はじめに

今回紹介するのは HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limitedです。細かい話ですが、HDコーティング化された HDFA43mmLimited(以下 HDFA43Ltd・この子)で、その違いはヌケの良さです。レンズのヌケが良いとレンズを通る光の質が上がります。そして、このヌケの良さこそが Limitedレンズ の真骨頂です。特に FA Limited はその傾向が強く、画質が良いといわれることがあるのもヌケが良いからです。参考までにコーティングでヌケが変わるの?と考えるかもしれないですが、確かにわずかな違いです。しかし、そのわずかな違いがこのレンズには効果的です。

そんなことを感じて、私もsmcレンズからHDレンズに買い換えました。さらに余談ですが、smcは黒を使っていたのですが、HDはシルバーにしました。色を変えるのは新しいレンズを使っているという気分転換にもなるのでオススメです。

敢えてフードを外すとかなり薄型のパンケーキタイプのレンズであることがわかる。フィンガーポイントの七宝焼はsmcレンズにはなかったHDレンズの特徴

コンパクトなパンケーキでも大口径レンズ

大口径レンズとは開放絞りの数値が小さいレンズのことです。その数値には明確な基準はありません。しかし、FA Limited シリーズの当初は開放絞りを F1台 にするという基準が密か存在した。そんな噂を聞いたことがあります。噂は噂として HDFA43Ltd もパンケーキタイプのレンズでありながら開放F値はF1.9です。参考までに FA77Ltd と FA31Ltd の開放F値はF1.8です。 HDFA43Ltd の開放F値は F2.0 から頑張って F1.9 にした結果だと私は考えています。こんなこだわりが長らくFA三姉妹と呼ばれたレンズシリーズの味わいを作っています。

やっぱり Gold

撮影に出かけたのは曇天の日でした。これは出来るだけ絞り開放で撮影するためです。確かにNDフィルターをつければ、晴天でも絞りを開けることはできます。これは個人的なこだわりですが、ヌケの良いレンズには出来るだけフィルターをつけたくないので、保護フィルターも使っていません。そんなこだわりからNDフィルターは基本的にはこの子には使いたくないという思いがあります。今回の写真は基本的には絞り開放のF1.9です。連動外の自動補正で絞りが変わった写真だけ絞り値を表記しました。



左の九秋(KYUSHU・カスタムイメージ スペシャルエディション)は普通に感じたので、右の Gold を使うことにした。HDFA43Ltd は Gold との相性が良い

 

ちょっと面白いと感じて平面的に狙った1枚。歪みは微妙で個人的には愛嬌だと思える範疇。絞り解放での周辺減光は程よく画面の緊張感が上がる。こんな平面で撮影すると絞りを開けてもボケの印象はほとんど感じないが、全体的に優しい雰囲気になる

ボケを見せるなら的な狙い方で被写体に近づいて背景を遠景にした

Gold と HDFA43Ltd の相性が良いと感じるのは優し雰囲気が強調されるからです。絞り解放で撮影するのがベターで、その優しさは曇天の柔らかい光にもあっています。このアンバーの色みはWBではなくカスタムイメージ がつくる色なので、WBは必ずAUTOにしています。

決め手はアングル

smc時代からこのレンズが好きという方は多いと思います。私の知り合いにはこの画角があったからペンタックスを選んだそんな方さえいます。私も使いだして、この画角が好きになった一人です。HDレンズに変えてから使用頻度はさらに上がりました。それでもちょっと難しいと感じることがあるのが、この子の良いところです。その難しいと感じる一番の要因は普通になることです。この特徴はこの子に限らず、標準レンズ全般に言えることですが、普通になるのを変えるのに一番簡単なのが絞りを開けることです。絞りを開ける(できるだけ小さな絞り値にする)ことでボケの表現が使いやすくなったり、柔らかい雰囲気が表現しやすくなって、ちょっと普通でなくなります。そして、そんなボケをさらに使いこなしたり、脱、普通のために必要なのがアングル選びで、アングル選びの基本は狙いです。

この場所全体の雰囲気を狙った

この場所で休んでいる人の様子をポイントに全体の雰囲気を狙った

狙いの橋の印象が弱く普通に感じるアングル

橋の印象を強くして周りの雰囲気を入れるアングル

花がたくさん咲いている様子を見せるために少し近づいた

この場所の雰囲気を伝えるために背景を入れた

左右の違いは優劣ではなく狙いです。アングル選びで大切なのは経験値で、どう動けばどう変わるかを経験していれば、さまざまな場面で応用ができます。HDFA43Ltd は普通に撮れてしまうことが多い画角のレンズなので、アングル選びの経験値を増やすのには最適です。そんなこともあってその画角がそのまま使えるフルサイズの PENTAX K-1 Mark Ⅱ で使うようにしています。

最後はモノクロ

ヌケが良いレンズの楽しみはモノクロでさらに上がりますす。これはモノクロが光を白と黒のトーンに変える表現だからで、レンズを透過する光の質が上がれば、トーンで再現される幅も広くなります。

モノクロで撮影するときに「モノクロ向きの被写体を探す」。そんな話を耳にすることがあります。基本的にはあまり意識しないほうが良いと思っています。とはいえ、モノクロで撮りやすいところはあります。そんな代表格が下町です。モノクロは白と黒の表現で色がなくタイムレスな雰囲気になって、歴史を重ねて少し汚れたように感じるところも色がないと風合いになります。

絞りF2.2(連道外の自動補正) モノクロ撮影で大切なのは光を意識することで、この光を感じやすいのがペンタックスの一眼レフのファインダーの良いところ。

絞りF2.0(連道外の自動補正) 大きな額縁効果を狙って画面上に木を入れた

下町らしさを狙った1枚。路地が繋がっている感じを出すために手前の自転車にピントを合わせて背景の路地をボカした

ピントを合わせた提灯にできるだけ近づいて、映り込んでいる風景がボカけて印象が弱くなるのを狙った

この場所の広がりを強調するためのローアングルと自転車のおじさんのタイミング。開放絞りにしているので、周辺が少し暗くなって引き締まった印象になる

少し広い風景の中で小さな被写体を目立たせるためには、背景選びが大切なので、鳩の背景が白い壁になるようにした。

下町をモノクロで撮っているとそれだけで絵になる気分になります。そんなときでもアングルやタイミングを意識すると、自分だけの視点を見つけることができるようになります。

まとめ

ここまでこだわらなくても気軽にやりたい。今なら PENTAX 17 を使った方が楽しくなる。そんなことを考えることもあります。それでも、ファインダーにこだわるからこそ、そして、己の想像力を使うからこその一眼レフカメラで、その先に自分だけのアングルとタイミングがあると思っています。大切なのは想像力の引き出しを増やしていくことで、それを助けてくれるのが HDFA43Ltd の最大の特徴です。

今回のあんこ

御菓子司 玉川屋さんの「水まんじゅう」
今回のあんこは「水まんじゅう」。地元の和菓子屋さん「御菓子司 玉川屋さん」です。一つ150円でしたが、最後の2個がセットで売られていたので、そのまま購入、ひと口食べてとろけるような食感にちょっと変な感じの顔になっているところです(笑)。中のあんこも程よく滑らかで、少し汗をかいて乾き気味の喉でもすんなり通って行きました。もちろん2個ともこの場(遊歩道のベンチ)で完食。地元の和菓子屋さんはご近所さんのご贔屓があってそこ、そこには普遍的な優しさと美味しさがあるように思います。皆さんもそんなお店を探してください。余談ですが、このお店の芋ようかんは絶品です。