モノクロ作品は、今でもフィルムで制作しています。愛用のフィルムカメラ、お気に入りのモノクロフィルムや印画紙との組み合わせで長年やっているので簡単には変えられません。別にデジタルのモノクロ作品を否定しているわけではなく、写真やカメラに出合った子どものころから蓄積してきたノウハウがあり、撮影からプリントまで全てのプロセスにおいて安心して取り組めるからです。フィルムや印画紙、薬品などは以前より高価になり、しかも入手しづらくなっていますが、それらが完全になくなるまで工夫しながら続けるつもりです。私が生きている間はおそらく大丈夫でしょう。
フィルムで撮影した写真をインターネットで共有するときは、もちろんデジタルデータ化する必要があります。雑誌などに掲載する場合も同じくデジタイズしたものを使用するか、あるいは従来通りプリントを反射原稿として入稿します。そのプリントもフィルムから印画紙に引き伸ばすのではなく、デジタルデータから出力するデジタル銀塩プリントやインクジェットプリントが主流になりつつあります。
デジタルカメラが普及する以前は、写真をスキャナーでデジタルデータ化してパソコンに取り込むのが一般的でした。パソコン雑誌でも仕事をしていた1990年代は、新製品のレビューや比較テストなどスキャナー関連の記事も多く担当しました。
今のようにUSBではなくSCSI(スカジー)接続であったため、うまく取り込めなかったり、読み込みにすごく時間がかかるなど苦戦を強いられたのをよく覚えています。プリントはフラットベッドスキャナー、フィルムは透過原稿ユニット付きのフラットベッドスキャナー、またはフィルムスキャナーでデジタイズします。フィルムスキャナーはカメラメーカーからも発売されていましたが、今ではそのほとんどが姿を消し、フラットベッドスキャナーを含め製品数は大幅に減りました。
近年、カメラ雑誌の企画で現行品のスキャナーを検証しましたがどれももの足りない感じで、最終的にプリントすることを考えると選択肢は限られます。カラーネガフィルムの現像をDPEショップなどに依頼すると、同時にデジタルデータ化するサービスも利用できますが、その場合も私が必要とするクオリティーには不十分です。そこでプロラボなどの高性能のスキャナーでデジタイズとなるわけですが、その料金は安くありません。200万円以上するハイエンドのフィルムスキャナーの購入を検討したこともありますが、画素数が増えたこともあり、今ならデジタルカメラでフィルムを複写するほうが現実的でしょう。ネガポジ反転や色調などの調整は簡単ではありませんが、ファインプリントに仕上げるためのポテンシャルは十分です。
モノクロフィルムのデジタイズは、カラーも撮れるデジタルカメラより、モノクロ専用機のK-3 Mark III Monochromeのほうが圧倒的に有利だと考えます。カラーフィルムのデジタイズにはもちろん対応できませんが、モノクロ変換の必要はありません。K-3 Mark IIIなどでカラーで撮影し、後からモノクロ変換したものより解像感が高かったり、エッジ処理が自然だったり、いろいろアドバンテージがあることは本連載でもすでにお伝えしている通りです。フィルムの粒子を生かしたデジタル画像が得られるなど、ファインプリントのためのモノクロフィルムのデジタイズに大いに期待できます。
フィルムのデジタイズはパソコン画面に白い画像を表示し、透過させて撮影する方法が簡単です。でも最終的にプリントで仕上げるなどデジタルカメラでしっかり残したいのなら、ライトテーブル(ライトビュアー)にフィルムを乗せて複写するほうが良いでしょう。写真用のライトテーブルは選択肢が少なくなり高価ですが、トレース用のものはネット通販などで数千円で購入できます。大きさがA4サイズのものであれば大判フィルムのデジタイズにも対応可能です。デジタイズ用のフィルムホルダーも販売されていて、フィルムのカーリングなどに手こずることなく複写できます。フィルムビュアーとフィルムホルダーがセットになった製品もあります。なお、フィルムの複写に便利なPENTAX FILM DUPLICATORとPENTAX FILM DUPLICATOR 4×5がPENTAX純正アクセサリーとして用意されていましたが、すでにどちらも販売終了になっています。
フィルムのデジタイズはライブビューモードで三脚を使用し、基本的にRAW形式で撮ることになります。レンズは35ミリ判(36×24mm)フィルムに対応できるようHD PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8ED AWを選びました。フィルムを撮影し、RAW現像ソフトでネガポジ反転。あとは明るさやコントラストを調整したり、必要に応じて部分的に覆い焼きや焼き込みを行い好みの調子に仕上げるだけです。昔の写真はフィルムが劣化していたりしますが、ゴミ取りなど丁寧に行えばきれいになります。
フィルムコンパクトカメラのPENTAX 17で撮影し、現像だけ行ったモノクロフィルムがあったので、こちらもデジタイズしてみました。35ミリ判1コマを約半分の17×24mmサイズで撮影するハーフサイズフォーマットは2コマずつ、2in1で複写するのと良いでしょう。あとから1コマずつに切り出せば、好きな組み合わせでの2in1画像を作ることもできます。もちろんプリントするときの解像度を考えると、できるだけ画面いっぱいに1コマずつ撮影したほうが有利です。








