自宅勤務を活用して、おうちでのブツ撮り記事を更新していくつもりだったのですが、何気に自宅での日常業務に適応してしまい3回目の着手が遅くなってしまいました。
>>前回の記事:大事なものを撮る ~愛機編 その2~(Yuzu)
その3はずばり「スタジオ機材を使用した撮影」編です。
今回は、私が社内副業的にイメージカット撮影で使用している、ProfotoのB10というバッテリータイプのスタジオライトを2灯用いて撮影していきます。
同じライトを2灯使う理由としては、同じ出力のもののほうが光量比で考えればよいので個別の調整が簡単なためです。理想を言えばですが、複数灯をそろえるときには同じモデルで揃えると便利です。
スタジオライトというと、AC電源タイプのモノブロック(フラッシュヘッドと電源部一体型)、ヘッド・ジェネレーター分離型(フラッシュヘッド/電源・操作部の分離型)に加えて、最近増えてきたバッテリー型があります。(加えてフラッシュ(瞬間光)ではない、撮影用LEDライト(定常光)も充実してきました)
スタジオライトを使用するメリットとしては、単純に光量が大きいことに加えて、出力をより細かいピッチで調整できること、発光部(ヘッド)が円形で綺麗な円形グラデーションを描き、そこから多彩なアクセサリーを駆使してさらに照射範囲や光質をコントロールできる点にあると思います。
また、モデリングランプでライティングの効果を撮影前に目視できるのもポイントです。ライティング効果を確認しながらセッティングをするという意味では、最近良いものが増えてきたLEDランプなども扱いやすいと思います。(個人的には瞬間的に被写体を照らすフラッシュの刹那的な感じが好きです)
さて、今回もできるだけバリエーションをお見せしたいのですが、日中に赤ん坊の睡眠スペースを奪って撮影していますので、できるだけ手早くライティング効果を変えることを重視して紹介していきます。社員の我流での説明ですので、予めご容赦いただけますと幸いです。
スタジオライト2灯(トップ+斜め前)で撮る
前回の記事でもご紹介したように、背景紙をセットしていきます。自宅にいると外に出ないストレスで機材をポチりがちです。3連のフックで背景紙を取り付けて、チェーンで巻き取ったりすることができるものを導入してしまいました。
でも撮影は寝室で行っているため都度片付ける必要があり、結局持て余し気味です。機材の導入はくれぐれも計画的にどうぞ…。
今回の撮影では、まずは通常の黒い背景紙をセットし、さらにその上に黒色のアクリルボードを置きます。
基本的に背景紙は反射の影響を避けるためマットなものを使用しますが、光沢を持ったアクリルボードを用いることによって、被写体やライトの“反射”を活かすことができます。
小さいものならホームセンターなどでも手に入りますので、ぜひチャレンジしてみてください。(しっかり光沢のあるものでないと綺麗な反射は得られないのと、すぐに傷がつくので取り扱いにもご注意を)
さて、今回はアートレ越しにメインライトを上から照射する「天トレ」、斜め手前から影起こしのためのライト(ソフトボックス装着)の2灯をセットしました。
手前側のライトに装着したソフトボックスの構造は内部で反射した光を、2枚の乳白色の布(ディフューザー)でさらに和らげて照射する仕組みになっています。
ライティングツールとして一般的な無透過アンブレラが光を反射してある程度広く拡散させて和らげるのに対し、ソフトボックスは光質を柔らかくしながらも指向性のある光を照射できるのがポイントです。
そのため、背景にできるだけ影響を及ぼさずに狙った部分だけに光を補うには、アンブレラよりもソフトボックスが向いていると言えます。(さらに光の直進性を増すための「グリッド」という格子状のものを組み合わせたり、硬いスポット光をつくるための「スヌート」と呼ばれるものもあります)
上のライティングで撮影した写真
本記事でも引き続き掲載写真はライティングの効果を感じやすいよう、カメラで撮影したままのJPEG画像としています。
スタジオライト1灯(背面からのスポットライト風)で撮る
次はライトの配置は大きく変えずに、ライティング効果を大きく変えてみます。
まずは、冒頭の撮影で用いていた右斜め手前のライトはOFFにしてしまいます。
そして、背面からの光を和らげてくれているアートレに対して、ライトのヘッドを近づけます。すると、アートレ越しの光が円形に大きく広がるグラデーションライトではなく、ある程度の芯を持ったスポットライトになりました。(今回用いているスタジオライトはモデリングランプがLEDですのでアートレに近づけても問題ありませんが、ハロゲンランプを使用しているものは発熱、発火にご注意ください)
グラデーションを伴ったスポットライトが落ちたような演出となりました。
撮影用のカメラで撮影すると、以下のような感じ。
上側のエッジと、前玉だけにハイライトがあるシルエット調の写りとなりました。
ライティングはそのままで撮影するカメラポジションを高くし、アングルを下げることで前玉の反射をより目立たせて撮影しました。昔のレンズカタログ表紙風。
我が家のFA Limited三姉妹、あらためて素敵…。
スタジオライト1灯(右斜め手前から)で撮る
続いて、背面からのライトをOFFにして右斜め手前のソフトボックスを装着したライトのみでの撮影に切り替えます。
本来は個別のライトの効果を確認するためにON/OFFを変えながら撮るのが正しいんですけどね。
右斜め手前からある程度指向性のある柔らかい光が当たっているため、このような描写となりました。被写体の右手前からハイライトを入れるという、役割がきちんと効いている証拠です。
製品のイメージカットも
先日発表したレンズ新製品のイメージカットの撮影にも、上でご紹介したようなライティングを用いて撮影しています。(撮影はPENTAX K-1 Mark II + smc PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8 WR)
ライティングをするこの手のブツ撮りに限らないことだとは思いますが、毎回ゼロから試行錯誤を重ねるよりは、過去に試してうまくいったものを踏襲しつつ被写体や撮影環境、機材に合わせて微調整を加えていくというのが近道に思います。
野望)カラーフィルターや、スモークを活用してみたい…
今後の自由研究としては、スモークの中から現れるK-1 Mark IIとかを撮影したいですね。
カラーフィルターや、カラージェルと呼ばれるものです。光源の色かぶり補正のためのものから、完全に色を乗せるためのものまで存在します。色の濃いものほど光量のロスが大きいので注意です。
こうやって被写体の後ろにスモークを炊けば良い感じの撮影ができそうなんですが、自宅でやったら怒られますよねぇ。うーむ。
番外編)発光部をうまく撮影するには?
発光する被写体をうまく撮影するにはどうすれば良いか?という質問をいただきました。本連載は一区切りしようと思いますので、この場でついでにお答えしたいと思います。
大きく分けて、「別撮りして合成する」か、「スローシンクロで撮影する」です。
ライティングがメインの記事ですので、今回は後者の方法をご紹介します。
被写体:背面液晶と肩の表示パネルを点灯させたK-1 Mark II
■解説を動画にまとめてみました
まとめ)ライティングの魅力は光と影をコントロールできること
同じような構図で、同じ方向から光を当てて撮影しても、ライティングの効果で見た目の印象が変わります。
光と影を自分でコントロールできることが、ライティングを活かした撮影の大きなメリットと言えるでしょう。
ぜひ皆さまもライティングを駆使して愛用しているカメラ・レンズを撮影してみてはいかがでしょうか?