>>前回の話:今さら飛び込むフィルム写真 第1回

ひょんなことから、他部署の上司の愛蔵している機械式のフィルム一眼レフカメラPENTAX MXに興味を示した私。

某 営業部長の「今度持ってくるから見てみてよ」はその時は社交辞令であったのでしょう。
ですが私のブツ欲方面の行動力は、目も当てられないほど(?)に勇猛果敢です。

後日…

「Yuzu君なら大事にしてくれそうだし良かったよ…。」
そうおっしゃる部長のさびしげな表情を、私は胸に秘めて生きていきます。

※注:一定の信頼関係が成り立っているうえでのことですので、ひと様のものをみだりに欲しがるのはやめましょう。

PENTAX MXというカメラ

なぜMXをこれだけ欲したかと言うと、正直なところその佇まいに惚れました。(そういう方は多いのではないでしょうか)

PENTAX MXは1976年に登場したコンパクトな機械式カメラ。古くからPENTAXファンでいらっしゃる方には今さらではありますが、自動露出はなく、マニュアル露出のみのシンプルな製品です。



上の写真はJ limitedで全国ツアーを行っている商品企画兼デザイナーのTKOから頼まれて、自宅でMXを撮影したときのものです。とにかく美しい。なので、被写体として撮影しながら心に思っていました。初めてのフィルムカメラはMXだ、と。一目惚れなわけです。

MXの魔力

そうこうしてかなり強引に、綺麗で実用性抜群のMXを手に入れた私。(よく話が通ったものである)
レンズまで手が回らず、とりあえず手持ちのレンズから一番コンパクトなsmc PENTAX-FA 43mmF1.9 Limitedを装着。

ストラップは現行品のレザーストラップ ディープブラウン。今はカメラもそこそこ重量があるため注目されなくなりましたが、細身でストラップループに真鍮を使用した渋いヤツです。

さて、MXをぶら下げて社内を歩いていると(注:普通はしません)、社内の人たちが集まってきます。

「ちょっと持たせて」「そうそう、これこれ!これだよ!」「やだ~、ちょっと素敵!」黄色い声が聞こえてきます。これぞMXの魔力。自分の格が上がったような気持ちになります。(きっと勘違いです)

社歴の浅い私からすると、本当に自社製品愛が強い人が多いなぁというのが社内の印象です。私は小売り出身なので、ものづくりをしている方のこういうところが好きです。

フィルムを買うぞ。…あれ?買えない…

とりあえずフィルムを調達しようと街に出たものの、なかなか購入に踏み切れない自分…。何十万のカメラとかレンズは買えるのになぜ?と言われます。(これも無理して買ってますが)
デジタルでしか写真をやってこなかった自分にとって、フィルムや現像に伴う「ランニングコスト」というものが、とても恐ろしい壁として立ちはだかるのです。

デジタルでも撮影後のプリントについては人にあげたり、飾ったりと別の目的があるのでコストがかかっても自前で行いますが、フィルムは撮影をするだけでもお金がかかる…そして撮影結果を見るにもお金がかかる…。

ひとまず迷い過ぎて頭痛がしてきたので、36枚撮りのカラーネガを1本だけ購入し、自宅の冷蔵庫に保管しました。

さて、いつ何を撮ろう…。初めてのフィルム撮影ですし、何か特別なものを撮るか、それともむしろ日常的なものを撮るか…。買い物以外はあまり行動力のない私は、しばし頭を悩ませます…。

すると

写真オタク先輩「フィルムカメラ買ったなら、スナップでも行く?フィルムも買わなきゃね。結構高いよ、期限切れで良ければあげるから行こうよ」

あなたが神か…!ということで、救いの手を差し伸べられ3種のフィルムを手にし、一緒に街に繰り出します。(自前のフィルム1本は冷蔵庫)

よーし、フィルムを入れる…ぞ…

久しぶりにフィルムカメラの裏蓋を開けました。カメラ屋で中古商品は扱っていたので、初めて触るわけではないのですが、いざ撮影するとなると緊張感をおぼえます。

 

あれ?フィルムのスプールってこんなのだっけ…。なんか、勝手に挟んでくれるんですけど。(右側の白い部分)こういうところ、“PENTAXのまごころ”と私は呼んでます。

 

カウンターがゼロになるまで巻き上げて、空シャッターを切っていきます。ふむふむ…。むふふ。

撮影した写真



後ろ姿はウエストレベルファインダーで撮影中の写真オタク先輩。

あいにく、この日は雨が降ったりやんだりという天気。普段社内の仲間と撮影に行くときは、雨に降られても「大丈夫、PENTAXならね(ドヤ」とやって盛り上がるのですが、この日のカメラは雨に注意。

植え込み

 

都合により…

 

電灯

 

配電盤

明らかに、フィルムの風合い任せの無難な被写体ばかりを撮っています。笑

 

ピントとは…

慌てて撮影に行ったので、ファインダーの視度補正レンズを調達し忘れました。デジタル一眼だと視度補正が付いてて当然なのですが…。

色かぶり

当然ながら、光源の色はそのまま被ってきます。
デジタルでもホワイトバランスは5200KBあたりを使うことが多いですが、こういう感じにはなりません。
どうしてフィルムだと嫌な感じがしないんでしょう。

あそこに…ピントを合わせる…

格子の間から、奥の階段にピントを合わせようとしてみます。ファインダーの視度が合ってないですが、35ミリフィルムは寛容…。

格子

 

フレネルみたいな模様の見える壁

カメラによってはファインダーからフォーカシングスクリーンのフレネル模様が見えることがありますが、壁の模様でした。尚、ピントは…。

 

夕焼け

良い具合に雲がたなびいていたので、この辺りはいただきもののリバーサルフィルムで撮影。

 

雲の表情…電線…あれ?富士山も見えてました。

 

初めてのフィルム撮影を終え

フィルムを入れるのにドキドキ、恐る恐る巻き上げ。ピントをゆっくり探りあて、シャッターを大事に切る。

そこには不思議とストレスはなくて。

巻き上げの感触や、裏蓋を閉めるときのカッチャン。いちいちテンションを上げながら童心に帰ったかのように楽しむことができました。

あ、テクニカルな話を期待した皆さま、一切触れずに申し訳ございません…。

フィルム写真ライフを大いに楽しまれている方も大勢いらっしゃる中で、ちょっとした撮影体験だけで「フィルム最高!!」などと言うつもりはありません。

初めてだったので、現像待ちは正直不安…。でも撮影がとても楽しい。

ただ、毎回フィルムで撮影せずとも、忘れた頃にフィルムカメラで写真を撮ることで、デジタルカメラでの撮影体験にも変化が現れ、新鮮になるのではないでしょうか。少なくとも私はそうなりました。

と、ここいらでフィルム体験は一旦締めようかと思ったのですが、写真オタク先輩が
「おいYuzu--、次はモノクロスナップ行こうぜーー(ダミ声)」と準備運動を始めています。

「暗室で現像まではやってかないとね」とか、まぁおっしゃることはわかります。というわけで

– 続く –