こんにちは

カメラ好きの写真オタクな商品企画の大久保(以下O)です。
そろそろ新しいカメラでどこかに写真を撮りに行こうかなと思ってます。

みなさんはカメラを持ったときに何を撮りますか?
私は諸事情あって身近に咲いている花を撮るようになりました。花を撮るという方は結構いらっしゃるのではないでしょうか。
さて、6/18からリコーイメージングスクエア東京のギャラリーRで黒田和男さんによる花の写真展「re collection」が開催されています。

実際会場で俯瞰して観ると小さいサイズの作品が等間隔に並んでいて、その統一感が落ち着きを与えてくれます。
そして、近くによると花の形状が強調されていて、小さいながら強く心に残りつづけます。

そんな展示をされている黒田さん(以下K)にお話を伺いました。

黒田 和男
略歴
兵庫県宍粟市波賀町生まれ
日本写真学院「安達ロベルトゼミ」 Solaris「大和田良ゼミ」において学びを深める
現在は関西を中心に活動中

個展
2018.10 大阪市 gallery solaris 「cut flowers」
二人展
2019. 4 金沢市 serif s(セイタロウデザイン金沢)「re birth」
2019. 5 大阪市 gallery solaris 「re birth」
主なグループ展
2019. 6 東京 Tokyoarts gallery
2016.11 パリ Galerie Daguerre
2016.11 パリ Paris CARAT(パリ電通)
2015.11 東京 アツコバルー 「Life」
2015.11 パリ Galerie Daguerre

https://www.kazuo-kuroda.com/

<ソラリゼーション>

当日は実際に撮影で使われたカメラ(RICOH GXR mount A12)をお持ちいただきました。

O:実際の展示を拝見した時はフイルムで撮影されているのかと思いましたが、デジタルなのですね。
K:デジタルでソラリゼーションを施しています。
フィルムで発明されたソラリゼーション(*1)は、今回の写真のソラリゼーションよりもっと効果が強調されると思います。中間域をしっかりだして階調を残して、エッジを際立たせて普通の花とは感じないようにしています。
O:作品を拝見するとエッジの際立ち具合が写真によってばらつきがあり、一見普通の写真に見えるものもあります。強弱の調整をされているのでしょうか?ソラリゼーションの手法について教え下さい。
K:まずLightroomを使って調整して、そのあとで部分部分についてPhotoshopを使って調整しています。
でも、すごく手を加えているわけではありません。光の加減も変えていないし、撮ったままを出しています。
撮影時の光を大切にする事は、安達ロベルトさんのゼミで学びました。今回は、カメラを固定して撮影しています。そうすると、周りを確認しながら、ゆっくりと落ち着いた気持ちで光を見る事ができます。

ソラリゼーションの技法は大和田 良さんのゼミで知りました。トーンカーブを波打つように調整しています。
大和田 良さんの本(*2)にはソラリゼーションのトーンカーブが乗っています。
ただ、僕のソラリゼーションは本が出る前のゼミで教えていただいたトーンカーブをもとにしています。湿版写真の雰囲気に近づけたいというのもあります。
実は花を撮るのも大和田さんのゼミが初めてでした。ゼミでは、いろんな写真家の作品やwilliam a ewingさんが編集された写真集を紹介していただいたり、写真史を学ぶことができたのが面白かったです。
特にシュルレアリストのマン・レイ(*3)の花の写真が頭に残りました。エッジに特徴のあるソラリゼーションが好きになりました。
以前から、菅原一剛さんや、ヨゼフ・スデク(*4)の作品の雰囲気も好きだったのでそれも頭の中にあったのだと思います。

O:どのように写真を作りこんでいくのか興味があります。花を選んだ時点で作品のイメージはできているのでしょうか?
K:花を選ぶときはその花が撮影場所に合うか、ソラリゼーションに合うかを考えていますが、買うときに作品イメージはありません。
撮影は撮影だけに集中します。花だけど花じゃないようにしたり、物を入れたりしています。いつも同じ場所で、テーブルの上に黒い布を敷いて撮影しています。黒い布はソラリゼーションをかけると、白になったりグレーになったりします。写真によっては黒を残したりなど、作りながら感覚で決めていきます。現像をしているときは別人格になっています。
O:なるほどステートメントに「自動記述」と書いてあるのはそういうわけ(別人格になっている)なのですね。
ところで、この写真は色が残っていてダゲレオタイプ(銀板写真)(*5)のようにも見えて、ほかの写真と違う印象があります。

〔展示されている写真〕

〔トーンを合わせる前の写真〕

Kダゲレオタイプの錆みたいなものを表現したかったのです。元々はもっと青かったのですが、今回の展示に合わせてトーンをおとなしくしています。

*1)ソラリゼーション:ネガフィルムやポジフィルムの露光中に光を過度に当てることで、潜像の一部が過剰に露光され、その部分の画像が反転して現われる現象。または、その現象を利用して写真を作る技法。ネガ像とポジ像をひとつのイメージのなかに同居させたような画像が得られる。(現代美術用語辞典ver2.0artscapeから引用)
*2)「みんなの Photoshop RAW 現像教室」 大和田良著 出版社:インプレス
*3)マン・レイ:アメリカ・フェラデルフィア生まれ。おもにフランスのパリで活動した画家、写真家、彫刻家。ソラリゼーション技法を発明した一人。
*4)ヨゼフ・スデク:「プラハの詩人」と呼ばれたチェコ出身の写真家。光と影の描写が独特で一部の作品ではシュルレアリスム的な傾向もうかがえる。
*5)ダゲレオタイプ(銀板写真):1839年、フランスのルイ・ジャック・マンデ・ダゲールによって発明された世界初の写真。銀メッキされた銅板上にヨウ化銀を塗布することで感光性をもたせ、水銀蒸気で現像する技法。金属板の表面に直接像を焼き付けるために、複製不可能な一枚限りの写真となる。(現代美術用語辞典ver2.0artscapeから引用)

<花を撮ること>

黒田さんはダゲレオタイプを意識されています。なぜ花の写真を小さいダゲレオタイプのようにしたのでしょうか。

O:なぜ花を撮られるのでしょうか?
K:実際に花を撮るのが面白かったのです。好きな時に撮れ、自分の表現したい花に近づいていく過程が楽しかったのです。
駅の花屋さんで買うときに、花はこんなにきれいなのに売れなかったら捨てられてしまいます。本当は種を作るのに、ここにあるきれいな花はそれができない。
そう思うと花屋さんで買う花はさみしいなと思っていました。なので写真も最初は悲しい儚い感じで仕上げていました。
あるとき、その写真について人と話しをしていると、別の見方もあるのではないかと指摘を受けたのです。
それから、実は強いところがあったりとか、勇気づけられたりとかがあるのではないかと考え始め、花から力がもらえる作品を創りたいと思ったのです。
最近になると、花は鏡みたいになっていると思っています。鏡だから通り過ぎる人はそのまま過ぎてしまう。鏡の前で止まった人は追憶じゃないけど何かを思い起こして考えてくれるのかと思っています。
自分では勝手に レデイメイドとファウンドオブジェの中間だと思っています。

O:記録としての写真だけど、それだけではない。見た人のそれぞれの記憶を呼び起こす。花を介して自分の姿を見ているのかもしれないですね。なぜ、写真を小さなサイズにしているのでしょうか?
K:写真を展示するに当たって、写真を見ながら人にしゃべってもらいたい。写真で会話してほしいという想いが強くあります。
今回は何度も見返してもらいたいので、手札写真のようにしたかった。写真を撮って額装して飾ってもらう。写真をモノとしたいなと思っています。

確かに小さな写真ですが、冒頭にも書きましたが印象が強く心に残る写真で紙以上の重さを感じます。確かにこの写真はモノになっていると思います。
この写真プリント、どうやって作り出しているかが気になりました。

<写真プリント>

O:写真プリントはどのように行っているのでしょうか?
K:紙はハーネミューレのフォトラグバライタで、インクジェットプリンターで印刷しています。このまま飾ってもらえるように、余白は紙の色ではなく着色しています。
質感を出すために、作品保護のニスを数回に分けて塗っています。

黒田さんは今回の展示にあわせプリントを細かく調整されています。その調整方法について教えていただきましたが、ここではあえて書きません。
実際に会場で黒田さんに聞いていただけると、写真プリントに対する並々ならぬこだわりを感じることができると思います。

古いダゲレオタイプの写真展を見たことがあります。
大きさは小さく、ベースが紙ではなく質量のある金属(銀板)で、複製ができない写真です。
ダゲレオタイプは大切な家族などのポートレートが多く、形見のように肌身離さず持っているような使われ方をされていました。
なるほど何度も見返すには、ダゲレオタイプのような小さな写真がふさわしいと思います。

皆さんも、モノとして感じることのできる写真を見に来てはいかがでしょうか。
皆さんのそれぞれの心の中にある何かを、想い起こしてくれる花の写真と出会えるかもしれません。
もし出会えたら、ぜひ購入されることをお勧めしたいと思います。
今回の展示では枚数限定ですが、写真プリントを販売しています。
私も気になる作品を購入いたしました。

今は仕事用のテーブルの上に飾っていますが、かつてのダゲレオタイプのように手帳のように収められるケースを探したいと思っています。

また、黒田さんは大和田 良さんや安達ロベルトさんのゼミを起点に、ご自身の写真表現を磨いてきていることがわかります。
ちょうどリコーフォトアカデミーでは自分ならではのテーマを見つけることが出来る「ゼミナール」を開講していて大和田 良さんのゼミもあります。
本年度はもう始まってしまいましたが、興味がある方は来年度にいかがでしょうか。

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