PENTAX officialは自宅でも楽しめる写真についての情報を発信していきます。個性的な社員が多いので「そこ!?」みたいな感じもあるかと思いますが、温かい目で読んでいただけると幸いです。
(PENTAX official編集部)
こんにちは、Yuzuです。前回の記事に続いて、おうちでの愛機のブツ撮りについてご紹介していきたいと思います。
>>前回の記事:大事なものを撮る ~愛機編 その1~(Yuzu)
初回は自然光を活かした撮影ということで、部屋の窓からの光を活かしたライティングで撮影しました。
二回目の本記事では、自然光を一切使わずにフラッシュ1灯での撮影例を紹介していきたいと思います。あくまで我流でやっておりますので、あらかじめご容赦いただけると助かります。
撮影の準備をする
■部屋に自然光が入らないようにシャットアウト
今回は、フラッシュ光のみで撮影を行います。窓からの光が入ると自然光とのミックス光状態となり、フラッシュでの細かなライティングの調整が難しくなります。
雨戸があるおうちでしたら、雨戸を閉めてしまいましょう。なければ遮光カーテンを閉めます。(外光をカットした様子を撮影するために照明をつけてますが、本番の撮影時は消しています)
完全に真っ暗だとオートフォーカスが合焦しづらいなどの問題も出てきます。実際のところはフラッシュ撮影を前提としたカメラの露出設定に合わせ、フラッシュOFFで試し撮りをして拾わない程度の明るさであれば照らしても問題は起きません。 |
■撮影台を用意します
撮影台を用意します。テーブルなどでも構いませんが、撮影台の高さが変えられると撮影するのが楽です。
私が使用しているのはX字に開脚するスタンド。たしか楽器屋さんでキーボードなどを置くための製品として販売されているものを購入しました。ホームセンターなどに同じような仕組みのものがあると思います。
この上に天板を置きます。これは背景というよりは土台として載せているので、ちゃぶ台の天板などでも良いです。背景用にオーダーした板材の梱包資材の段ボールがちょうどよかったので、そのまま利用してます。
■背景を用意します
今回は光を回すライティングではなく、最小限の光を当てて、光の当たらないところをつくる「落とす」ライティングです。
そのため画としての背景はあまり重視する必要はありませんが、家の中では窓ガラス、PCモニター、姿見、ガラス戸の棚などがフラッシュ光を反射させギラついてしまい、それがレンズの前玉に映りこむ可能性があります。念のため背景紙をセットしました。
背景紙サポートシステムでロール紙を垂らし、先ほど用意した撮影台の上に敷きます。
■フラッシュをカメラから離してセットします
今回はホットシューに装着せずにワイヤレス発光させたフラッシュを光源として使用します。(カメラからフラッシュを切り離すため、オフカメラライティングなどと呼ばれています)
フラッシュを何かに載せるだけなら工夫次第でどうとでもなりますが、アンブレラなどのアクセサリーを使うことを考慮すると、フラッシュ用のホルダーがあると便利です。
シューで固定するタイプなら1,500~3、000円程度で手に入ります。
今回はヘッドをクランプで挟み込むタイプを使用します。
斜め45度から照射して撮る
フラッシュが直射した写真を見て、なんだかのっぺりしている…と思うことがあると思います。これはクリップオンタイプのフラッシュのヘッドが小さく、配光特性も芯が強めな硬い光であるためです。
フラッシュをカメラから離して発光させた場合も、直射であれば影のつく方向が変わるだけです。(自然光に加えて、アクセントライトとして光を入れる場合は直射でも良い演出ができます)
今回は1灯での撮影ですので、どの方向から光を当てるかが重要です。照射できる光が限られていることを前提に考えると、カメラに装着したレンズの前玉にどのように光を当てられるかがポイントになってくると思います。
まずは試しにアンブレラを用いて被写体の手前側の斜め45度から当てていきましょう。光を順光で被写体に当てるオーソドックスな型となります。
■アンブレラを使用する
カメラの前玉が向かって左側を向くように置き、左側にフラッシュを設置します。光の照射面を大きくするために、アンブレラを用いて光を反射させて当てていきます。
上の写真ではアンブレラを見せるために少し角度を開いていますが、被写体から見て正面45度くらいの角度から照射していきます。ちょうど被写体の前面を照らすようなライティングとなっています。
1灯ライティングと言いながらPENTAX K-1改のホットシューにもフラッシュを装着しているのですが、これはワイヤレス発光させるスレーブフラッシュをコントロールするための微発光を行うためです。内蔵フラッシュにコントロール機能を備えたカメラをお使いの場合には外付けのフラッシュは1台あれば同じことが可能です。被写体にコントロール発光を当てないようヘッドを逸らして使用しています。
基本的なカメラやフラッシュの設定については、一回目の記事でご紹介しておりますのでよろしければご覧ください。
試し撮りをしてみました。光はなんとなくドラマチックに見えますが、一番ポイントにしたい前玉の映りこみが汚いですね。
アンブレラはフラッシュの光を反射し、拡散させて被写体に当てる仕組みです。被写体側からみると手前側にフラッシュが位置取りしており、これが映りこんでしまいます。
次はスレーブフラッシュ本体が映りこまないように配置を調整しました。色々映りこんでいる感は薄れましたが、良く見るとアンブレラの骨が見えているのがわかってしまいますし、反射も寂しいですね。
■アンブレラ+アンブレラディフューザーを使用する
アンブレラ用のディフューザーを装着してみました。何となく光が柔らかくなるのが想像できますが…
そういう問題ではなかった!という失敗例です。
カメラに装着しているレンズの前玉がそれなりに大きく、曲面になっているためアンブレラ+ディフューザー作戦では解決できませんでした。
レンズの前玉が小さい場合にはフラッシュ自体が映りこまないように芯をはずしてあげれば、これだけでキレイに反射面がつくれる場合もあります。
■アートレを使用する
困ったときの万能アイテム、アートレ(トレーシングペーパーのような目の粗さのない、乳白色のポリエステル製のフィルム)の登場です。一回目の記事でもご紹介したように、切り出したものを金属枠のフラッグに張り付けています。
反射面はまだ整えきれていませんが、赤ん坊が昼寝している隙に撮影を終えなければならないため、すみませんが試し撮りはこの辺にしておきます…。
ライティングで質感表現が素敵になりやすいFA Limitedレンズのシルバーに換装し、本番の撮影をしてみましょう。
■本番撮影
本記事で掲載している写真は、設定をイメージしていただきやすいようカメラで撮影したままのJPEG画像となっています。画像仕上げはカスタムイメージを「フラット(コントラストを0に変更)」で忠実な色再現を重視しています。
レンズが主役、左側にテキストなんかをレイアウトするようなイメージの構図で撮影してみました。前玉の反射、ピントの合っているレンズ部分の質感、被写界深度から外れているカメラ本体の金属感も伝わりますでしょうか。
同じセッティングのまま、三脚撮影から手持ち撮影に切り替えクローズアップ。
レザーストラップも光を反射して浮かび上がるので、捌き方を工夫すると良いです。ストラップは結構扱いが難しいので外してしまうという手もあります。
同じライティングのままフラッシュの出力を1段落とし、絞りを少し開いて深度を調整し、ティザー広告風(個人のイメージです)。
ちゃんと拭いたつもりが、シューカバーが汚いですね…。ライティングした撮影では被写体のケアが重要です。(自分にも言い聞かせる)
サイドから照射して撮る
先ほどは被写体の手前側45度で照射していましたが、今度はサイドから当ててみましょう。
拡散させた光を指向性をもって照射できる「ソフトボックス」を用いて撮影しています。部屋の都合で先ほどのセッティングそのままで被写体のサイドに持ってくることができなかったからです…。
■ソフトボックスをサイドにセットします
こういう配置です。配置はサイドですが、アングル的には上方から照射しています。
サイドから光を当てているので、エッジが強調されているのがわかりますでしょうか?
先ほどのライティングと同じような構図で撮影していますが、サイドからの光となったことで広い面よりもエッジのほうにハイライトが生まれています。
こういったエッジを立てるようなライティングは複数灯だとむしろ難しいと思います。なぜならハイライトとシャドーの明暗差からくるメリハリが、1灯ライティングのほうが生まれやすいからですね。
シャッタースピードダイヤルの周辺のシルバー部分や、シャッターボタン周りのエッジ。
ピント位置と構図を少し変えるだけでまた印象が変わります。
エッジを立てるライティングは、凹凸の多い形状、ロゴや文字が彫られている部分などと非常に相性が良いですね。(当然、名誉の傷も目立ちます)
被写体の後ろから照射して撮る
重厚感のある写真が続いたため、最後にがらりとセッティングを変えてみます。
■アートレ越しに被写体の後ろにスレーブフラッシュをセット
背景紙を撤去し、先ほど使用していたアートレを被写体の後方にセット。フラッシュも同じくその後ろに設置し、真逆光の状態をつくります。
■撮影してみる
アートレ越しの光で背景と地面の継ぎ目も概ね飛んでくれました。理想を言えば左側に少し残った階調を微調整したいですね。
また、アクリルボードを地面に用いたことで被写体の姿が反射して映りこみます。
前回もご紹介しましたが、絞りリングがあるレンズは絞りを開放にしておくことで、レンズ内を光が抜けてくれます。
絞りリングがないレンズの中でも、電磁絞りを採用したKAF4マウントのレンズであれば絞りは常時開放となっています。それ以外の絞りリングを持たないレンズについて、絞り羽根連動レバーにネリ消しを詰めて固定したりなどの方法もありますが、自己責任になりますので注意しましょう。 |
少しクローズアップ。逆光でレンズの透明感を見せたかったので鏡筒は飛び気味です。
カメラ側で絞りをF8⇒F13へ2段絞り込み、ハイライトを抑え全体的にトーンを沈み込ませました。目が痛いような解像感にうっとり…。
ということで、今回は「愛機を撮る その2:フラッシュ光(1灯)での撮影編」でした。
参考にしていただけましたら、ぜひ愛機の撮影にチャレンジしてみてください!
– その3:スタジオ機材を使用した撮影 に続く –
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