カメラの性能が良くなったおかげで、何も写っていないということはなくなった。
でも、いざ撮影をしようと思うと、いろいろな疑問が湧いてくる。なかでも第一に浮かぶのが

  • どこで被写体を見ることができるの?
  • どうやったら被写体に会えるの?
  • どの時間帯がいいの?

 

などなど、被写体に関する情報が欲しいというものが多いのではないだろうか。

写真は現場に行かなければ何も撮ることはできない。
だからこそ、被写体に出会うことが第一だ。

いまでは写真雑誌やインターネットでいろいろな情報が氾濫しているので、この被写体を撮りたいと思ったら、どの場所なのかはネットで調べてみると出てくることも多い。手始めにそんなところに行って撮ってみるのもいいだろう。でも、そのような写真は多くの人が撮影しているだけによく見る写真になりがち。コンテストにもたくさんの人が同じような写真を応募してくるので、よほど上手く撮らなければ入選も難しい。

そんな撮り方から一歩レベルアップするためには、被写体のことをよく知ることが必要だ。

被写体のことを知るといっても、どこに行けばいいとかいつの時期がいいというものではなく、本当の意味で被写体のことを学ぶことが大切。

言い換えると、どれだけその被写体が好きなのか、ということだ。

満開のカタクリを期待して撮影に出かけたのだが、ちょっとはやすぎたようでカタクリは思い通りには咲いていなかった。手前がまばらで面白くないので、木の影をアクセントにしてまだ葉の広がっていない森の雰囲気が伝わるように撮影してみた。

PENTAX K-1 + HD PENTAX-D FA 28-105mmF3.5-5.6ED DC WR 絞り優先AE 絞り:F11 シャッタースピード: 1/250秒 マイナス0.3EV ホワイトバランス:太陽光

別の趣味について考えてみてみよう。たとえば好きなミュージシャンがいるとすると、はじめはその人の曲を聞いているだけかもしれないが、本当のお気に入りであればそのミュージシャンがどんな人か、どんなアルバムを出しているか、その音楽が生まれてくる背景にはどんな音楽があったのか、どんな楽器を使っているかなど、そのミュージシャンについての興味は尽きることがないのではないだろうか。そのミュージシャンが好きだったという他のミュージシャンを聞いてみるとまたお気に入りが増えて、どんどん興味も広がって行くというのもよくあることだ。

写真を撮るときも同じで、自分が撮りたいと思う被写体があれば、表面的な情報だけで撮影に臨むのではなく、その被写体について学ぶことが必要だと思う。たくさんのプロカメラマンは撮影において技術が優れているだけではなく、その被写体においての知識も専門化レベルの人が多い。プロだから必要に迫られて勉強するというよりも、被写体が好きだから自主的にいろいろなことを学び、結果としてそのような専門的な知識も身についてしまったという人が多い。だからこそ、被写体を大切に思えるし独自の視点ですばらしい作品を撮ることができるのだ。

広い風景はあまり撮れないと割り切って、視点を小さなものに向けてみた。アズマイチゲを覗きこんでみると、そこにはテントウムシのような昆虫がいた。調べてみたらヤナギハムシというらしい。ハムシはそれぞれの植物ごとに種類があるらしく、また興味が広がった。

PENTAX K-1 + smc PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8 WR 絞り優先AE 絞り:F7.1 シャッタースピード: 1/320秒 感度:ISO800 プラス0.7EV ホワイトバランス:太陽光

情報に頼った場合、一般的には撮影場所やどんな時間がいいのかという程度の情報だけで撮影している人が多いと思う。たしかに、条件が揃えば見た目にきれいな写真を撮影することはできるだろう。

でも、条件が揃わなかったときはどうする?
たいていの人は「今日はダメだったねぇ〜〜」と撮影を諦めてしまうことが多いのでは。
わざわざ出かけて行ったのに、もったいない。

どうしてそうなってしまうのかというと、表面的な情報でしか被写体を見ていないからだ。たとえばひとつの自然風景は、さまざまな要素によって形作られている。そこには山があったり川があったり、そのまわりにはたくさんの木があり、森があればそこにはたくさんの生き物が住んでいる。足下には草花があり、空を見上げれば雲が漂っている。
思っていた風景がダメならば、森を見るとか小鳥の姿を探してみるとか、視点を変えてものを見ることができれば、たくさんの被写体が見つかるようになる。そのためには、いろいろな景色を構成している自然や地理、歴史などにたいしての興味を持つことが不可欠。自然公園的な場所であれば、ビジターセンターではその場所のことを詳しく解説した展示が行われていることも多い。撮影する前にそのようなことも一通り頭に入れておけると視野が広がる。

人間の視野は、興味のないものは見えていても意識が向かないのだ。

 

そこで、よく撮影に行く場所やこれから出かけてみたい場所のことを、ちょっと調べてみよう。その調べるキーワードは何でも構わない。まずはあなたの興味があることから調べ始め、何かひとつの新しい興味が繋がると、そこからどんどんいろいろなものごとへと興味が広がって行く。その場所を舞台とした小説を読んでみたり映画を見たりするのもいい刺激が得られるはずだ。
始めに調べてみたいと思ったことは、あなたの興味であり個性でもあるから、みんなと一緒である必要はない。それは写真の個性としても表れてくるのだ。

調べていくと、「こんなシーンを撮ってみたい」とか「今までこんなことを知らなかった」と思うことが出てくるはず。そのような興味が増えていくことで、撮影に出たときにいろいろなところに目が行くようになっていく。あなたの世界はどんどん広がっていく。

自分の写真の世界を広げる第一歩として、被写体のことを知ってみよう。

 

少し移動すると森の外れではエゾノリュウキンカが咲いていた。水辺に咲く花なので、背景には水の流れを感じられるように撮影してみた。この時期だったら他の花は何が咲いているか、知っているか知らないかでも撮影できるものは違ってくる。

PENTAX K-1 + smc PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8 WR 絞り優先AE 絞り:F5 シャッタースピード: 1/200秒 感度:ISO200 プラス1EV ホワイトバランス:太陽光