K-3 Mark III Monochromeが写し出す画像の優位性は、プリントすることでより実感できると思います。このカメラの発売前後に雑誌などでレビュー記事を担当したとき、K-3 Mark III Monochromeのカスタムイメージの「スタンダード」とK-3 Mark IIIの「モノトーン」の比較テストを行いましたが、パソコン画面では違いがほとんど分かりませんでした。原寸表示で細部をじっくり見比べてその差にようやく気づく程度で、でもそのような見方、見せ方はSNSなどインターネットでは普通は行いません。インターネットなど画面表示では画像は小さく圧縮され、SNSではタイムラインを流れ、スクロールされて消えていってしまうのでK-3 Mark III Monochromeの優位点を鑑賞者に伝えることは難しいでしょう。それならばK-3 Mark IIIの「モノトーン」や、カラーで撮った画像を後からモノクロ変換したもので十分なのでは?インターネットで公開したり、ネット応募できるフォトコンテストに挑戦するなど画像データで完結するのであればそのような判断もありだと思います。

K-3 Mark III Monochromeは発売から約2年半が経過しましたが、使い続けてみてやはりプリント表現において大きなアドバンテージがあると思いました。とはいえ一般的な撮影条件であれば、これまで通りフィルムカメラとモノクロフィルムの組み合わせで問題なく、K-3 Mark III Monochromeに変える理由は見当たりません。でも夜間や室内など薄暗い条件では十分な光量が得られにくいし、高感度フィルムはあまり使いたくないので、そのようなシーンを中心に作品制作を行うのであればK-3 Mark III Monochromeの出番でしょう。高感度や超高感度での撮影はK-3 Mark IIIとの画質差も大きく開くため、K-3 Mark III Monochromeを選ぶ意味も明確になります。今後はそのあたりの可能性も意識しながら使いこなしを模索していくつもりです。

プリントが完成形となるため、私の作品制作は用紙選びからスタートします。モノクロ写真はマット系のファインアート紙を選ぶこともありますが、やっぱりバライタ紙が一番しっくりきます。フィルム写真でもバライタ印画紙をずっと愛用しているからでしょう。デジタル写真でもそのモノクロ表現に追いつけ追い越せといった感じで続けていますが、なかなか思うような仕上がりにはなりません。用紙が決まらないとRAW現像など画像編集を始めることができませんが、あれこれ浮気をしないでまずは1つに絞ったほうが、プリント表現に合ったPENTAX K-3 Mark III Monochromeの使いこなしにもつながると考えています。

インクジェットプリンター用のバライタ紙は複数の用紙メーカーから発売されていて、各社さらに複数のラインアップがあるので目移りします。写真展などで使用経験が多いのは、イルフォードの「ゴールドファイバーラグ」、キャンソン インフィニティーの「バライタ フォトグラフィック II」、ハーネミューレの「フォトラグ バライタ」です。用紙選びでは、まずはそれらのテストから始めます。バライタ紙は染料プリンターより顔料プリンターのほうが好結果が得られやすいです。カラー写真でもプリントできる点がフォルム写真のバライタ印画紙と違うわけですが、カラーとモノクロでは判断基準や求める調子が違うので、選ぶ用紙が変わることもあります。光沢紙や半光沢紙といった写真用紙は、フィルム写真のRC印画紙に似た仕上がりです。インデックスプリントの作成など写真のセレクトや作品の構成を考えるときに使うことはありますが、本番プリントはバライタ紙と、このあたりの使い分け方もフィルム写真のときと全く同じです。プリントや用紙についてはまたの機会に詳しく紹介しましょう。

千葉の房総半島の東京湾に面した地域、内房にある鋸山、浜金谷、上総湊をブラブラと歩いてみました。今回もK-3 Mark III MonochromeとHD PENTAX-D FA 21mmF2.4ED Limited DC WRの組み合わせです。いつものように最終的にはカメラ内RAW現像で仕上げていますが、撮影するときはいつもプリントのことを考えています。RAW現像など画像編集のターゲットはプリントで使用する用紙になるため、その特性や仕上げるまでのプロセスなども意識しながら光を選んだり、画面構成を考えたり、露出を決めたりしています。どのようなプリント作品にするのか、どのように見せるのかなどをイメージしながら撮影しているわけです。これはフィルムカメラで撮っているときからずっと行ってきたことで、撮影、セレクト、画像編集、プリント、展示をそれぞれ「点」ではなく、どのようにつないで「線」にするのかを考えながら作品を組み立てていくのが好きなのです。