作品制作のときは、テーマやコンセプトに合った単焦点レンズを1本だけ選んで撮影するのが私のスタイルです。モチーフは身近な被写体やシーンがほとんどなので、基本的に広角から中望遠の間の焦点域になりますが、50mm前後の標準レンズを選ぶことが一番多いです。でもK-3 Mark III Monochromeを使った作品制作では目指すモノクロ表現がまだ定まっていないので、どのレンズで取り組むのか模索中です。
35ミリ判換算で30.5〜61.5mm相当のHD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WRと、32mm相当のHD PENTAX-D FA 21mmF2.4ED Limited DC WRをこれまで使ってみました。前者はズームレンズですが、私は広角端と望遠端のどちらか一方にズームリングを回しきるため中間域はほとんど使いません。2焦点レンズのような感じです。足を止めてズーム操作するより、自分で動いたほうが素早く画作りを決められるからです。これは日ごろから単焦点レンズばかり使っているからでしょう。それにより判断力や決断力が鍛えられ、フットワークに繋がっているように思います。自分の足が使えないときは動ける範囲の中で工夫するか、動けるように努力するか(入れない場所があるときは撮影許可を取るとか)、撮るのを諦めるか。標準レンズでは引けないし、寄れないし、もうお終い!みたいな(笑)。広角レンズや望遠レンズに交換するのではなく、無理して撮らないという判断を下すことはけっこうあります。ちなみに高倍率ズームは携行するレンズの本数を減らせるので旅行のときに便利ですが、作品制作で選ぶことはありません。
K-3 Mark III Monochromeとの組み合わせで本連載でもずっと使ってきたHD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WRですが、30.5mm相当の広角端は私にはちょっと広すぎのようで、61.5mm相当の望遠端を多用する傾向です。カラーだと足し算的な画面構成が好きなのですが、モノクロだと写し込む情報をできるだけ少なくしたい気持ちが働くため、32mm相当のHD PENTAX-D FA 21mmF2.4ED Limited DC WRを装着したときは被写体に近づいたり、絞りを開けて引き算的に撮ることが多いようです。色などの情報を削ぎ落とせるモノクロ表現ですが、自分にはもしかしたら望遠レンズのほうが合っているのかもしれません。そこで今回は、防湿庫の中でずっと眠っていたsmc PENTAX-A DENTAL MACRO 100mm F4を引っ張り出してみました。
モーターマガジン社のムック『カメラマン リターンズ』の座談会のネタとして何か珍品(?)を持参しなくてはならず、急きょ立ち寄った銀座の中古カメラ店で偶然見つけたのがこのレンズです。コンディションはとても良く、当時の購入価格は1万円しなかったと思います。歯科医師が使用する「デンタルマクロ」ですが、鏡筒に刻印された倍率が色分けされているくらいで、一般的なマクロレンズと描写などは違わないと思います。最大撮影倍率が0.5倍のハーフマクロレンズで、本来は専用のクローズアップレンズが付属しているようですが、私はそれがない状態のものを入手。そのようなものが存在したことは、座談会のときに詳しい人に聞いて初めて知りました。
K-3 Mark III Monochromeに装着するのは今回が初めてで、35ミリ判換算で153mm相当になります。若いころは135mmの中望遠レンズが好きで、ポートレートやスナップなどの撮影でよく使っていましたが、それに近い感覚で被写体にアプローチできます。MFレンズなのでピント合わせは手動ですが、K-3 Mark III Monochromeのファインダーは見やすく、ピントの山もつかみやすいので全く問題なし。不安なときは合焦マークを確認すればいいし、ライブビュー撮影では拡大表示も可能なので、マニュアルフォーカスで特に苦戦を強いられることはありませんでした。とはいっても被写界深度は浅めで、自分の体がちょっと動いただけでズレることがあるなど、たとえ被写体が静止していてもピントはシビアです。そこで連続撮影で保険を掛けますが、予想以上にちゃんと撮れていました。
家の中や窓の外の景色(今月は雪が降りました)、近所を散歩したりしながら、目にとまったものをいろいろ撮ってみました。全体的に柔らかく優しい描写です。シャープ過ぎず、どちらかと言えばやや甘い感じがしますが好みの仕上がり。樹木の枝など黒いラインのエッジがにじむような写りは、自家処理の銀塩プリントに似た雰囲気で今回の発見です。ライツ社のフォコマートIIcという引き伸ばし機を愛用していて、劣化した標準装備のレンズによるオンリーワンのプリント表現を、K-3 Mark III Monochromeとsmc PENTAX-A DENTAL MACRO 100mm F4の組み合わせで再現できるかも?
近年はイルフォードのマルチグレード アート300というコットン紙ベースの温黒調の印画紙がお気に入りで、マットテクスチャー面質なのにキラキラした光沢が特徴です。イルフォードやハーネミューレのインクジェットプリンター用のファインアート紙にも似たような面質のものがあるので、今回撮影した写真でそれらを試してみたくなりました。それを意識し、カメラ内RAW現像で[調色]を+1にしてウォームトーンに仕上げてみました。ただ+1だと効果がやや強めの傾向で、もう少し控えめだとよりイメージ通りになりそうです。







