11月のお題は…『近くの愛』

ハービー・山口 師範

皆さんの近くにある愛。それは例えば親と子、孫、ペット、収集したこだわりの物品など様々なものに向けられています。そうした愛を感じる写真を送って下さい。

 

 

ハービー・山口 師範からの11月のお題は『身近な愛』でした。
このお題に対して挑戦してくださった方の作品と、師範からの添削コメントを併せてご紹介します。

 

11月の挑戦者その1:YTさん

故郷で約40年続いた、八百屋さんにて。自分の事も幼稚園生くらいの頃からお店のご夫婦はご存じだ。
その営業最後の日。母に連れ添って買い物に行き、挨拶をした。是非とも撮りたいと思った。
ご夫婦と、実は今まで殆ど撮った事が無かった母と一緒に撮影した。
3枚ほど撮った。その間5秒くらいだったと思う。
最後の一枚が本当にいい笑顔が撮れた。撮って良かったと思った一枚になった。
程なくして八百屋さんが入っていた市場は取り壊され、今は更地になった。

YT
福岡県在住、男性。どう写すかではなく何を撮るのか。ドラマはあるか。PENTAX K-01とsmc PENTAX-DA 35mm F2.4ALで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

 

残念ながら

ハービー・山口 師範からの添削コメント

 

故郷の地で40年間続いた八百屋さんの営業最後の日の撮影ということで感慨深いことこの上ありません。作者のお母上さまも一緒に画面に写って下さいました。

そう言えば商店街の人達と店の中で一緒に撮影するということはあまり思い付きませんね。あまりにも日常なので、こうした最後の日にならないと撮らないものなのです。コメントによると、このお店が入っていた市場は取り壊され、現在は更地になっているということですから、市場で買い物をしていたお客さん、またお店を営んで来た方々の双方の人生の縮図という意味合いもあって、単なる記念写真を超えた写真ということになります。3コマ撮影した最後の一枚にこの笑顔を捉えることが出来ました。良い表情ではないですか!

気になったのがこのモノクロの粒子感です。ザラザラな質感は意図したものなのか、セッティングによるものなのか。私の個人的な好みでしょうが、細まやかな質感と綺麗な仕上げでも良いのではないかと思いますが、如何でしょうか。フィルムに時代には感度を上げるために増感現像をいう処理をして、このような粒子感になるのを好んだり、またフィルムの限界として仕方なしに受け入れていたのですが、デジタルになってISOをかなり上げても画像は乱れなくなりました。作品に細やかで繊細さを持たせるのか、粗粒子の迫力を求めるのか、テーマによっての使い分けを慎重にしたいところです。

11月の挑戦者その2:くまさん

今回のお題が「近くの愛」ということで、ストレートに家族を撮ってみました。
登場人物(子供)が撮り手を指差して母親に何かを訴えている瞬間。
このような形で撮り手が映り込む写真は珍しく、家族ならではのリラックスした中で距離感も近いことから
今回のテーマによく合うかと思いましたが、いかがでしょう?

くま
神奈川県在住、男性。下手の横好き、風景、スナップ、スポーツ、色々撮ります♪ PENTAX KPとsmc PENTAX-DA★16-50mmF2.8ED AL[IF] SDMで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

 

残念ながら

ハービー・山口 師範からの添削コメント

 

くまさんいつもご投稿ありがとうございます。仲睦まじい家庭でのスナップです。

作者が仰るようにお嬢ちゃんがカメラを構えるお父さんを指差し、「ママもカメラを見てよ!!」とか「パパがまた撮っているよ!!」としきりに注意喚起をしている瞬間が写っています。このお嬢ちゃんの手の動きが、とても雄弁にこの場の雰囲気、空気感、家庭内の状況を物語っていて、準主役になっています。お嬢ちゃんの大きな声が聞こえて来そうではないですか。一枚の写真に手の仕草という役者が加わったことで、その時の温度や声、家族の状態までのかなりの量の情報が詰め込まれているわけです。

黙々とカードを楽しんでいる真剣な表情を捉えるのもアリですが、このような一瞬の出来事や仕草を捉えることで、かなり違った写真になる良い一例です。

この写真はこれで十分ではありますが、それでは道場の意味がありません。さらに強いものにしていくには、何を足したら良いのか、何を引き算したら良いのかを考えましょう。お二人の表情は文句ありません。カーテンの占める割合はどうでしょうか。少し目立ち過ぎのようです。窓のサイズを変えるわけにはいきませんから、なんとか構図で修正できないだろうかと考えます。

縦構図でカーテンの上方までフレームに入れて部屋の構造をもっと見せるのも一手です。また時間帯を変えて、もし窓から陽が差し込むのであれば、お二人の影が床に落ちているのを写し、光のドラマという要素をこの写真に加味するのです。するともう一歩深い表現になるかと思います。ぜひトライしてみて下さい。

11月の挑戦者その3:ヤスヒロさん

家族でお出かけした先の緑地で撮影しました。
母から息子、息子から母に対しての素直な愛情を感じる瞬間をおさめました。

ヤスヒロ
北海道在住、男性。北海道札幌市で主に家族のスナップを撮影しています!最近は息子がアイスホッケー始めたのでスポーツ撮影もするようになりました!PENTAXはオヤジの時代から愛用しています!PENTAX SP+SMC TAKUMAR 55mm F1.8で撮影。

 

師範の判定結果は・・・

 

残念ながら

ハービー・山口 師範からの添削コメント

 

先ほどのくまさんの作品にも共通する家庭のスナップですが、幸せの一瞬ですよね。思い切りお子さんを抱きしめているママの表情も良いですし、それに応えているお坊ちゃんの少し固まった表情にもリアリティがあります。くまさんの作品で指摘した光が作る影が地表に落ちていて、屋外の気持ち良さ、この日の天気の心地よさが画面から伝わって来ます。

被写体になってくれたママとお坊ちゃんは申し分ないです。あとはパパのカメラワークについて私なりにアドバイスを申し上げます。この写真を改良するには背景の処理をもっと考えたいということです。

まずは背景に写っている地表や家によって作られている水平線(横線)の位置です。現状だと写真の中のお二人の首の後ろに横線が来ています。これが目障りになっていて、折角のお二人の表情に水を差してしまっているのです。カメラ位置もっと高くすれば横線は画面の上部へ移動させることが出来ます。

逆にカメラを下げて地表にカメラを置くと、被写体のお二人を見上げる構図となり、空を大きく背景として捉えることが出来ます。時間帯によっては輝く太陽を画面に敢えて取り入れることで、逆光の光の中で戯れるお二人をずっとドラマティックな構成で作画出来たかと思われます。

 

添削コメントをご参考にしていただきつつ、ぜひ以降のお題にもチャレンジしてみてください!

>>12月のお題はこちら

作品を取り上げさせていただい方には、『免許皆伝』となった方はもちろんのこと、『門前払い』の方にも、それぞれ素敵な記念品をお届けします。