>>前回、K-3 Mark III Monochromeの優位性はプリントにあると述べました。そして高感度や超高感度での撮影はK-3 Mark IIIとの画質差も大きく開くため、K-3 Mark III Monochromeを選ぶ意味が明確になるとも。もちろんこれもプリントすることが前提の話になりますが、今回はそのあたりをもう少し掘り下げてみたいと思います。
まずはK-3 Mark III Monochromeに搭載されているモノクロ専用のCMOSセンサーについてのおさらいです。K-3 Mark IIIなどに搭載されているカラーイメージセンサーは、1画素ごとに赤、緑、青のいずれかのカラーフィルターを通した光を受けます。1画素につき1つの色情報しか得られないため、補間処理を行ってカラー画像を生成します。カスタムイメージの「モノトーン」などでモノクロ写真を撮影する場合は、このカラー画像をモノクロ変換して生成します。一方、K-3 Mark III Monochromeのモノクロイメージセンサーでは補間処理は不要で、それぞれの画素が輝度情報を取得します。レンズからの光をダイレクトにモノクロ画像に反映できるので、高画質なモノクロ写真が撮影できるアドバンテージがあります。
K-3 Mark III Monochromeのモノクロ専用のCMOSセンサーは、2,573万の全ての画素で光の強弱を捉えます。そのため階調はとても豊かです。ハイライトからシャドウまでトーンがしっかり再現され、さまざまな光の条件に柔軟に対応できます。それらはプリント表現でも大いに生かされるというわけです。ただし、RAW形式で撮影しても後からカラー画像にすることはできません。フィルムカメラではカラーフィルムとモノクロフィルムを使い分けられますが、K-3 Mark III Monochromeのユーザーは、カラー撮影用にK-3 Mark IIIなどが別途必要になります。でもプリントしないのであれば、K-3 Mark IIIなどでカスタムイメージを使い分けるので十分でしょう。カラーで撮影し、後処理でモノクロにしたり、RAW形式ならその逆も可能です。
K-3 Mark III Monochromeの標準感度はISO 200になっていますが、これはカラーフィルターがなくて受光量が増したからです。それなのに同一条件で撮影したK-3 Mark IIIのカスタムイメージの「モノトーン」の画像よりも粒状感が抑えられていて、グラデーションも滑らかで美しい仕上がりが得られます。また、K-3 Mark Ⅲはランダムなノイズで、ISO感度が高くなるほど像が甘くなる傾向。ISO25600あたりからそれが顕著になります。これに対し、K-3 Mark Ⅲ Monochromeはノイズがきめ細かく均質なざらつきで、高感度や超高感度でも鮮明な像を描くなど画質は別格です。光を丁寧に捉え、階調のつながりが良く、繊細な線もシャープに再現されます。
K-3 Mark Ⅲは被写体の輪郭など境界線に白い縁取りが見られたりしますが、K-3 Mark Ⅲ Monochromeは自然に描かれます。さらに高感度や超高感度のざらつきは、被写体をシャープに見せる効果があります。デジタルカメラの画素数がまだ1,000万画素に満たない時代には、グラデーション部分に生じたトーンジャンプを誤魔化すために、意図的にノイズを加えて階調のつながり改善していたものです。ノイズによるざらつきは、プリントサイズに応じた鑑賞距離ではほとんど気になりません。たとえ至近距離から見たとしても、フィルム写真の粒子のようにむしろ自然に感じられるでしょう。そのノイズも「高感度ノイズ低減」機能により甘い感じになることがあります。後からカメラ内RAW現像でも設定を変えられますが、高感度ノイズ低減は「オフ」のほうがシャープな描写で、ディテールも鮮明に再現される傾向です。
高感度ノイズ低減比較

高感度ノイズ低減:強(100%表示切り出し)

高感度ノイズ低減:オフ(100%表示切り出し)
※拡大画像はパソコンでの原寸(100%)表示のスクリーンショットです。
ということで今回はISO 51200(高感度ノイズ低減はオフ)で、赤城耕一さんやこばやしかをるさんたちとの忘年会の帰りにいろいろ撮ってみました。K-3 Mark Ⅲ MonochromeはISO 12800まではノイズがほとんど気にならず、像が繊細に描かれるので思い切って上げてみたわけです。ただし、ISO 25600以上だと格子模様が出て、絵柄によっては気になることも。そのあたりの改善が今後の課題といったところで、夜間や室内など十分な光量が得られにくい条件で作品制作を行ううえでクリアしなくてはいけません。もちろんパソコン画面での見え方は関係なく、画像編集との連係やプリント用紙の使いこなしなどを含め試行錯誤を続けて行こうと思います。







