みなさんこんにちは!1回目の記事をたくさんの方に読んでいただけたみたいで感謝の念とともにこの後のプレッシャーがハンパないラリーです笑。
1回目の記事ではKマウント誕生までの紆余曲折についてご紹介させていただきましたが、今回はマウントではなく、PENTAX 17開発の際に参考にしたKマウント一眼レフの巻き上げ機構について少し検証してみたいと思います。
2024年に実にペンタックスとしては21年ぶりに発売したフィルムカメラのPENTAX 17ですが、企画メンバーが真っ先に決めたのはレバーでフィルムを巻き上げる、手動式フィルム巻き上げ機構の採用でした。本来ならコストを考えると、モーターを入れてとフィルムの送り幅を検知するセンサーを入れた自動巻き上げにすれば構造的には簡単だったのですが、そこをあえて手巻きにしたのはある思いがあったからだそうです。というのも、新品のフィルムカメラが入手できない現代では、巻き上げの感触は中古でしか体験できず、オイル切れや部品の摩耗、劣化等によって、発売当時とは異なるフィーリングのものが多く、できれば新品の最も良い状態の感触や音を味わって欲しいという熱い思いを実現したいと願った結果、手動式を採用することになりました。
そこで過去の一眼レフの設計図を引っ張り出して(データ化されていないので本当に引っ張り出したそうです)検討を重ねた結果、P30系の巻き上げ機構を参考に設計することになりました。P30?どんなカメラだったっけと思われる方もいらっしゃると思いますので簡単にご紹介すると、初代のP30は1985年に発売されたマニュアル露出制御も可能なプログラムAE機で、その後も絞り優先AEが追加されたP30N(1989年)、P30NをチタンカラーにしたP30T(1991年)と、実はかなりシリーズ化されていた、ペンタックスでは最後の手巻きタイプの一眼レフでした。ちなみにP30と同じ1985年には、カメラ本体にモーターを内蔵して自動巻き上げ方式にした最初のモデル、A3 DATEも発売されています。
LXやMXの巻き上げ機構が採用されなかったワケ
P30の巻き上げ機構を採用と聞いたとき、私が最初に思ったのは、なんでそんなマイナーな機種(諸先輩の皆様、ごめんなさい!)の機構を採用したの?ということでした。せっかくコストをかけて手巻き方式にするなら、もっとネームバリューのあるLXや、今も愛用されている方が多いMXとかにしたほうがPRしすいのになぁと思ったからです。でも、採用した理由を聞くと、自分の考えが全く浅はかだったことに気づかされました。
まずプロジェクトメンバーが考えたのは、巻き上げレバーは大事だけど、それ以上にフィルム装填を失敗してほしくないということでした。確かに往年の機種では、フィルムの先端をスプールの隙間に入れ、フィルムの上下にあるパーフォレーションをスプロケットギヤにしっかりと噛ませないとギアが空転してしまい、いわゆるカラ写しという失敗をしてしまいます。MX以降の機種では、従来の機種よりも失敗が各段に少ないPENTAX独自のマジックニードル方式のスプールを採用していましたが、それでも失敗を防ぐためには一定の慣れが必要で、私も初心者の時にやらかしてしまった苦い経験があります。その点、P30系のフィルム装填ではイージーローディングという方式を採用していて、フィルムの先端を所定の位置に置くだけで、後はいとも簡単にカメラがフィルムを正確に巻き取ってくれるのです。手巻きの感触は楽しみたいけど、フィルム装填は失敗してほしくない。そんなメンバーの想いを実現できるモデルがP30でした。色々と検証していくと、それ以外にも利点が巻き上げレバー式の命とも言えるフィルム巻き上げ時のフィーリング、実はLXやスーパーA(私が初めて手にしたPENTAX一眼レフです!)だと(あくまで個人的な感想ですが)、使い込んでいくうちにフィルムの最後のほうの巻き上げが買ったばかりの時よりもちょっとゴリゴリしてきたかな?というフィーリングの変化を感じていました。それがP30系では(たぶん)設計が進化したおかげか、ベアリングのパーツが秀逸なのか、開発で保管されていた相当使いこまれたボディでも巻き上げが最初から最後までスムーズで全くストレスが無いのです。
初めてフィルムカメラを使う人の立場で検討を重ねた結果、手巻き機構の最後の機種で、それまでのノウハウをつぎ込んだ機種である「P30」系の巻き上げ機構を採用したPENTAX 17、私も今では大正解の選択だったと、まるで最初から知っていたかのように、事あるごとに説明させてもらっているのでした笑。皆さんもPENTAX 17を店頭で見かけたら、ぜひ巻き上げレバーの感触を楽しんでみてくださいね。
P30(上)と17(下)を並べてみました。確かに裏ぶたのガイドローラーまでそっくり!
PENTAX 17の製品情報は>>こちら
第3回に続く