2月のお題は…『朝の風景』

ハービー・山口 師範

朝、仕事に遅れないように駅に向かって一目散に歩いたとします。後ろを振り向く余裕はありませんので朝の駅しか目には入りません。しかし、もし振り向いたら朝の光に照らされた我が家が見える筈です。夕方か夜、駅から自宅に向かって帰路につきます。夕方以降の我が家の方向しか見ていません。もし今来た道を振り返ったら、夜の駅が見えだけです。このように、朝の光景とは見落としがちなものです。週末か、仕事がない日の朝の風景を撮ってはいかがでしょうか。朝陽に浮かび上がった窓からの風景、自分の部屋の様子などでも良いでしょう。

 

 

ハービー・山口 師範からの2月のお題は『朝の風景』でした。

このお題に投稿いただいた中から師範の選んだ作品を、添削コメントを添えてご紹介します。

>>ハービー・山口 スナップ道場『2月前半分の結果』はこちら

 

2月の挑戦者その4:にたばるさん

「ねむいのに」
朝が来た。
布団から出たくない。
あと、5分、いや、3分でいい。
せめて毛布にくるまれたい。

にたばる
滋賀県在住、男性。スナップは幅広い分野と思いますが、頑張ってみます。PENTAX K-1とsmc PENTAX-D FA MACRO 100mm F2.8 WRで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

 

残念ながら

ハービー・山口 師範からの添削コメント

 

朝、まだベッドから起き上がりたくない眠気と戦っている場面を捉えた作品ということです。あと5分で良いから寝かせておいて!と心の中で叫んでいる、そうした経験は誰しもが持っているものでしょう。

画面は暗部の黒や濃い茶色がほとんどを占めていて地味な色使いですが、かすかに当たっている光が虚しく、しかし、その一条の光が生命力を感じさせる唯一の救いのように効いています。「差し色」という言葉がありますが、画面のどこか一部に派手な色の枕の一部とか、脱ぎ捨てた靴下の一部を配置したいと思うシチュエーションですが、この地味さだけでこの写真を成立させた、割り切りの良さ、センスを感じさせます。

そのセンスは褒めたいところですが、差し色でなくても、体の一部とか、目覚まし時計の一部をどこかに配して、日常の何かを想像させる物が写り込んでいても良いのではないか、と思うのです。日頃から挑戦されているポートレイトのように人物の強い存在感が放つ感動も、大自然の迫力が放つような感動もない分、スナップではどこかにドラマの糸口を探してみてください。

2月の挑戦者その5:まるちゃん

前景の枯れススキにピントを合わせたのですが更に明瞭度を上げました。

まるちゃん
東京都在住、男性。ペンタックスリコ-ファミリ-クラブ会員歴30年ぐらいになります。PENTAX 645ZとHD PENTAX-D FA645 MACRO 90mmF2.8ED AW SRで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

 

残念ながら

ハービー・山口 師範からの添削コメント

 

太陽が低い位置にある、夜明けとか夕陽の光を使って作品を撮ることは、写真を目指す者にとって避けては通れない道程ではないでしょうか。それ程にこうした時間帯に太陽が作る光と影は人の心を捉えるのですね。
逆にこうした美しい光に敏感であることは、その方が写真に必須な光の魅力が分かる美意識を持っているということを物語っています。中判のデジタルで丁寧に撮影されたススキが作る存在感と川辺の反射が美しい一枚です。

遠景に橋の輝きが見えていますが、確かな生命力とこの時間帯独特の美しさを捉えています。まるちゃんのこの写真の大部分を占めている枯れススキですが、季節柄、朽ちていく寂しさを同時に感じる絵柄です。そこで思うのですが、もう30分とかそのくらい早い時間帯だったら、この枯れススキの上部とか、どこか一部に弱々しくも美しい太陽がかすめていたとしたら、さらに画面は魅力的になったと思います。1分1分で刻々と太陽の位置が変化する時間帯です。

時間差によって変化し続ける光のドラマを、スポーツ写真やスナップ写真を撮る機敏さで撮り止めていただきたいと思います。

2月の挑戦者その6:にたばるさん(2回目)

「通い箱」
忙しい朝に、ちょっとだけ置かれた通い箱。
そうか、お前も。
朝から働いてるんだな。

にたばる
滋賀県在住、男性。スナップは幅広い分野ですが、頑張ります。PENTAX K-1とCarl Zeiss Makro Planar T*2/50 ZKで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

 

残念ながら

ハービー・山口 師範からの添削コメント

 

「通い箱」という言葉に馴染みがないという人は多いのではないでしょうか。私の場合、学生時代に町工場でアルバイトをしていた頃、製品を入れて出荷するためにこうした箱を使ったものです。コメントの「そうか、お前も、朝から働いているんだな。」という擬人化した文章に、にたばるさんの人柄というか、センスを凄く感じとりまして、微笑ましく思いました。

「ねむいので」の写真もブツ撮りですが、日常のブツに独特の物語を見つける才能があるのでしょうか。であるとすればこれを徹底的に進めていただいて、大抵の人が見逃したり、擬人化出来ないブツを擬人化する手法が出来上がるのかなと、ふと楽しみになりました。ブツ撮りは、スナップや風景より、もっと精密に画面をコントロールできる分野です。被写体はある一定の時間、動かずにじっとしているので、写真家にはあれこれと工夫をこらす余裕が与えられているのです。

この「通い箱」に関しては、画面の右奥の暗いウィンドウ越しに見えるカウンターと椅子が邪魔になっていますので、この部分をフレーミングによって多少切り取り、トラックとブルーの箱をもっと強調すると良かったのではと思います。

今回採用された2名(計3作品あり)もあえなく『門前払い』となってしまいましたが、師範のコメントをご参考にしていただき今後も撮影を楽しんでいただければと思います。

また、「門前払い ミニ木札」をお贈りします!



 

ぜひ以降のお題にもチャレンジしてみてください!

>>3月のお題はこちら