ひょんなことから与えられた作品テーマ「ささやき」 自分自身の中でそれを理解するために思いを巡らせてみる。
写真を撮るために言葉を咀嚼することから取り組むのが私の思考である。そこからイメージを膨らましていく。
ささやき【×囁き/私=語】
ささやくこと。また、その声や言葉。かすかな音。ひそひそ話。内緒話。
辞書を引けばそんな意味合いのある言葉だ。
漢字で「囁き」、英語で「Whisper」
どちらを選ぶかによっても表現するイメージが大きく変わってくる。
そしていくつかのイメージが湧く。
風の~、二人の~、恋人の~… と思ったが、いつかの音楽のタイトルのような安易な発想に思いとどまる。
表現するにあたり、ささやくとはどんなことかと思えば「言葉が耳に残る」「心に染み入る」「遠くから聞こえてくる」ような感覚であり、相手がいてこそ成り立つものだということ。
そして静かな場所でのこと。二人だけが知る秘密の時間。
漢字で記される「囁き」に近い。
ささやかれる立場、またその反対にささやく立場。
自分自身がどちらに立つかで撮るものが違ってくるだろう。
普段、率直に言葉を口にしてしまうことの多い私自身の中に見えてきたのは〝ささやかれる〟という受け止める側のイメージだった。客観的だったり、擬人化だったり、そういうものを抜きにして「言葉を、かすかに聞こえる声を聞き入れること」を表現しようと決めた。
―結果として
相手の立場からファインダーを通して見える普段見ることのない私自身。傾聴する静かなとき。
このテーマを与えられなかったら撮らないであろうセルフィーという手法。
レンズはsmc PENTAX-DA 50mmF1.8を選び、柔らかく繊細な描写によってイメージに近づけることができたと思っている。
誰がどんなことをそっとささやいてくれるのだろう。
そんなことを思いながら撮っていた。