10月のお題は…『夏の思い出』

ハービー・山口 師範

皆さんはこの夏、どのような思い出を写真にしましたか?猛暑の中、カメラを持って歩くのも億劫になってしまいがちです。しかし夏が終わりかけ、秋の冷んやりとした空気に触れると、ふと切ない気持ちになるのも事実です。そこで皆さんが捉えた四季や季節の移り変わりを表現した写真を見せて下さい。

 

 

ハービー・山口 師範からの10月のお題は『夏の思い出』でした。
このお題に対して挑戦してくださった方の作品と、師範からの添削コメントを併せてご紹介します。

“免許皆伝”が与えられるのか、あえなく“門前払い”となるか、ご注目です…!

 

10月の挑戦者その1:あまみやさん

『日常から垣間見る非日常』
日常から観る非日常の花火、どうやって日常を入れ込むかを考えて撮りました。

あまみや
埼玉県在住、男性。
PENTAX K-S2とSIGMA 28-80mm F3.5-5.6 MACRO ASPHERICALで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

ハービー・山口 師範からの添削コメント

 

この写真のテーマとして「花火のある光景ですが、画面のどこかに日常を入れたい」という狙いがあります。
その狙いは大変的確で、花火の華やかさや軌跡を撮るだけではもはや物足りないと思う方が多いのではないでしょうか。

しかし、何年も前のことですが、この軌跡をスローシャッターで撮影した作品をカメラ雑誌で見たときは、その息を呑むような美しさと不思議なブレに驚愕したものです。
ですがこうした写真を数多く見るようになると次第に他のモティーフを探すようになるのは、時代の流れや、新しいものを求めて止まない表現者の性なのでしょう。

古くからあるものをさらに深く探求するのも、目新しいものを求めるのもどちらも正解です。
あまみやさんの写真には前景に建物を入れて、その向こうに花火という構図で独自の構成を試みました。しかし、この黒い建物がおとなしく、花火と対峙するにはドラマが足りません。

この手法で思い出すのが、木村伊兵衛さんが1953年に東京 蔵前で撮影した「川開き」という写真です。屋上に二人の人物がポツンと影になって、遠景に花火が写っているのですが、実に花火と人の心との関係が写っているのです。
最近では月刊誌「フォトコン11月号」の20ページに掲載されている、保坂兼司さんの写真です。見事に花火と前景の建物、屋上に群がる人物のシルエットとのコントラストを写し出し、花火大会の日の風物詩を詠っています。

新たな表現を試みることは常に価値がありますが、もやは木村伊兵衛という先人が60年も前に素晴らしい写真を撮っているのですね。

10月の挑戦者その2:くまさん

『夜長』 秋の終わり、11月の撮影です。人肌恋しくなる季節。

くま
神奈川県在住、男性。
PENTAX KPとFA50mmで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

ハービー・山口 師範からの添削コメント

 

私はこの写真が結構好きですね。画面左下にカップルを配し、天空には見事な月を捉えています。全体をブルーの色調にして、日没からある程度の時間が経った後、夜を待つ時間帯です。
遠くの高速道路のブリッジもこの場所の説明になっていて、それでいて決してうるさくないですね。こうしたロマンティックな場面を見るとやはり私でもカメラをこの光景に向けたであろうことが想像できます。写真家の心を奪う光景ですね。

さて、理想を求めるとカップルにもう1〜2歩近づきたかったですね。そうすることにより、単にロマンティックな写真を超えて人物ドキュメンタリーとしての迫力が増し、より人々への訴求力が備わったでしょう。ズームを付けていたらもう少し寄りのフレーミングをしたかったですね。

カップルが熱ければ近寄るのは憚られるものですが、そこを何とか一歩でも近づくことが写真家の苦労、やり甲斐というものです。声をかけてみて、駄目なら即諦めです。私は余程のことがないと深追いしません。それぞれの事情がありますから。

ですが、万に一つ「撮っても構いませんよ」という反応が帰ってくることもあります。その時は写真の神様が自分を応援してくれたと思って、このカップルに感謝の気持ちを募らせるのです。

私の個人的な意見ですが、人物撮影の基本は「被写体になってくれた方々の幸せを祈ってシャッターを切る!」という感覚が大切だと思っています。

10月の挑戦者その3:kuniさん

『無邪気な水神様♪』 甥っ子2人が無邪気に飛び込む様に尊さを感じました♪

kuni
広島県在住、男性。
PENTAX K-1とsmc PENTAX-DA FISH-EYE10-17mmF3.5-4.5ED[IF]で撮影。

 

師範の判定結果は・・・

 

残念ながら

ハービー・山口 師範からの添削コメント

 

この写真の魅力は何と言っても大自然の中で、広角レンズと高速シャッターで捉えた手前の二人の動きと形ですね。川を声を上げながらバシャバシャ!と進んでいるところですか、素晴らしい動きですね。白い水の飛沫も効果的です。色彩的にも優れています。

勿体無いのは画面右上の隅にある三角の部分ですね。葉っぱが写り込んでいるのか、よく分からないのが、余計に邪魔になってしまいました。連写していて、この部分が写り込んでいないカットがあるのなら、その方が画面はまとまります。

そして一歩物足りないと思うのは、やはりこの二人の顔、表情が見たいという欲求が写真を鑑賞する人々にはあると思います。表情が見える正面からカメラを構え、この水しぶきを動きを捉えたら、かなりの迫力だと思います。背中は顔以上に何かを物語る場合もあるのですが、そうした背中だけで物語れる被写体はそうざらに転がってはいないのです。

そうは言っても我々は様々な被写体に巡り合って写真を撮りたいと願っているのですから、良い写真を撮るぞ、という情熱を失わずに、写真を続けることが必要だと思います。そしてこうした日常の一つ一つのシーンは二度と返って来ませんから一期一会ですね。

即座にその瞬間を余すところなしに記録できる写真という表現方法は、素晴らしいと思います。

 

もう一歩突き詰めた理想形を提示する、ハービー・山口 師範の“スナップ”道場。
添削コメントをご参考にしていただきつつ、ぜひ以降のお題にもチャレンジしてみてください!

作品を取り上げさせていただい方には、『免許皆伝』となった方はもちろんのこと、『門前払い』の方にも、それぞれ素敵な記念品をお届けします。現在準備中ですので、しばらくお待ちください。