こちらの記事は、ペンタックスリコーファミリークラブ会報誌から転載しております。

 

良い写真を撮りたい!

ドキドキ、ワクワク。カメラを構えてながめる世界は、いつも発見と驚きに満ちています。
もちろん、うまく結果に結びつかないこともありますが、なによりまず気づけた好機に、私は「あぁ写真をしていて良かったな」と実感します。
もし写真をしていなかったら、こんな素敵な光景をおそらく見過ごしていたかも、人生で限られた出会いを損するところだった、なんてすら思うのです。
さて、カメラを手にしたら誰もが「良い写真」を撮りたいと願うわけですが、はてさて、その良い写真、逆に悪い写真って、いったいどんな写真なのでしょうか。

良い写真、悪い写真ってなに?

ピント、露出、構図、色彩、よくある理由を探してみても、どれも絶対的な写真の良し悪しとはならないことは事実です。なぜなら、ピントなんか良くなくても、心に残る作品に出会ったことがたくさんあるからです。
良い、悪いというより、写真にはまず単純に見ていて、楽しいか、つまらないか、という差があります。
そして、「見ていて何かが伝わってくると、楽しくなる」という関係に気づきます。つまり、楽しい写真は気持ちが伝わり、伝わらない写真がつまらないことが多いのです。
漠然とした良い写真を撮るなんて力むより、まずはどうやったら伝わる写真が撮れるようになるか、心がけていくことが大切です。
そこで、このPhoto Essay ではこれから、伝える写真、伝わる写真となるためのアイデアをいくつか紹介していきたいと思います。

つながりは深いほど楽しく、さらに深めていくもの

同じ写真を見ても、楽しいという人もいれば、つまらないという人もいます。そこには、単なる好みの感情以外に、もっと根本的な理由があるはずです。

それを紐解くキーワードが「関係性」です。

なにげない風景写真であっても、生まれ故郷だったり、自分に関係するエピソードがあったりすると、とたんに人は興味深くなってきます。これを写真表現の言葉で関係性といいます。
写真撮影では被写体との関係性が深くなるほど、おもしろい視点で写真が撮れるようになります。
キレイな風景をただキレイになんて、関係性が浅い写真は、薄っぺらで自分でもすぐに飽きてしまうものです。
関係性は過去の記憶などに由来するところが多いのですが、新たな関係性を作ってゆく気持ちも大切です。撮影スポットなどに、パッと訪れたり、通りかかったくらいですぐに関係性が持てるほど、そんなに人は器用ではありません。

関係性を深めるためには、何度もその場所へ通うことが大切でしょう。地道ですがそうして関係性とは、じっくりと築いてゆくものではないでしょうか。だんだんお気に入りの木ができたり、その地への思い出ができたりすれば、それが関係性となります。何度も書くように、関係性は深ければ深いほど、写真はおもしろくなるのです。
生まれ育った東京・新宿の街を、私が撮るべき風景として、撮り続けているのも、こうした自分の関係性に動機があります。
写真することは、時に自分を見つめなおす行為でもあります。まずはよく見渡してみましょう、みなさんの身近にも、きっと撮ってみたくなるような素晴らしい関係性が見つかるはずです。

(ペンタックスリコーファミリークラブ会報誌199号より)