10月のお題は…『夏の思い出』
皆さんはこの夏、どのような思い出を写真にしましたか?猛暑の中、カメラを持って歩くのも億劫になってしまいがちです。しかし夏が終わりかけ、秋の冷んやりとした空気に触れると、ふと切ない気持ちになるのも事実です。そこで皆さんが捉えた四季や季節の移り変わりを表現した写真を見せて下さい。
ハービー・山口 師範からの10月のお題は『夏の思い出』でした。
このお題に対して挑戦してくださった方の作品と、師範からの添削コメントを併せてご紹介します。
10月の前半は、いずれの道場も“門前払い”続出。今回こそはどなたかに“免許皆伝”が与えられるのか、はたまた“門前払い”となるか、ご注目です…!
>>ハービー・山口 スナップ道場『10月前半分の結果』はこちら
10月の挑戦者その4:くまさん(2度目)
『破れたかな』
家族の写真です。スーパーボールすくいはもうできないのかな、とママに相談している様子。
少しがっかりした気持ちと優しさが伝わるでしょうか。
神奈川県在住、男性。
PENTAX KPとsmc PENTAX-FA 50mmF1.4で撮影。
師範の判定結果は・・・
●
●
●
くまさんのご家族に対する眼差しが優しく、微笑ましいシーンに好感を持ちました。女の子の戸惑いを見せる表情とお母さんがやさしく、何かを伝えている感じがよく伝わります。
そしてこの写真の主人公である女の子の顔に当たっている光が綺麗なんですね。逆光になっていて鼻筋から口元にかけてのラインが立体感を持って写っています。偶然のことですが、こうした偶然を味方にすることは大切です。さてそこまでは良いのですが、このお二人の周囲の雑踏が気になります。お祭りですから人が沢山いるのは当然ですし、雰囲気を作る上でも雑踏は必要な要素です。
ではどうしたら煩雑な雑踏を味方につけることが出来るのか。二つあります。ズームならもう少し望遠の焦点距離にしてアップに、または2〜3歩被写体に近ずくことで、画面の右三分の一を整理する。特に白い半袖のシャツを着た男性が邪魔ですね。
そしてもう一つは絞りを開放近くにして親子のピント面だけをしっかり描写して背景をボカすことです。被写体が自分の家族なのですから、遠慮せずにグッと寄りましょう。しかしこの表情は二度とないと思うと、逃した魚は大きかったと言える場面ですね。瞬時に完成させるスナップは、瞬時に構図や光の使い方などをアレンジしなくてはならない分野ですから、アスリート並みのフットワークが必要です。お嬢ちゃんのもう二度と戻らないこうした貴重な瞬間を、是非、旺盛な写真への情熱を発揮しつつ多くの傑作写真に結びつけて頂きたいと思います。
10月の挑戦者その5:くまさん(3度目)
PENTAX道場は機材や撮影設定ではなく、「写真としてどうか」が判断基準です。
そのため作品だけを拝見してハービー・山口さんの目に留まったのは、ふたたび挑戦者「くまさん」のお写真。
『秋の光へ』 自然公園にて撮影しました。
葉が散った桜の木に大きな蜘蛛の巣が沢山、輝いていました。
(台風一過で作り直した新しい巣なのでしょう。そして蜘蛛たちはこれから産卵の季節ですね。)
ちょうど家へ帰るであろう家族が通りがかり、ストーリーを作る役者になっていただきました。
神奈川県在住、男性。
PENTAX KPとsmc PENTAX-DA★50-135mmF2.8ED[IF] SDMで撮影。
師範の判定結果は・・・
●
●
●
これもくまさんの作品ですね。モノクロがお好きなのでしょうか。私もモノクロを良く撮ります。
「何故モノクロなのですか?」と質問されます。このくまさんの写真を見ればわかるのですが、色が写真に付いていない分、光や構図。人々の表情が強調されますね。そして色がない分シンプルです。
モノクロの表現は水墨画、あるいは大理石の彫刻もそうですが、シンプルな中に、時に優しく繊細で、時に力強い表現をします。ダビデの像を見て、「なんで肌があんなに真っ白なの? なんで頭の毛が黒くないの?とても不自然だ!!」とは誰も言わないわけです。モノクロは抽象的でシンプルな表現手段なのです。
さてこの写真も光が綺麗で、上手いことに親子3人が通りかかりました。人物を右に寄せて中央の木の存在感をよく出しています。そしてこの木にも美しい午後の光が当たっていて、枝から透過する様子が実に綺麗です。勿体無いと思うのは画面左の柵が写り込んでいることです。人工物を出来るだけ画面から排除した方がよりスッキリしますし、空気感がもっと強くなりますね。
縦位置のフレーミングはこの場面で試されましたか?余裕がありましたら、縦位置と横位置の構図の2種類を素早く撮影しましょう。縦位置だと中央の木の大きさが分かりますし、画面右上の木に透過した光ももっと楽しめるかも知れません。細い道がずっと続いていますね。この道は縦位置構図でも、出来るだけ遠くまで写して下さい。この3人が歩いて行くであろう未来を示唆することになります。
10月の挑戦者その5:7787さん
『初めての海』 1歳の娘にとって初めての海にきました。
広い砂浜と大きな海はなんだか恐ろしくて一歩も動けません。
とりあえず大好きなアンパンマンコーンを食べて心を落ち着かせよう。
と思ったら今度はお菓子を狙う怪しい影…。
初めての海はほろ苦い夏の思い出になったのでした。
兵庫県在住、男性。
PENTAX K-1とHD PENTAX-DA 16-85mmF3.5-5.6ED DC WRで撮影。
師範の判定結果は・・・
●
●
●
残念ながら
お嬢ちゃんが生まれて初めて来た海です。何もかもが彼女にとって新しい!そこの餌を欲しがって鳩が近づいて来たわけです。素晴らしいシャッターチャンスでした。このチャンスも二度とありませんね。その貴重な場面を見事に撮影しました。
お嬢ちゃんにの横顔から、緊張感やら、警戒心や好奇心が見えてきます。構図としても左のテント、浜辺に敷いたシートとか、遠くの水平線など、まずまず上手く処理しています。このままでも素晴らしいテーマ性をものにしました。
ただ、もっと完成度を高めたいということであれば、シートが目立ち過ぎることを指摘したいと思います。シートの色が赤、緑などの強い色のストライプですから、かなり存在を主張してしまうのですね。これが無地や大人しい色であれば、ここまで目障りではなかったと思います。仮に画面の下側を少し詰めて、その代わり空を大きく取り入れたら、夏空のダイナミックさがさらに強調されたと思います。
この写真をモノクロ化したらどうなるか、一度試して頂けますか。シートが多少は大人しくなるのではないでしょうか。
しかし、この横顔の表情を撮れたのですから、これは記念すべき貴重なカットで私は褒めて差し上げたいです。これから娘さんが、お父さんにとっての最愛のモデルになるでしょうね。奥様も沢山撮ってあげて下さい。写真へのご理解が深くなるのではないでしょうか。
写真そのものだけではなく、被写体とその情景への愛情に満ちたコメントをされつつも実はかなり手厳しい、ハービー・山口 師範の“スナップ”道場。
添削コメントをご参考にしていただきつつ、ぜひ以降のお題にもチャレンジしてみてください!
作品を取り上げさせていただい方には、『免許皆伝』となった方はもちろんのこと、『門前払い』の方にも、それぞれ素敵な記念品をお届けします。現在準備中ですので、しばらくお待ちください。