2月のお題は…『工事のある風景』

新納翔 師範

ちょうど戦後に建てられたビルや集団住宅など様々な建造物が老朽化のせいで建て替えの時期を迎えているため、東京都心に限らず日本中どこでも再開発事業が行われております。 

工事というものはいつの時代もありますが、これだけ大規模に日本中で行われているのも令和初頭の歴史なのかもしれません。今回のお題はまさに、皆様の街で撮った「工事現場のある風景」です。

このお題、単に工事現場を撮るだけでは免許皆伝とはいきません。
どう他人との違いを出すか、そこを考えつきつめる。そうした試行錯誤からいい作品が生み出されるものです。私も気づかないような撮り方、捉え方お待ちしております!

 

新納翔 師範からの2月のお題は『工事のある風景』でした。
このお題に投稿いただいた中から師範が選んだ作品を、添削コメントを添えてご紹介します。

 

2月の挑戦者その4:Melyukiinaさん

【▲△▲】ピラミッド、屋根、重機と三角を形作っている重力のある世界では最も安定する形状なんだろう。

Melyukiina
愛知県在住、男性。中学で星が好きになりRICOH XR500を手にしてマニュアル撮影デビュー。PENTAX望遠鏡は天文雑誌などで憧れブランド。いまはデジタル一眼K20D,K-5,K-1と乗り継ぎ、THETAも手にしたRICOH-PENTAX育ち。PENTAX K-1とHD PENTAX-D FA150-450mmF4.5-5.6ED DC AWで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

新納翔 師範からの添削コメント

 

奥にある採掘中の岩山と手前の家屋が織りなす三角形の対比が面白い作品ですね。「▲△▲」というタイトルがぴったりの写真。とてもセンスあるタイトルですね。伊吹山とのことですが、所変われば工事も変わるということで、街なかで見かける工事よりも圧倒的に大きいスケールに目を見張ります。

岩山というよりも作者が言うようにまさにピラミッドのようなゴツゴツとした山肌。さらにいえば、ピラミッドとして捉えると古代の王たちの墓として「死」につながるイメージを持っています。対して画面下にある家々は人々の営み、まさに「生」。大きさの異なる三角形の対比も面白いのですが、ここに死生観を見出しているようで深みのある作品だなと思いました。

と、作者が考えたのかは分かりませんが写真はその解釈が見る側に委ねられている側面もあるのが面白いところ。時に自分が考えていたことがうまく伝わらずにもどかしく思うこともあるでしょう。ただそういう時は往々にして、撮った本人がしっかりとその一枚と向き合っていない場合が多いように思います。なぜ撮ったのか、そこには自分とどういう関係性があるのか?等、しっかりと言葉にできるようにすることが重要であると思います。

さてこの作品ですが、力強いピラミッドが印象的なのでもう少しその質感を出すために部分的にコントラストを上げて明暗をくっきりさせるといいでしょう。そうするとシャドー部が多くなるので撮影時に、陽のあたっている明るい部分の面積が多くなるような位置を探しても良かったように思います。

それと画面上が中途半端です。空を入れるようもっと引くか、更に寄ってしまっても良かったでしょう。ここに迷いが出ているように感じます。おそらく撮影時に三角形の対比を狙って欲張りすぎたように思います。

若干気になったのはシャープネス。ちょっと強いように思います。家屋は気にならないのですが、山の質感が特に気になってしまうのでもう少しシャープネスを弱めた方がいいでしょう。オリジナルデータを見ないとはっきりしたことは言えないのですが、一応書いておきます。

レタッチ例ではぽつんと写っているクレーン車を目立たせるようにしましたが、もうワンポイントひと目見て工事を連想させるものが入っているとさらに評価が高くなったと思います。

〔左)元の作品 / 右)新納翔師範によるレタッチ見本〕

※スライダーのドラッグで表示画像を切り替えられます

 

2月の挑戦者その5:hideさん

山陰島根県石見地方の赤瓦と低山奥に突如現れたクレーンタワーの場所に何が隠されているのか
色々と想像する作品に仕上げました。

hide
島根県在住、男性。RICOH(PENTAX)カメラをこよなく愛する老人です。PENTAX K-1 Mark IIとHD PENTAX-D FA 28-105mmF3.5-5.6ED DC WRで撮影。

師範の判定結果は・・・

もう一歩!

新納翔 師範からの添削コメント

 

島根県石見といえば銀山しか思いつかない筆者ですが、山と民家の距離感やつまり具合というのはその地方の特色が出るように感じます。私自身育ちは横浜なのですが、低い丘陵地帯に家々がずらっと並んでいる様子を見ると、ああ横浜だなぁと思ったりします。都内から実家に帰ると、やはり空の広さなど改めて気づくことは多いです。

手前に家屋、奥に山と見ようによってはMelyukiinaさんの作品と近い感じもしますが、こちらの作品はより地域性にフューチャーしているように思います。画一化していく日本の景色において、この作品は数年後、数十年後にとても価値のあるものになっていることでしょう。まさに写真のもつ記録性ですね。作品自体も瓦屋根の色が面白いうえ、山の向こうに見えるにょきにょきと生えているようなクレーンに、この山を超えたらどんな景色があるのだろうと、見ているこちら側にもそのワクワク感が伝わってくるようです。

どこか新幹線の車窓から見える一瞬の景色のようにも見えます。あっと、通り過ぎていく風景。それもこの作品の良さのように感じます。

あれ屋根と いう間にすすむ 列車かな

小林一茶の名句にあやかって一句訓むとこんな感じでしょうか。車窓からの景色に見えるのはやや画面が傾いているからだとは思いますが、この場合は効果的に働いているので特に直さなくてよいと思います。残念なのは画面全体がちょっと明るすぎるところ。ヒストグラムを見れば分かるので、モニタで見る際は必ずチェックするのを習慣にしましょう。もう少し明るさを抑えることで家屋の壁や山林の質感・テクスチャがはっきりとしてきます。質感というのは光と影による明暗差によって表現されるものなので、明るくすることによってそれが失われてしまうのです。

空の感じはそのままで良いと思いますので、画面中央から下にかけてやや明るさを落とし、コントラストを上げてみましょう。それと一番右端のクレーンだけがちょっと離れているせいで、リズムが悪くなっています。トリミングで切った方が気持ち良いですね。

ISO800でシャッタースピードが1/125のf22とありますが、この写真においては絞りすぎのように思います。ご存知かもしれませんが、絞りすぎると回折現象によってシャープ感が失われてしまうことがあるので、フルサイズでしたらf11あたりで撮影したほうがより良好な撮影データになったように思います。

〔左)元の作品 / 右)新納翔師範によるレタッチ見本〕

※クリックで大きく表示されます



2月の挑戦者その6:くうさん

奥に見える建設中のタワーマンションと、二人並んで歩く若いカップル。
ちょっと余裕を持って青空を背景にして期待の持てる未来をイメージしてみました。
こう見ると紅白のクレーンも縁起物のようです。

くう
東京都在住、男性。K-50からKPへ。趣味は写真ですって言えるくらいに使い込んでいきたい。PENTAX KPとHD PENTAX-D FA150-450mmF4.5-5.6ED DC AWで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

お見事!

新納翔 師範からの添削コメント

 

望遠レンズによって建設中のビルにフォーカスし、手前の男女が面白い具合に描写されていますね。レンズの焦点距離、f値が絶妙で、アウトフォーカスながら人物の存在感が半端なく表現されており、これは見事な一枚です。免許皆伝です!シンプルながらとても印象に残る作品、とても素晴らしいスナップショットだと思います。

何故か最初見た時に、かつて千葉県船橋にあった屋内スキー場「ザウス」の宣伝に流れていた山下達郎の曲が脳内再生されました。どこか平成のはじめを意識させるものがあるのかもしれません。

ややマゼンタが強いかなと思ったのですが、何度も見ているとこれはこれで味があるように感じたので良しとしました。ただ作者がこれを狙ってやったのか、もしくはモニタが正しくキャリブレーションされていない為なのかは分からないのですが、レタッチ例ではややマゼンタを残しつつ自然な色に直しています。

手前の手すりを見てもらえれば分かると思いますが、ちゃんと色を表示できるモニタであれば赤く転んでいるのが分かります。皆さんも是非自分のモニタで確認してみてください。モニタの発色に自信のない方はヒストグラムを活用して写真の色が自分の意図とは違う方向に転んでいないかチェックすると良いでしょう。

建築中のビルがメインの被写体となっているので、これは日の丸構図的に画面中央に寄せたほうがより安定感が出ます。ほんの少しのトリミングでもかなりの差がでるものです。この作品は人物が右下に配置されており、まさにここが一番の主役。クレーンと女性の赤い服がリンクしていてそこも魅力。そう考えると対角線上にある左上の空間がちょっと広すぎる気がします。ほんの僅かな差ですがこの面積を減らすことでより写真が分かりやすくなります。

レタッチ例では全体の色調を元のマゼンタ寄りの雰囲気を残したまま調整し、ビルだけややコントラストを上げ質感をだすようにしました。さらに手前の白い手すりにある不要なフリンジが気になったので、そこだけ彩度を下げて目立たなくしています。さらに同じ場所にノイズを加えてにじみを自然な感じにしました。

厳しく見れば改善点はあるものの、素晴らしい作品でした。幻の「パーフェクト the 免許皆伝」までかなり近いところまで達していたように思います。これを糧に今後も写真に取り組んでください。おめでとうございました!

〔左)元の作品 / 右)新納翔師範によるレタッチ見本〕

※スライダーのドラッグで表示画像を切り替えられます

師範より2月後半の総評

前回は入選作品全てが他メーカーのカメラによるもので、PENTAX道場なのに本当にいいのか?という波乱の結果でしたが今回は蓋を開けば全てPENTAX作品。面白いものですね、PENTAX魂に火が付いたのでしょうか。これだけは声を大にして言いますが、作品に関して忖度は一切しておりません。最終候補まで絞るまではExifデータをはじめ写真以外の情報は見ないようにしております。

今回は投稿数も過去最多ということでした。お題をこなすこと、オリジナリティを出すこと、この両方をいかにうまくクリアするかが鍵となってきます。やはり中には、お題をこなそうとするばかり、自分の写真が失われてしまっているように思う作品もあります。今回出た免許皆伝作品はそこが見事でした。次回からもその点に気をつけて撮ってみると良いでしょう。

良いトタン写真期待しております! 

最近特に投稿される皆様の熱意を感じます。その気持に応えたく、本当は全部の作品に講評を返したいのですがそうともいきません。それで私のTwitterアカウントの方にリプライいただければプチ講評をお返ししようと思いますので、ご希望の方は遠慮なく仰ってくださいませ。

記念品のお届けについて
くうさん、免許皆伝おめでとうございます!「免許皆伝看板」「免許皆伝ミニ木札」をお贈りします!
しらおかさん、hideさんには「免許中伝ミニ木札」、Melyukiinaさんには「門前払いミニ木札」をお贈りします!

記念品は3月中旬にお届け予定ですので、しばしお待ちくださいませ。

惜しくも選外となった、最終選考ノミネート作品をご紹介

今回惜しくも、最終段階で選ばれなかった作品の一部です。
残念ながら選外となりましたが、まだまだ後半戦がありますので、リベンジお待ちしております!

〔クリックで写真が大きくなります〕

以降のお題へのご投稿もお待ちしています!

>>募集受付中のお題はこちら