1月のお題は…『自然の造形』

小林義明 師範

自然はときおりびっくりするような造形を見せてくれます。この写真は氷が造りだした怪獣です。ウルトラマンにでも出てきそうな感じではないでしょうか。今回のテーマでは、このような自然が生み出す造形を探してみてください。大きな景色だけではなく、注意深く自然の形を見つめることできっと面白い造形を発見することができますよ。

 

 

小林義明 師範からの1月のお題は『自然の造形』でした。
このお題に対して挑戦してくださった方の作品と、師範からの添削コメントを併せてご紹介します。

1月の挑戦者その1:tatsuya.bmpさん

雨上がりに見つけた水玉。

tatsuya.bmp
大阪府在住、男性。趣味で週末写真を撮ってます。PENTAX K-S2とsmc PENTAX-DA 18-135mmF3.5-5.6ED AL[IF] DC WRで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

 

残念ながら

小林義明 師範からの添削コメント

 

たくさんの水滴がついている葉を撮影していて、葉や水滴が持つ楕円のパターンで画面構成しているところはなかなかいいと思う。水滴の輝いている雰囲気もうまく表現できていて、水滴の存在感もしっかりと表現できている。水滴を撮影するという目的はかなり果たせているね。

このカットで惜しいと思ったのは、葉の上に並んでいる大きな3つの水滴へのピントの合わせ方。大きく目立つということは、視点を集めるため、パッと見たときにこの3つにしっかりピントが合っていることが大切なんだ。3つ並んでいる水滴を見ると、一番左に合っていて、中央や右側はぼけてきている。葉の先端にある水滴にピントを合わせているのかもしれないけれど、この水滴は小さくて輝きも弱いために目立たない。ピントが合っていないよりは合っていたほうがいいけれど、それよりも大きな3つの水滴にピントを合わせることを優先したほうが、見栄えのする写真になる。

このときの対応にはふたつ方法があって、ひとつめはピント位置を3つあるうち中央の水滴に合わせ、もう少し絞り込む方法。もうひとつはカメラポジションを少し右側に移動して、3つならんでいる水滴とカメラが平行になるよう調整する方法だ。マクロ撮影では被写界深度が極端に浅くなるため、このふたつの方法を知っておくことで、格段にシャープに撮影できるようになる。この写真では葉の上にある水滴すべてにピントが合うようになり、いっそう水滴の存在感を強く見せることができるようになる。

今回のお題である形を見せるという部分でも、被写体の形をきちんと見せるためにしっかりピントを合わせることが必要だと思う。とくにこのような目立つ部分が複数ある場合は、しっかりそれぞれにピントを合わせることで初めてその魅力が伝わることを覚えておいて欲しい。

1月の挑戦者その2:プリちゃん

氷の作り出す造形や模様に魅せられ、小さな池の凍り付いたところを光が差しPLフィルターでコントロールして虹色が出たところを撮影。

プリちゃん
静岡県在住、男性。こんにちは、早朝や夜の撮影が多く、風景写真を主に撮っています。PENTAX K-1とHD PENTAX-D FA 28-105mmF3.5-5.6ED DC WRで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

 

残念ながら

小林義明 師範からの添削コメント

 

氷が作りだした等高線のような模様と虹色の干渉色も鮮やかに浮かび上がらせていて、氷の見せる形の面白さや氷が色を持つという意外性を捉えることができているね。光の読み方とかどういうときにこのシーンが見られるのかということは十分理解して撮影に挑んでいるのだと思う。
余分なものがなければ「免許皆伝」をあげたいところだけれど、あと一歩足りないところがあったんだ。

それは何かというと、曲線のラインの後ろに見える氷の形。この等高線状のラインに目を奪われてしまったために、その後ろに見える氷のラインが意外と目立つことを見落としてしまったんだと思う。
たしかにフレーミングとしてはこのラインを今のように入れることは正解だと思う。しかし、その下側にある氷が見せる形はこの曲線のイメージを壊してしまう角張ったもの。画面の中で一番明るいこともあって、虹色が見えているところの次に視点を呼び寄せてしまい、曲線のイメージが弱くなり、中途半端になってしまった感じだ。

このくらいに切り取ったらいいんじゃないかというトリミング例を付けておくので参考にしてみて欲しい。

以前もここで伝えたけれど、肉眼で見た印象とカメラで撮影した印象は一致しない。カメラで撮影したらこういう風に写るということをイメージできるように練習して、冷静に景色を見られるようになって欲しい。カメラの液晶は必ずしも撮影した映像を正確に再現してくれていなくて、実際は思う以上に肉眼で冷静に見た通りに記録されている。このあたりの違いも身につけて欲しい。

1月の挑戦者その3:常にマクロレンズ携帯さん

風に吹かれて飛んできた、種付きの冠毛です。

常にマクロレンズ携帯
大阪府在住、男性。一年300日程里山をうろついています。主に昆虫、野草のマクロです。PENTAX K-30とsmc PENTAX-DA★55mmF1.4 SDMで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

 

残念ながら

小林義明 師範からの添削コメント

 

植物の種って面白い形をしているよね。とくにこのような綿毛がついているものは、その形やキラキラして見える質感などがフォトジェニックでいい被写体になる。この種はわりと大きいもので、種の形が平たくなっていて特徴があるね。何の種だろう?

ピントを綿毛に合わせていて、その綿毛の背景は黒っぽいところを選んでいるので、その形を見せることはできているし、キラッと輝く雰囲気も伝わってくるね。面白い被写体をみつけているのだけれど、まだこの被写体の面白さを充分に伝えることができていないと思う。

綿毛って放射状に広がるパターンの美しさなど特徴があるので、そういったところもしっかり見せるようにすると、形を強調できるようになるはずだ。例えば、綿毛の部分を真上から撮影できるカメラポジションを選ぶだけでも雰囲気は変わってくる。種の部分は隠れてしまうけれど、ピントは合わせられないので、割り切って形の面白さを見せて欲しかったな。

また、草原に落ちている種を撮っているために、まわりにある葉にもピントが合ってしまって余分なものが見えてくる。ピントを合わせた距離と同じ距離にあるものにはピントが合ってしまうのはカメラの構造として仕方ないので、ピントが合ってしまうような余分なものがない場所にある種を選ぶことができればより理想だ。このような綿毛は周りを探してみると他にも見つかることが多いので、よりいい条件の場所に落ちているものを探してみることも必要だと思う。

どうしてもこれしかなければ、もっとアップで撮るというのも一つの方法だ。周りの葉を見せなくすれば、綿毛の部分に視点が集まるようになり、意図もはっきりする。さらに形の面白さも伝わるよういろいろな角度から見てみるといい。被写体をみつけたらすぐに撮ってしまうのではなく、なぜこれを撮りたいのか、その理由が伝わるように撮ってみよう。

今回はあえなく3名とも『門前払い』となってしまいましたが、師範のコメントをご参考にしていただき今後も撮影を楽しんでいただければと思います。

また、記念品として「門前払い ミニ木札」をお贈りします!



 

ぜひ以降のお題にもチャレンジしてみてください!

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