再びマイルの交換期限が迫ってきた。ということで>>青森のときと同様に年度末も押し迫った3月、急遽松山へ撮影へ向かうこととなった。
道後温泉へは20年近く前に訪れたことはあるものの、松山市駅周辺を訪れるのは初めて。当時は PENTAX MZ-3 を首からぶら下げていたが、今回は K-3 Mark III である。時とともにカメラも移り変わるものだなぁと感慨深く思いつつ、レンズは当時から使用していた smc PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited を手に取る。正直なところ43mmの画角のまま使いたい気持ちもあるが、 K-3 Mark III で66mm相当(35ミリ判換算)の画角で使用するのも楽しいものだ。

松山に向かった週末は黄砂の飛来が予想されており、おそらく全体的にもやがかかった写真になるだろうということで、搭乗前にカスタムイメージを「Gold」に設定。どうせ黄色いならもっと強調してしまえ、という魂胆である。さあ黄砂よ、どんと来い。

何はともあれ腹が減っては写真は撮れぬ。旅先の楽しみは地元のお酒のみならずモーニングにもある。ということでこの日は創業50年以上にもなるというカフェでたまごサンドを注文。パン自体も温めてくれているらしく、ふんわりと湯気がたちのぼる。美しい断面にレンズを向けて、まずは一枚。なるほど、「Gold」で料理写真は御法度と思い込んでいたが、これはこれでアリかもしれない。ちなみにこの写真に関してはもともとのカスタムイメージ「Gold」を元に色相を「-3」、コントラスト(暗部)を「+1」にパラメーターを調整したもの。カスタムイメージをあてると写真の印象が一変するのでそのままでも楽しいが、そこから微調整して自分なりの色に追い込んでゆくのもまた乙なもの。今回の記事では先述の設定をベースに、シェーディングやホワイトバランスを調整することによってそれぞれ変化をつけている。

腹ごしらえが済んだので、伊予鉄道に乗ってまずは高浜駅へ向かう。今日の目的は興居島(ごごしま)へ行くこと。高浜からフェリーで約15分という手軽さもいい。出航まではまだ時間があったので、周辺を軽くスナップする。船の発着所は子供の遊び場にもなっているらしく、水切りをして遊んでいる姿があった。石がきれいに水面を跳ねてゆく。うまいものだ。そうこうしているうちに出航時間が迫ってきたので船内へ。海上へ出るとほぼ快晴であるにもかかわらずやけに黄色く感じるのは「Gold」で撮影しているためだけではないはずだ。

海上をゆく風はこの時期としては暖かな日であるとはいえ、まだまだ冷たい。興居島が近づいてくると、ヒュン、と音がしそうなくらいの速さでなにかが目の前を通り過ぎた。ツバメである。飛ぶツバメを追うのは難儀であるため、電線から飛び立つところを狙うことにした。島ではのんびり待つのも悪くない。「何を撮っているの?」「ツバメが飛ぶのを待っているのです」なんて風流ではないか。わが地元へもあと一週間もすればやってきてくれるだろうか。少し先の楽しみがあるというのはよいものだ。

しばらく撮影を楽しんだあとはこの日の目的地のひとつでもあるビールの醸造所へ。私が選んだのは興居島の伊予柑を使用した瓶内二次発酵タイプのビール。それを先ほど購入した鯛めしのお弁当とともに敷地内の縁側でのんびりと楽しませてもらうことにした。興居島の桜も開花まであとひと息といったところだろうか。花見ではないものの、春の陽光の下、ビールに弁当なんて最高のピクニックではないか。

すっかり満たされて再び高浜行きの船に乗り込む。ここまで来たら松江城の桜をひと目拝みたいもの。高浜からだと古町からのルートが近いらしい、ということで古町で下車して向かったのだが、これが軽い登山レベルであった。息も絶え絶えな夫を置き去りにして本丸に到着すると、早咲きの桜がちらほら。ああ、ようやく今年の桜を眺めることができた。かすみがかった空の下の桜のなんて美しいこと。やわらかな描写の smc PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited にやわらかな「Gold」、それに愛媛の地酒があれば少し早めの春を満喫できるというものだ。

翌日の早朝、空港へ向かうタクシーの車内で鼻をグズグズさせている私に運転手が「黄砂じゃなくてお札でも飛んできたらええのにねぇ」とつぶやく。いやはや同意である。