唐突にフィルムカメラを作ることにしました!と宣言したり、モノクロ専用のK-3 Mark IIIを出しますが欲しい人は何人いますか?あなた欲しいですか?と質問してきたり、昨年末のPENTAXは中の人が心配になる状況でしたが、皆さまにおかれましてはいかがお過ごしでしょうか。軍資金の調達にお悩みでしょうか。僕も悩んでいます。

PENTAX K-3 Mark III+HD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limited 露出モード:Av 露出補正:-1.0 絞り:F2.8 シャッタースピード:1/125 感度:ISO640 ホワイトバランス:日陰 カスタムイメージ:冬野(FUYUNO)

PENTAX K-3 Mark III+HD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limited 露出モード:Av 露出補正:-1.7 絞り:F2.8 シャッタースピード:1/2500 感度:ISO640 ホワイトバランス:太陽光 カスタムイメージ:冬野(FUYUNO)

そんな開発中の製品だけでなく、季節ごとに登場するカスタムイメージも気になる今日この頃。というわけで今回は「夏天(KATEN)」「九秋(KYUSHU)」に続く限定カスタムイメージ第3弾「冬野(FUYUNO)」の話。今回の写真はK-3 Mark IIIにHD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limitedを装着し、すべて「冬野」で撮影している。

前回の「九秋」は僕の好みというか、普段から設定しているカスタムしたカスタムイメージに近かった。これが対象外のレンズでも使えたらいいのになぁと思っていた。ところが「冬野」は一転して難易度高め。彩度が低いのだが、寒色系はやや強めに再現される。かといって青が印象的というわけでもなく、青空は色が抜けたように写ったりもする。さらにカメラの基準通りの露出で撮影すると、ハイキーで白さが目立つ。なのでほとんどの写真はマイナス1〜2段で撮影している。

PENTAX K-3 Mark III+HD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limited 露出モード:Av 露出補正:-1.0 絞り:F5.6 シャッタースピード:1/800 感度:ISO100 ホワイトバランス:マルチパターンオートWB(Magenta 1) カスタムイメージ:冬野(FUYUNO)

PENTAX K-3 Mark III+HD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limited 露出モード:Av 露出補正:-1 絞り:F5.6 シャッタースピード:1/500 感度:ISO100 ホワイトバランス:曇天 カスタムイメージ:冬野(FUYUNO)

僕は露出に関して、ハイライトが飛ばないような値を選択している。たとえばハイライト側に主題がある場合、周囲のシャドー(影)を造形的に生かしたり、見せたくない部分を影でつぶすことはよくある。しかしシャドー側に主題がある場合、周囲のハイライトを生かすということはあまりない。鑑賞者の視点はより明るい方に向くため、主題より周囲が明るいと写真が弱くなってしまう。そのため露出はマイナス補正が基本となり、画面全体はローキー、つまり暗めになることが多い。今回はマイナス2段でもローキーにならず、なかなか難しい撮影になった。

もっともポートレートや植物では明るめな背景が効果的だったりもする。クリアでハイキーに仕上がる「冬野」の狙いもたぶんそこにあり、だから対象がマクロレンズなのだろう。適正露出で撮ってもハイライトのキーが高くなり、しかし白飛びさせないギリギリのところで粘る。澄んだ空気の中、凛とした雰囲気のポートレートや冬枯れの植物を撮るには本当に最適なパラメーターだと思う。そんな作例は撮っていないのであくまで想像だが。

PENTAX K-3 Mark III+HD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limited 露出モード:Av 露出補正:-2.7 絞り:F5.6 シャッタースピード:1/400 感度:ISO200 ホワイトバランス:マルチパターンオートWB(Magenta 1) カスタムイメージ:冬野(FUYUNO)

PENTAX K-3 Mark III+HD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limited 露出モード:Av 露出補正:-2.0 絞り:F8.0 シャッタースピード:1/125 感度:ISO200 ホワイトバランス:太陽光 カスタムイメージ:冬野(FUYUNO)

PENTAX K-3 Mark III+HD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limited 露出モード:Av 露出補正:-1.7 絞り:F8.0 シャッタースピード:1/800 感度:ISO200 ホワイトバランス:太陽光 カスタムイメージ:冬野(FUYUNO)

だから澄んだ空気の中、ポートレートや植物を撮ろうと思ったのだけど、結局いつも通りなものを撮ってしまった。オフィシャルサイトの連載としては、カスタムイメージに合わせて何かを撮るのが親切かもしれないが、自分がカメラに寄せるんじゃなくて、自分へカメラを寄せられるから“カスタム”イメージなのではないか。そんなふうに思ったのだ。とそれらしいものを撮れなかった言い訳。

いや、カメラにわざわざ寄せなくても、K-3 Mark IIIには使いやすいカメラ内RAW現像機能があるではないか。しっかりとご自分の方へ寄せてくださいとメーカーが推奨しているようなものだ。そこで「冬野」で撮ってみた写真を、カメラ内RAW現像でさらに追い込んでみた。

PENTAX K-3 Mark III+HD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limited 露出モード:Av 露出補正:-1.0 絞り:F5.6 シャッタースピード:1/400 感度:ISO200 ホワイトバランス:日陰 カスタムイメージ:冬野(FUYUNO)

PENTAX K-3 Mark III+HD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limited 露出モード:Av 露出補正:-1.7 絞り:F4.0 シャッタースピード:1/125 感度:ISO640 ホワイトバランス:日陰 カスタムイメージ:冬野(FUYUNO)

ほとんどの写真はマイナス1〜2段で撮影しているのだが、それでも足りないものは少し減感。青みが気になる写真は、ホワイトバランスを「太陽光」にするとニュートラルに。さらに「日陰」にするとセピア調に近くなるのがわかった。これは僕の街角スナップでもハマる場面が多かった。また極端にハイコントラスト・ハイキーへ振られたカスタムイメージのパラメーターをいじると、もっと自分にフィットするかも、という気はした。あまりいじり過ぎると「冬野」ではなくなってしまうので、そこは手をつけなかったのだが。

PENTAX K-3 Mark III+HD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limited 露出モード:Av 露出補正:-1.3 絞り:F5.6 シャッタースピード:1/800 感度:ISO200 ホワイトバランス:日陰 カスタムイメージ:冬野(FUYUNO)

PENTAX K-3 Mark III+HD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limited 露出モード:Av 露出補正:-1.0 絞り:F8.0 シャッタースピード:1/1000 感度:ISO200 ホワイトバランス:日陰 カスタムイメージ:冬野(FUYUNO)

PENTAX K-3 Mark III+HD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limited 露出モード:Av 露出補正:-0.7 絞り:F2.8 シャッタースピード:1/125 感度:ISO4000 ホワイトバランス:太陽光 カスタムイメージ:冬野(FUYUNO)

PENTAX K-3 Mark III+HD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limited 露出モード:Av 露出補正:-0.7 絞り:F2.8 シャッタースピード:1/125 感度:ISO4000 ホワイトバランス:太陽光 カスタムイメージ:冬野(FUYUNO)

ともあれ、状況によって合う合わないの差が激しい「冬野」。どことなくネガカラーフィルムからのプリントを連想させるし、それよりもシネマフィルムの色調に近いかもしれない。これはさらなる研究が必要かもしれぬ。とかいいつつ、連載用にお借りしていたHD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limitedは暮れにお返ししてしまっていた。

PENTAX K-3 Mark III+HD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limited 露出モード:Av 露出補正:-1.3 絞り:F5.0 シャッタースピード:1/125 感度:ISO500 ホワイトバランス:太陽光 カスタムイメージ:冬野(FUYUNO)

PENTAX K-3 Mark III+HD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limited 露出モード:Av 露出補正:-1.3 絞り:F5.0 シャッタースピード:1/125 感度:ISO320 ホワイトバランス:太陽光 カスタムイメージ:冬野(FUYUNO)

正直にいえば、まあ「冬野」が使えなくて困ることはないのだが、予想だにしていなかったHD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limitedロスが意外と大きい。マクロレンズで撮影しながら、接写のカットがほとんどないという僕だけど、いざとなれば寄れる小さな標準レンズとしてこれは欲しい。てなわけで新年早々レンズが欲しいというお話でした。いろいろ軍資金が大変そうな2023年もよろしくお願いいたします。