2月のお題は…『朝の風景』
朝、仕事に遅れないように駅に向かって一目散に歩いたとします。後ろを振り向く余裕はありませんので朝の駅しか目には入りません。しかし、もし振り向いたら朝の光に照らされた我が家が見える筈です。夕方か夜、駅から自宅に向かって帰路につきます。夕方以降の我が家の方向しか見ていません。もし今来た道を振り返ったら、夜の駅が見えだけです。このように、朝の光景とは見落としがちなものです。週末か、仕事がない日の朝の風景を撮ってはいかがでしょうか。朝陽に浮かび上がった窓からの風景、自分の部屋の様子などでも良いでしょう。
ハービー・山口 師範からの2月のお題は『朝の風景』でした。
このお題に対して挑戦してくださった方の作品と、師範からの添削コメントを併せてご紹介します。
2月の挑戦者その1:いわっちょさん
冬の朝。いつもの時間。いつもの列車。ローカル線の何気ない日常。
埼玉県在住、男性。休日はカメラを片手にふらりふらり。K-3とK-3 II、GR IIを愛用しています。PENTAX K-3 IIとSIGMA APO 50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSMで撮影。
師範の判定結果は・・・
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残念ながら
朝のローカル線の風景は多くの人々が惹きつけられるシチューションです。多くの男性は、無自覚であっても鉄ちゃんの要素を持っているのではないかと思います。
私はこの駅の状況は大好きですが、廃線にも惹かれるものがあり、車で走っていて、時に草に覆われた廃線を見つけるとカメラを向けたい衝動に駆られます。
この写真の良いところは低アングルから撮影していることです。ちょっとしたカメラ位置の違いで、写真の印象はかなり違ってきます。平凡なアングルで強い写真もありますが、それは中に写っているものにかなり強い印象があるからです。光の入り方、カメラ位置、フレーミングなどを工夫することで写真のうまさが決まってきます。遠くに電車が写っていますが、このタイミングが重要です。電車の姿が見えることで、これから起きることが何かしら想像できます。遠くの山並みもこれ以上なく、この土地の空気感を感じさせてくれています。
気を付けなければならないのは、学生の後ろでベンチに座っているジーンズ(?)を履いた人物の写り込みです。この人物を何とかして画面から排除したいです。可能なら作者が左に移動すると、学生が二人写ることになりますが、後ろの人物を隠せますね。レタッチで消すのではなく、より良い機会、タイミングが訪れることにも期待したいです。
2月の挑戦者その2:まるちゃん
ファインダ-を覗くと朝の太陽がまぶしかった
東京都在住、男性。ペンタックスファミリ-会員歴30年位になります。PENTAX KPとsmc PENTAX-DA★16-50mmF2.8ED AL[IF] SDMで撮影。
師範の判定結果は・・・
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残念ながら
朝日とか夕日の美しさはいつの時代も我々の心を捉えて離しません。その理由は様々あるかと思いますが、輝く太陽の存在は私たちに希望とか明日、または穏やかさを投げかけてくれる、かけがえのないものです。そうした太陽をテーマとして風景を撮影するという行為は、ごく当然のこと、またはごく自然なことで、写真を見る人にも多くの共感を与えるものだと思います。
この写真は分野としては風景に分類されると思いますが、刻々と変化する太陽の角度や光の色、強弱、そしてその光を受けた植物、ときめく作者の心などをひっくるめれば、やはり一種のスナップなのかもしれません。ただこうして太陽を取り入れたものは万人に共感されますが、写真にした場合、「日常で良く見かける写真」とされてしまい記憶にまでは残らない場合があります。
川面の光は綺麗ですが手前の草むらが露出的に沈み過ぎですね。例えばこの部分をレタッチするなどして「朝日を浴びた植物の生命力」を感じさせるように仕上げることができたらずっと印象が変わるでしょうし、タイミングを見計らってこの草むらのどこかに犬や人物を小さく、またはシルエットでも呼び込むことができたら、かなりの秀作になるでしょう。欠けている何かの要素を呼び込むことも写真家の実力なのです。
2月の挑戦者その3:雨上がりの歩道橋さん
単身赴任をしていた頃、休日は近所の草花を撮りながらの早朝散歩。
犬の散歩はときどき見かけるけど、小さな子供が一緒なのは珍しい。
今日は祝日なのに早起きだねぇ…でもちょっとつまらなくなってきたのかな?
小さなボクの微妙な距離感に惹かれて、一枚。
大阪府在住、男性。PENTAX K-7からスタートして、いまはK-1、Q7、Qを愛用してます。PENTAX K-7とsmc PENTAX-FA 77mmF1.8 Limitedで撮影。
師範の判定結果は・・・
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残念ながら
人の後ろ姿は、時に顔の表情よりも雄弁に何かを物語ることがあります。顔は笑ったり、しかめ面をしたりと表情筋を使って表情をコントロールできますが、後ろ姿は、芝居をしている舞台の役者さんならともかく、日常ではまず演技とか、意識的にコントロールしないものですから、飾らない何かが表出するのです。
コメントをみて感心しました。この写真の中の左の大人と右の子供との距離感から、子供の「散歩に飽きてきた、ちょっとつまらない気持ち」を作者は想像したのです。これはとても重要で、素晴らしい観察力だと感心しました。そう言われてみれば、子供の心の中が見えてきそうです。こうした観察力を持ってすれば、これからも素晴らしいスナップ写真が撮れるのではないでしょうか。後ろ姿だけを撮影した組み写真なども撮ってみてはいかがでしょうか。
個人的には遠くに続く道の先まで写す構図は好きなのですが、画面全体の印象が平凡なんですね。黄色いカーブミラーの縦線と女性の帽子が干渉し合って気になります。思い切って少ししゃがんで、低いアングルで道の先までの視界は保ちつつ、フレーミングで女性の肩から上は省いてしまうとどうでしょうか。つまり子供は全体が写り、左の大人は背中から足までの後ろ姿だけが写ります。すると子供と犬、大人の足だけでストーリーが強調されるのではないでしょうか。
今回採用された3名もあえなく『門前払い』となってしまいましたが、師範のコメントをご参考にしていただき今後も撮影を楽しんでいただければと思います。
また、「門前払い ミニ木札」をお贈りします!
ぜひ以降のお題にもチャレンジしてみてください!