いつもの音がしない。何の話かというと、AF合焦音のことである。いつも使用しているリミテッドレンズはいずれもボディAFのため、AFが合焦するまでのモーター音がそれはそれは派手であるのに対し、今回使用した smc PENTAX-DA★300mmF4ED[IF] SDM はレンズ内超音波モーターによるAFを採用している。そのため、あくまでしとやかにAFが合うということに軽く驚いてしまった。いやはや、たまには違うレンズを試してみるものである。

というわけで、今回は300mm(35ミリ判換算で 460mm相当)レンズを持って上野動物園へ向かった。ちょうど1ヶ月ほどまえ、講師を務めている教室で数十年ぶりに行ったばかりだったが、これが思いのほか楽しかったのだ。その日はフルサイズミラーレス機に望遠端400mmのレンズをつけて行ったのだが、ほんの少し長さが足りない。テレコンバージョンレンズも持ってはいたが、これ以上重くなるのは避けたい。そう思って手に取ったのが K-3 Mark III と smc PENTAX-DA★300mmF4ED[IF] SDM の組み合わせである。

前回撮影してみて感じたのが、望遠ズームレンズは便利ではあるものの、遠く離れた場所にいる動物を撮るには結局望遠端しか使用しない、という点。であるならば、ズームを繰り出す手間もない300mmの単焦点が良いのではと思い、持ち出した次第である。300mmとはいっても長さは184mmに抑えられているため、それなりに持ち出せるサイズだ。

そういえば2023年のF1日本グランプリでは、カメラマン席以外の指定席ではレンズ、レンズフード、カメラ本体など全てを含む全長が26cm以上は使用禁止だったそうだが、このレギュレーションに則ると、K-3 Mark IIIの厚みが 73.5mm プラス smc PENTAX-DA★300mmF4ED[IF] SDM が184mm、ということでぎりぎり257.5mm。これはF1観戦にも非常に良い組み合わせなにではないかと軽く頭をよぎったり。

鈴鹿から上野へ話を戻す。行楽シーズンということもあり、平日にもかかわらず園内は小さな子どもを連れた家族連れや学校行事らしき子ども達で賑わっている。こんな場面では機材はしっかり前に抱えて移動するのが吉。レンズでうっかり怪我をさせてしまうなんてことは決してあってはならない。

11月にもなると昼過ぎにはすでに西日も強く感じられるほどなので、天気がよければぜひその光を生かしたい。今回はテーマを「アニマルポートレート」としてまずはサイにレンズを向けてみた。野生のサイには南アフリカへ行った際に遭遇したことがあるが、やはり間近で見るとかなりの迫力だ。レンズ越しにこちらへ向かって歩いてくる様子を覗いているとその迫力に圧倒されそうになる。

そう、画面いっぱいのこの60mmの差が前回物足りなさを感じた点だったのだ。AFも素早く合ってくれるのでこれは楽しい。カメラを向けると動物たちが皆振り返るようにこちらに顔を向けてくれるのは、このレンズのおかげだろうか。今回はややシックな感じに現像をしてみたが、肌や毛並み、羽の質感をしっかりと描き出してくれるのは、やはりこのレンズの描写性能の高さによるものだろう。動物達が目の前に浮かび上がるような立体感はやみつきになりそうだ。

今回は念のため、HD PENTAX-DA AF REAR CONVERTER 1.4X AW も持参した。小型軽量なので、カメラバッグのポケットにすんなり入るサイズ。460mmもあれば十分かと思っていたのだが、今回のように画面いっぱいに被写体をアピールしたい場合は重宝する。smc PENTAX-DA★300mmF4ED[IF] SDM とぜひ一緒に持っておきたいコンバージョンレンズだ。

この日はお目当てのハシビロコウがなかなか姿を見せてくれなかったが、3度目に飼育小屋を覗くと、ようやく遠くから可愛らしい姿を現してくれた。青みがかった美しい羽色と、寝癖のような頭の羽毛の対比がなんともユニークだ。

すっかり満足して帰路へつく。K-3 Mark IIIとsmc PENTAX-DA★300mmF4ED[IF] SDM の組み合わせは、思ったとおり動物園のシーンには最高のコンビネーションであった。比較的コンパクトなセットになるので、一味違ったスナップを撮りたいときなどにも重宝するかもしれない。
暖かい季節になったら今度はこのレンズでサーフシーンを撮ってみようと思う。備忘録として書いておく。