
はじめに
今回のお話はモノクロの味わい。味わいって何?と思うでしょうが、それはトーンです。デジタル時代はデータ的な良し悪しで判断することが多くなっていますが、モノクロの味わいはアナログ的なトーンの好みでその違いが個性になります。そんな話を3回に分けてお送りします。参考までにケイタの好みは「黒の中の黒」と表現されるシャドーを引き締めながら深みをだすトーンです。
ひとつのネガから多彩な表現
味わいの話をするときにフィルムの話に触れないわけには行きません。フィルム時代、カメラ雑誌でひとつのネガから何人かの人にプリントを仕上げてもらう企画がありました。デジタルでも画像処理でそれは可能ですが、どうしてもきっちりした感じが多くなるように思います。強さを表現しやすいのがデジタルの利点でもあります。フィルム時代は柔らかさを重視した仕上げもあり多彩でした。
ひとコマのフィルムから出てきたこの3つの違いが味わいです。個人的にはフィルムスキャンの未調整画像が好みです。シャドーがギリギリ潰れずに引き締まっている感じが「黒の中の黒」です。この画像が一番陰影が強くはっきりした印象があって、トーン的には少し硬い印象です。デジタルカメラで複写した未調整はかなり柔らかい感じ(トーン的にはゆるい感じ)になっています。その分データ的には情報が豊かという考え方ができます。
デジタルフィルター:ネガポジ変換の使い方
PENTAX 17が発売されてフィルム撮影に新たな光が差しています。多くの皆さんは現像後にデータ化して、フィルムは受け取らない。そんな話を聞いたことがあります。それはちょっともったいないようにも思います。フィルムは味わいを楽しむための最高の素材です。とはいえフィルムをデータ化するのは少し手間がかかるという懸念もあります。今回、ボクがやったカメラでの複写とデジタルフィルター:ネガポジ変換はオススメです。

レンズはHD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limitedを使用。絞りF5.6で手持ち撮影。35mmネガより小さい17の場合は2コマを一度に撮影するというのもひとつの方法だと思う。余白部分は後でトリミング。本当はカメラを三脚などで固定して水平を保ったほうが良い。
かなり適当な感じの複写で、カメラのISO感度も1250です。それに歪みや細かい傾きも気になるとは思います。歪みや傾きはPhotoshopの調整で直しました。味わいを楽しむのはこれぐらいユルくて良いと思います。
味わいの決め手はレンズと露出補正
味わいを最も大切にしているメーカーがペンタックスです(佐々木啓太個人の考え)。それは味わいの要になるのがレンズだからで、ボクが大好きなLimitedシリーズもレンズの透過率というトーンの再現に影響がある性能に重きをおいて、官能評価というプリントで評価する味わいを重視したレンズ設計になっています。そして、その考え方はQシリーズのような小型システムにも活かされています。そんな味わいを象徴する小型レンズがQシリーズの 01 STANDARD PRIME です。

露出補正 -2.0EV 室内と外の明るさの差がかなり大きい条件でもツブれすぎずトビすぎない再現力が味わいの幅になる。トップとこれ以降の写真は全て Q7+ 01 STANDARD PRIME プログラムオートで撮影
今回の組み合わせ(Q7+01 STANDARD PRIME)は、とても久しぶりに使いました。最初に驚いたのは描写がちょっとしっかりした印象だったことです。ボクの記憶ではもっとゆるい印象でしたが、この日の撮影場所や光も影響していたのだと思います。家で落ち着いてパソコン画面で確認するとそこには期待通りの優しさがありました。そんな優しさがシャドーを締めながら作る「黒の中の黒」という好みの味わいにあっています。
まとめ
味わいは結局好みで、その好みを見つけるために様々なプリントを見たことはボクの貴重な財産です。特にオリジナルプリントといわれる展示を数多く見たことは自分なりの味わいをみつける上でとても貴重な体験でした。強さだけではない味わいに気づくとモノクロの楽しみが増えます。
今回のあんこ
駒沢大学駅から徒歩2分程度のところにある、「餅菓子専門 KIKYOYA ORII 東京駒沢店(キキョウヤ オリイ) 」。創業400年を越す三重県伊賀市の老舗和菓子店『桔梗屋織居(ききょうやおりい)』が開いた餅菓子専門店。お店は19代目の中村弓哉さんが開いた新ブランド。慶長12年(1607)創業の三重県伊賀市『桔梗屋織居』の19代目。この日食べたのは、その名も「十九代目の豆大福」。これはお見事でした。こしあんは口の中でとろけるような感覚がありながらその存在感があり、その甘さを引き立たせる豆の塩味と量も絶妙。このきびしい残暑にも最適な逸品です。そのほか目移りする商品がたくさんあるので、ぜひ一度足をお運びください。