4月のお題は…『足もとの春』

小林義明 師範

暖かくなって植物が活動を始めると、足元から春は始まる。桜が咲くと視点は上に向いてしまうことが多くなるが、ちょっと意識を変えあらためて足元を見てみると、たくさんの春が身近なところに広がっていることに気づくだろう。
立派な桜を撮影したらそれで終わりにせず、視点を変えてもうひとつの春を探してみると面白い。作品をまとめる時にアクセントとなるワンカットとなるはずだ。
季節感を盛り込むことを忘れずに画面構成してみよう。

小林義明 師範からの4月のお題は足もとの春でした。
このお題に投稿いただいた中から師範が選んだ作品を、添削コメントを添えてご紹介します。

4月の挑戦者その4:木瓜さん

早春の棚田を訪れました。野焼きしたあとの足もとに、頭が少し焼けた蕗のとうが顔を覗かせていました。
レンズはペンタックスA 28-80mmを用いて中間リングを使用しています。
この組み合わせは面白いボケになります。
バックの雪山が白飛びしそうでしたのでハーフND8も使っています。

木瓜
埼玉県在住、男性。2018年1月に写真クラブに入り、そろそろ「写真をやっています。」と言えるようになって来ました。しかし、なんとなく構図が分かってきたと思っても、まだ、ノートリミングとはいきません。そのため若干トリミングすることが多いです。できれはノートリミングで撮りたい。これからは露出・ピント位置に気をつけて撮っていきたいと思います。とりあえずは、露出を絞り込んだらどうなるかを経験します。PENTAX K-5 IIsとsmc PENTAX-A 28-80mm F3.5-4.5で撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

小林義明 師範からの添削コメント

 

中間リングを利用した独特の描写が面白い写真だね。背景の山や森の様子もなんとなく伝わってきて、足元の春というイメージはうまくつかんでいると思う。野焼きのあとということで、フキノトウがよく焼けないで出てきたなぁって感心してしまったよ。

狙いはいいと思うので、主役をもっとしっかり見せたかったね。
このレンズは全体に甘い描写なので主役もなんとなくボケて見えるため、どこにピントが合っているのかわかりにくくなる。なので、ボケの面白さだけにとらわれず、写真を見たときに主役はこれだとすぐに分かるような画面構成が必要だと思う。

それにはもうちょっと近づいてフキノトウを大きく見せるといいと思う。背景はちょうど今と同じくらいになるよう画角を調整しよう。

またフキノトウのまわりにある草のボケがうるさい感じだ。前ボケになっている草は入れないようにするか、僅かに見える程度で十分だろう。

このレンズの描写を理解したうえで、より効果的な画面構成ができるように練習していこう。

4月の挑戦者その5:さがみどりさん

春になると薄暗い林の中ではシダが伸びてきます。スポットライトのように木漏れ日に照らされたシダの新芽は
暗い林の中ではことのほか美しく映え、周囲の雰囲気も併せてとらえるため広角で狙ってみました。

さがみどり
神奈川県在住、男性。山歩きついでに風景写真を撮っています。PENTAXのカメラ・レンズとは40年来のお付き合いですが、K-1を入手して以来、フィルム時代のレンズの写りの良さを再認識する日々です。PENTAX K-1とsmc PENTAX-FA 24-90mm F3.5-4.5で撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

小林義明 師範からの添削コメント

 

木漏れ日が落ちる林床の景色。シダが伸び始めていて、これも足元の春だよね。色鮮やかな花とは違うけれど、確実に季節の移り変わりを感じることができていると思う。画面中央あたりに光が強く当たっているシダを配置している見せ方もいいと思うよ。

いい雰囲気なんだけれど、もう少し春を感じられるようにしたいと思う。

それはシダの見せ方。
中央のシダも葉を広げようとしている状態だけれど、小さめに写っているのでパッと見た感じでは葉が開いているようにも見える。その状態をきちんと見せるためにもう少しシダを大きく見せるといいと思う。

そして、春らしさをより伝わりやすくするために、葉が開きかけているシダよりももう少し茎が伸びる前のクルクルと丸まっている状態のものを主役にしてやるといいと思う。

山登りの時に撮影したということなので時間がなかったかもしれないけど、ワンカットで終わりにせず、移動しながらよりイメージに合う場所を探して何枚も撮影してみるといいよ。

4月の挑戦者その6:sanko*さん

冬の天然のドライフラワーになった山アジサイ(?)と春の小さなヒメイチゲ。
季節のバトンタッチのように見えました。

sanko*
北海道在住、女性。主に草花木果を撮っている主婦です。 季節の色々な色が撮れればと思っています。PENTAX K-3とsmc PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8 WRで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

残念ながら・・・

小林義明 師範からの添削コメント

 

小さなヒメイチゲをシャープに撮ることができている。小さな花で地面の近くに咲くので、よく見ていないと気づくこともできないよね。ヒメイチゲだけでなく、地面に落ちたツルアジサイの花を組み合わせることで大きさを見せる工夫もいいと思う。季節のバトンタッチというイメージもいいね。

うまく撮れているのだけれど、この写真ではまわりを整理しすぎてしまった感じがする。
まわりをぼかして見せているために、今回のテーマである足元という部分もなくなってしまったのではないかな。

まわりをうまく整理できているので、少し画面の上の空間を広くして地面に近いことを表現してみるとか、落ちているツルアジサイの手前の部分を入れて地面に近い感じを見せるとか、ちょっとした構図の変化で今回のテーマに近いイメージに仕上げることができるように思う。

的確にピントを合わせて余分なところを見せないという基本的な技術はしっかりしているので、さらにまわりの雰囲気をうまく取り込めるような画面構成ができるように練習してみよう。

師範より4月後半の総評

春にはいろいろな花が足下で咲いているよね。その姿を見つけて捉えている作品が多かった。ただ、どの写真も足下感が弱いように感じたんだ。

たしかにその花は背が低くて足下で咲いているけれど、その足下という雰囲気をうまく伝えることができていないように思う。

今回挑戦してもらった写真の多くはうまく撮れていて、組写真として足下の感じを伝えるカットを組み合わせるとテーマにより沿ったものにできる。

一枚の写真でいろいろなことを伝えるのは難しいのだけれど、どうしたらそれが伝わるかを考えて工夫するのが写真の楽しさであり、表現だと思う。

これだ!という被写体を見つけたら、徹底的に悩んでいろいろ撮影してみよう。

記念品のお届けについて

木瓜さん、さがみどりさん、sanko*さんには「門前払いミニ木札」をお贈りします!

記念品は5月中旬にお届け予定ですので、しばしお待ちくださいませ。

その他の投稿作品をご紹介

最後に、4月後半のお題の投稿作品の一部をご紹介させていただきます。
こちらは師範の評価とは関係なく、今後挑戦される方に参考にしていただけるよう編集部にて選んで掲載しております。

〔クリックで写真が大きくなります〕

以降のお題へのご投稿もお待ちしています!

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