PENTAX K-3 Mark III Monochromeの使いこなしで必要なことは何かと考えたとき、自分の目を鍛えるのが一番だと思いました。その見る目は撮影のとき、写真を選ぶとき、RAW現像など画像処理を行うとき、そしてプリントするときの決め手になります。そのためにもっとたくさん優れたモノクロ作品を鑑賞しなければという感じなのですが、私の場合はデジタル写真よりアナログ写真のほうに興味が惹かれる傾向で、インターネットではなくプリントされた作品を直接見るのがベスト。好きな写真家は今でもフィルムで撮っていたり、過去に発表された作品でまだオリジナルプリントを見ていないものもたくさんあります。でもそれらに触れる機会はそう多くないため、チャンスがあればたとえ遠方の美術館であっても足を運ぶようにしています。

9月は山梨県の清里へ行きました。清里フォトアートミュージアムで開催されたロバート・フランク生誕100周年記念展「もう一度、写真の話をしないか。フランクと同時代の写真家たち」(2024年7月6日〜9月29日)を鑑賞するためです。2019年開催の「ロバート・フランク展 – もう一度、写真の話をしないか。」以来、5年ぶりに訪れたのですが、今回は「フランクと同時代の写真家たち」の作品がお目当てです。ワーナー・ビショフ、ロベール・ドアノー、エド・ヴァン・デル・エルスケン、エリオット・アーウィット、アンドレ・ケルテス、ウィリアム・クライン、ユージン・スミスといった海外の写真家のほか、細江英公、石元泰博、川田喜久治、奈良原一高、長野重一、東松照明といった日本の写真家のオリジナルプリントも展示されていて、ゆっくり時間をかけて目に焼き付けました。だからといって自分の写真がすぐに変わるわけではないのですが、画面構成やプリントの調子などいろいろ勉強になりました。

PENTAX K-3 Mark III Monochromeで撮るとき、カスタムイメージは「スタンダード」に設定。撮影後は選んだ画像に対し、今回はカメラ内RAW現像で好みの調子になるよう、1枚1枚パラメーターを変更して仕上げています。そのような感じでまだポテンシャルを探っている状態なのですが、求める調子が得られやすいパラメーターの組み合わせが少しずつ分かってきました。もちろん光や画面構成などによって最適なパラメーターは変わるため、どのような撮影条件にも適用できるオールマイティーな設定を見つけることは不可能です。でも個人差があるとはいえ撮り方の振れ幅はそれほど広くないはず。使用するRAW現像ソフトによって設定を引き継げないケースもありますが、「スタンダード」「ハード」「ソフト」の中から自分が求める仕上がりに近いカスタムイメージを見つけ、さらにパラメーターを追い込むことでパソコンでの画像処理につなげやすくなると考えます。ちなみに、カメラ内RAW現像でもヒストグラムを表示できるようになるとうれしいです。

10月は「写真をめぐる100年のものがたり」(2024年10月4日〜11月17日)という展覧会を見るために静岡市美術館へ行きました。19世紀末から現在に至るまでの68作家、約180点のプリント作品を鑑賞したのですが、写真史の勉強にもなる見応えのある展示内容でした。6つの章に分かれていて、コロタイプやプラチナ・プリント、ブロムオイルプリントといった古典技法もありますが、展示作品の大半がゼラチン・シルバー・プリントです。そのためモノクロ作品がほとんどで、カラー作品が登場するのは最後の章くらいです。アルフレッド・スティーグリッツ、エドワード・スタイケン、ブラッサイ、エドワード・ウェストン、ウジェーヌ・アジェ、ジャック・アンリ・ラルティーグ、マン・レイ、アンセル・アダムス、ウォーカー・エヴァンス、アンリ・カルティエ=ブレッソンといった錚々たる顔ぶれの作品が続き、最初からとにかく圧倒されてばかり。作品数も多いためとても疲れました。

清里に行ったときは帰りの電車の時間までスナップ撮影を楽しむ余裕がありましたが、静岡では膨大な数のプリント鑑賞により消耗しきった体力を取り戻すための飲み食いで忙しかったです。それらの食べ物を撮影したのは全てスマートフォンで、PENTAX K-3 Mark III Monochromeを使わないのはモノクローム専用だから? たしかにカラーで撮った料理写真をモノクロに変換すると美味しそうに見えません。カラーで撮るときは色、モノクロのときは光や質感に反応する傾向で、後者は美味しそうとか、食べてみたいなどという欲求が湧きづらい傾向です。今回の展覧会でも果物などをモチーフにしたモノクロ作品もありましたが、お昼前でお腹が空いていたのにも関わらず食欲は全く刺激されませんでした。目を皿のようにしてプリントの細部を観察するばかりです。そうはいってもPENTAX K-3 Mark III Monochromeではカラー写真は撮れないので、そのあたりの検証はいずれやってみたいと思います。

今回の2つの展覧会ではほとんどがゼラチン・シルバー・プリントだったので、PENTAX K-3 Mark III Monochromeで撮影した写真もインクジェットプリンター用のバライタ紙で印刷してみたくなりました。とはいってもたくさんの製品があるため、その中からどれを選ぶのかとても悩ましいです。プリンターとの相性も見極めなければなりません。最終的にどのようなプリントに落とし込むのか、そのための画像処理との連携をどのようにするのか。撮影の精度を上げるなど、PENTAX K-3 Mark III Monochromeを使いこなすための試行錯誤はまだまだ続きます。