って同級生の姿を探したかったが、こりゃ息子は3分と持たないだろうな…と中に入るのをやめ、校舎の中をうろうろ歩いて回った。パパはここでお勉強をしたんだよ、ここで毎日カレーライスを食べたんだよ、ここでタバコを吸っていたんだよ、ここで写真を焼いたんだよ…うーん、これは4歳児には通じないか。

それからしばらく、常にKFを持ち歩く日々が続いた。KFのキャラクターや真価を確かめてみようと、レンズはあえてキットに同梱されるDA L18-55mmF3.5-5.6 AL WRのみで撮影してみた。スターレンズやLimitedレンズのような惚れ惚れする写り、とはいかないけれど、価格と軽さを考えたらこれもまた必要にして十分。オプションで前出のsmc PENTAX-DA 35mmF2.4ALを組み合わせるのもいい。ボディだけ購入するというペンタキシアンも多いかもしれないが、主力のレンズが故障したとか、キットレンズが役に立つことは僕の経験では結構ある。ご購入の際はぜひレンズキットを。

KFはバリアングル液晶を採用している。背面液晶がクルッと回り、出荷時は大抵裏返してあるタイプである。KFも箱から出したときは裏返してあった。それでは何の設定もできないので、クルッと回して使い始めたわけだが、撮影を始めると裏返してある方がいいかも…と思って再びクルッ。

そう、ファインダーをのぞいても、その下の背面液晶に情報が点っているのだ。K-1 Mark IIで慣れたとはいえ、視界の下から余分な光が邪魔してくることには変わりない。そこで裏返すと視界がすっきり。さらにフィルムの一眼レフを使っているような気分になった。僕が日常のスナップで使う撮影モードはプログラムオートか絞り優先オート。ファインダーをのぞけばシャッター速度・絞り・露出補正・ISO感度がフレームの下に表示される。変えるのはせいぜい絞りと露出補正だから、のぞきながらダイヤルを回せばよい。

そうそう、ダイヤルの割り当てはシャッター速度優先オートならシャッター速度、絞り優先オートなら絞り、プログラムオートならプログラムシフトを前ダイヤルに割り当てた。後ダイヤルはどのモードでも露出補正。そうなると一等地にあるグリーンボタンの出番が減ってしまうのだが、露出補正は絞りよりもいじるからなぁ。無役のときのグリーンボタンに何か割り当てられないか、ぜひご検討いただきたい>編集長。

あとK-1 Mark IIもそうだが、十字キーのカスタマイズがミソ。僕は「RAW/Fx1」ボタンに「測距点移動」を割り当てつつ、メニューの「C(たぶんカスタム)」の18番にある「十字キーの機能」を、デフォルトのType1ではなくType2に。これで撮影待機状態では常に測距点移動モードになり、ISOやドライブモードを切り替えたいときは「RAW/Fx1」ボタンを押して十字キーを本来の役割に戻す。って文章で書いてもわかりにくいと思うので、購入されたらお試しください。

以前ライフワークにしていた渋谷スクランブル交差点も、GRのイベントで渋谷に行ったついでにKFで撮ってみた。コロナ禍になってからは撮りたい光景や人物に出会えず、行っても数枚撮ってやめてしまうことが多かった。それが外国人観光客の姿もじわじわと戻っており、一方で駅前というか駅にくっついていた百貨店がなくなり、交差点から見る光景が一変していた。

先だって発売した拙著『いい写真を撮る100の方法』(玄光社による紹介は>>こちら)もおかげさまでぼちぼち売れているようで、執筆疲れとプロモーション疲れからようやく脱却してきた。何か新しいテーマで作品を撮るか、何か書くか、そろそろ次の一歩を考えなければ…と思う今日この頃。個人差はあるだろうけど、僕は撮ることでアイデアが浮かんでいくので、軽くてひと通りのものが撮れるカメラというのはありがたい。と妻に申請するKFの購入理由を考えている。

※本記事の掲載写真の撮影はすべて「PENTAX KF 18-55WRレンズキット」です。