私がふだんの撮影で気をつけていることは、なるべく「ひとりで撮影する」ようにすること。被写体が自然ということもあるし、撮影は基本的に個人で行うものだけれど、ここでいう「ひとり」というのは、他の人がいない環境のことを指している。みんなでワイワイ撮影するのも楽しいけれど、本気モードのときはやはり「ひとり」だ。

なぜそうするかというと、他の人がいると思うように撮影できなくなってしまうことが多いからだ。

風景撮影はどこからでも撮れるだろうと思われがちだけれど、前景やまわりとの位置関係を考えながらカメラポジションを考えていくと、実はベストのカメラポジションはひとつしかないことも多い。撮り慣れた人がいれば同じようなことを考えていて、先客がいれば諦めるか妥協した構図で撮影するしかない。
いきものを撮影するときはひとりであることがもっと重要で、いきものの行動を理解していない人がよけいな動きをするだけで被写体に逃げられてしまったり、自然な動きを見せてもらえなくなったりすることも多く、苦い経験を何度もしている。
そういった経験は、みなさんも一度や二度はあるのではないだろうか。

だから、数少ないチャンスをより思い通りに撮影するために、また先に撮影をしている人の邪魔をしないように、人を避けて撮影するようになった。

コロナウィルスの影響が残る現在では三密を避けるため、まわりに人がいない環境をみつけることが外で安心して撮影するためにも必要になってくると思う。

いきものの撮影では、こちらがいかに彼らの行動を妨げないかが大切。とくにリスのような捕食される側では、ちょっとした私たちの動きも大きく影響するので、極力誰もない環境で撮影したい。このシマリスはしばらく動きを近くからじっと見ていたら、安心したのか居眠りを始めてしまった。

 

では、「ひとりで撮影する」ためにどんなことをしているかというと、難しいことはない。一般的な人の行動と思考やタイミングをちょっとずらすだけでいい。

撮影するところは撮影ガイドなどの情報に頼らず、自分で撮れるところを探してみる。メディアで紹介されている場所は人も集まりやすい。広い風景を撮影しようとするとどうしても場所が限られてしまうけれど、部分的に切り取るような撮影は意外とどこでもできるもの。望遠レンズやマクロレンズを使えば、自然な雰囲気で撮影できる。
初めての場所では都市部でも地方でも公園を目安に探してみて、少しずつ範囲を広げていくことが多い。都市部でもちょっとした木や草がある公園があれば、そこには花や虫などもいてけっこう撮影できることが多い。
近所を散歩するときに、そんな場所がないか探してみよう。小鳥も意外とどこにでもいるものなので、あらためて探してみると面白い。このあたりは以前もお話しした、興味を広げていくことでいろいろなものが見えてくるはずだ。

以前、大阪の写真展会場へ向かう時に撮影した一枚。大阪はまったく土地勘がないので、ホテルで公園のあるところを調べておき、公園と街路樹などを探しながら歩いたときに出会ったシーン。道路脇の花壇にアサガオが植えられていて、よく見たらツユムシの幼虫が隠れていた。街中にも自然はある。

有名撮影地になるとなかなか人を避けることはできないし、いい時期・時間にはたくさんの人が集まってくるので、そのようなところに行くときは、あえて良いといわれる時期や時間を外すことも多い。でも、そのおかげで意外なシーンに出会えることも多く、人と違う写真を撮れるチャンスでもある。定番的な写真を狙うのなら朝夕といった定番の時間しかないこともあるが、それ以外の楽しさがあることも行ってみると分かるだろう。

この日の日の出は3時40分頃だったが、このカットを撮影したのは6時50分。週末だったこともあり、あえて日の出の時間を外してゆっくり撮影に出かけたことで、貸し切りの環境でこの一枚を撮影できた。摩周湖の湖面に太陽が反射している状態なのだが、薄い霧が残っていたおかげでそこに虹色が現れていた。

とくに夏の日が長い時期は、早朝のような人の行動が増える前の時間に撮影に出れば、まわりを気にすることなく落ち着いて撮影もできる。そして、暑い日中は家で休んでいればいい。

自分の作品をレベルアップするため、このご時世のなか安心して撮影を楽しむため、ひとりで撮影することを意識してみてはどうだろうか。