– 写真家 松田洋子氏は、どのような観点で見つめ、思考を巡らせたのか  –

「人の気配」を感じるような空間を撮ることが私の撮影テーマの中の1つになっています。

人がいなくてもまるでそこに人が居たかのような、または、これから来るかのように想像できる1枚が撮れたら、と思いながらシャッターを押しています。写真の奥に何かを感じてもらえるよう日々試行錯誤しています。

 

  • 表現するための要素

まずは撮影する自分自身が、その場所や被写体にピンとくること。思考を空っぽにしてその場所をふらふらと歩いたり、被写体をただ楽しんで見つめたりします。そのうちにピンときたらシャッターを押すようにしています。

何となく撮っておこう、という写真もお気に入りの1枚になることはありますが、自分が意思をもって伝えたい1枚は、ピンときたものの中からが多いような気がします。

 

  • ロケーション

写っている被写体や場所が、今よりも少し前の時代であること、私の場合だと地元横浜には古い建物が多いのでよく撮影します。

または現代のものや場所であっても、人が日常的に使っているものや日常の生活の中に溶け込んでいるものを見つけます。普段食事をしている食器、それこそ朝読んだ後の新聞、テレビのリモコンも人が使う物ですので、そんな日常の中に溶け込む被写体が写った写真をご覧になった方には、写真から人を感じていただけるのではないか?と思うのです。

ここは撮影者の腕の見せ所なのかもしれません。

 

  • 時間帯

室内での撮影が多いので、窓から光が入る朝や夕方を中心に撮影しています。

特に夕日は少しもの寂しげな印象が空間や被写体に加えられるように思います。

 

  • その他

以前師事していた先生がテーブルの上にあるフォークの写真を見て、

「今手に取りたくなるような、または誰かがたった今テーブルに置いたような写真を撮りましょう」

とおっしゃったことがありました。今でもその教えを忘れずに、1枚の写真の奥から何か感じられるように撮り続けたいと思います。