“気づき、発見、再確認。あらためて振り返るそんな時間も写真日和だ。”
Photo ZINE(ジン)と言われる小冊子(同人誌)の販売イベントを立ち上げた際に知り合った彼女とはもう8年のお付き合いになる。そんな時の流れの中で、彼女はご主人とアトリエ兼ギャラリー+花の販売という二人の得意とする分野のお店を構えた。
アトリエとは、彼女の洋裁のためのスペース。そのアトリエに花が生けられ、写真も展示されるという「パリ好き」な彼女らしく、ちょっと麗しい空間になっていた。なっていた。というのは、すでにお店を閉店してしまったからである。閉店直前に花の販売と撮影を行うイベントをされていたので挨拶も兼ねて顔を出すことにした。
コロナ禍を経て、新たな場所で新形態でのスタートを切るという。心づもりや閉店に至るまでの経緯、お互いの環境の変化など話は尽きなかったけれど、それよりもお店を構える以前に訪れた初海外旅行先であるベトナム・ホーチミンの話に花が咲いた。
彼女も私も一人での初海外旅行がホーチミンなのだ。
しかも立て続けに2回も行ってしまうというところも共通している。
フランス領だったホーチミンを〝プチパリ〟と呼び、パリに行ったらホーチミンみたいだったと笑いながら話す彼女。
面白いのは、面白いと感じたことが共通しているからだ。
ベトナム語なんて全く知らないのに行っちゃった。
バイクをすり抜けるスリリングさがたまらない。
知らないおじさんに市場でナンパされてお茶する。
使うかわからないのに思い切りキッチュでポップなものに惹かれてつい買っちゃう。
言葉は良く分からないけど、お店の人に勧められたものを食べたら美味しかった。
―など、その他にも話は尽きない。
彼女と一緒にホーチミンに行ったらどんな楽しいハプニングが起こるのだろうと想像して笑ってしまった。人伝の話ではなく体験したことがよみがえる。楽しかった体験や面白かった出来事は共感することによって伝播する。
写真も同じじゃないだろうか。
そして、旅に出たくなる理由や写真を撮りたくなるきっかけもそんなところに隠れているんだなと改めて気づいた。事の発端は何だっていい。心を動かされ、思い切り写真を楽しみたいと感じられることはとても心地良いものだ。
次にホーチミンへ向かうのはいつだろう。まだ見えぬ出口を探りながらの日々だが、その間にカメラもKPからK-3 Mark IIIへと新しくなった。縁あってフィルムカメラMZ-5Nも手元にやってきた。オールドレンズもあるし、次に行くときにはどんなレンズで撮ろうか。
強い日差しに疲れ、ベトナムコーヒーを味わいながら休憩しているそのテーブルの上にはどんな相棒を連れているのだろうか。
彼女のおかげで次の旅へのイメージが膨らんでいった。
楽しさを想像する日も写真日和だ。
撮影協力:tocolier(トコリエ)http://tocolier.com/