「カメラおたくの裏の顔」というテーマで、カメラ・写真好きの他の趣味を探っていく本企画。フォトグラファーの三井公一さんにも、何かないか紹介していただきました。(PENTAX official編集部)
(※緊急事態宣言期間前に撮影、執筆された記事です)
近ごろ撮影はもっぱら徒歩と公共交通機関を使うことにしている。その時の天候や気分で行程を気ままに変更できるからだ。クルマの場合だと駐車場所や料金も気にしなければいけないし、何よりもその停めた場所まで戻る必要がある。なかなか面倒だ(もちろん仕事として大量の機材や人員を運ばなければならない場合は別である)。と書いてみたものの、一番の理由は撮影が終わってからの「チョイと一杯」ができなくなるからだ。
ブラブラと街を撮り歩いていると、たいてい気になる酒場を見つけることができる。それが立呑みで、店構えが気に入ったらもう最高である。気持ちよく撮影が進行していて、しかもそれが終盤であったりしたらそのままカウンターの人になる可能性が濃厚である。
コロナ禍の現在、感染拡大防止の観点からどの飲食店も閉店時間が早い。その分、早い時間から開店したり、中休みをとらずに通しで営業しているところが多い。なので明るい昼間から「チョイと一杯」が可能だ。当然店は空いているので「密」を避けて店の売上に貢献することができる。
立呑みもさまざまなスタイルがあるが、自分が好きなタイプは「昭和っぽい」ところだ。店内はやや薄暗く、使い込まれた木製のカウンターで、足元はコンクリート打ちっぱなし、酒と料理を作っているのが見えるところが好みである(そう、ミラーレスカメラより一眼レフが似合いそうな店だ!)こういう店はやはり歴史ある街に存在することが多い。駅前から一本路地を入ったところにポツンとこちらを待っていてくれる。カメラを持って徘徊していると不思議と目の前にこういう店が現れるのだ(笑)永年営業している店は街の「顔」であり、さまざまな地元情報の宝庫なので立ち寄らざるを得ない。
飲む酒はビールはもちろん、日本酒、焼酎から、わりもの、ワインまで幅広い。カウンターの向こうで立つ店主のオススメから始めるのが定番だ。アテも同様。黒板に書かれた「本日のオススメ」から選ぶことが多いが、その土地のものを食すのがいい。この時にマスク越しに店主と会話をすることになるのだが、たいていカウンターの上に置いたカメラの話になることが常である。「ペンタックスですね」とか「レンズがシルバーなんですね」、「どこを撮ってきたんですか?」と。立呑みの醍醐味だ。ここで意気投合してお店やスタッフを撮影させてもらう事もある。酒や肴のことだけでなく、街の歴史やとっておきの場所など貴重な情報を得られることも多いのである。
最近は若い人が開く立呑みも増えてきた。ワインとコーヒーを出したり、駄菓子屋兼立呑みだったり、シェフが腕を振るうスタンドスタイルだったりなどだ。ブラブラと街を撮影しながら、そんなお店を発見するとうれしくなる。フラッとお店にお邪魔して、美味しい一杯と楽しい会話が楽しめるのがいい。昨年末から「PENTAX K-3 Mark III」を肩から提げ、多くの立呑みを訪問したがこのカメラがきっかけになって会話が弾んだこと数知れず。いいカメラは写真を撮るだけでなく、コミュニケーションをもうながしてくれるのである。