12月のお題は…『レイヤード』

ハービー・山口 師範

鏡や、水溜まり、ウィンドウに反射した光景は時にとても不可思議であったり、夢の中のようであったりします。写真家は昔から、鏡の中や水の反射を数多く捉えてきました。レイヤードとはファッション用語で重ね着と言う意味ですが、反射と実像を重ねた作品を見せて下さい。

 

 

ハービー・山口 師範からの12月のお題は『レイヤード』でした。
このお題に対して挑戦してくださった方の作品と、師範からの添削コメントを併せてご紹介します。

 

12月の挑戦者その1:tatsuya.bmpさん

ビルに反射する空が大好きです。

tatsuya.bmp
大阪府在住、男性。COLORFULな世界を表現したい休日フォトグラファーです。PENTAX K-S2とSIGMA 17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSMで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

 

残念ながら

ハービー・山口 師範からの添削コメント

 

画面全体を覆うブルーの色調が印象的な一枚です。実際の空とビルの壁に写り込んだ空が組み合わさることで、不思議な感じが出ました。
見方によってはビルが透けているのではないかと錯覚してしまいそうです。また、雲のすぐ裏側に太陽が輝いていますし、その太陽光の強さを示すように雲のエッジの輝きが美しいですね。画面のどこにビルを配置しようかと、カメラを向けながら迷い、最後に決まったのでしょうか。デザイン的にも安定していて、奥行きも出て来ました。

ただ、絵心のある方ならこのシチュエーションはフォトジェニックですからカメラを構えるでしょう。すると同じ様な絵柄の写真が沢山の人によって撮られますから、どこかでよく見る写真という範囲で留まってしまうのです。
そこで、この画面に画竜点睛というのでしょうか。画面のどこかに一点の別の要素が欲しいですね。
例えば空、またはビルの壁に飛行機が見えるとか、または赤い風船、ボールを一つ空に向かって投げるとかして、色の要素としてアクセントになるものを加えたら、また違った写真になったと思います。シンプルとはいえ、目を惹くものが欲しいのです。

12月の挑戦者その2:YTさん

私とワタシが触れ合う蜜室。

YT
福岡県在住、男性。どう写すかではなく何を撮るのか。ドラマはあるか。PENTAX MX-1で撮影。

 

師範の判定結果は・・・

 

残念ながら

ハービー・山口 師範からの添削コメント

 

応募して下さった作品は圧倒的に風景が多く、この作品が唯一人物を撮っています。女性がセクシーなポーズをとっていて、しかも場所が面白いですね。
家庭の中ではなく、また写真スタジオでもなく、これはショールームとか廃墟化した商業施設の中なのですか?一見、どこ?と思わせることで、すでにこの写真は目に留まります。

女性のポーズはそれほど奇抜ではないのですが、このシチュエーションを選んだセンスが良かったですね。画面の右側から差し込んでくる光の中に溶け込むようなモデルの存在が際立っています。
気になるのは、せっかくドラマティックな場面なのに、画面全体のザラザラ感は意図したものなのでしょうか。緻密で高密度な解像感があった方が、色気と美しさと、シチュエーションとのコントラストを生み、絶妙なドラマを作るのではないかと思うのですが。

また、画面上部にMAKEの文字も上に木片が見えますが、もっとカメラ位置を引いて、周囲の荒々しい状況を画面に入れても良かったのではないでしょうか。

12月の挑戦者その3:やっさん

ちゃんと生きてる昭和レトロな商店街など、思いのほか(失礼)見所が多い三重県桑名市市。
解体現場の壁に、向かい側のビルが反射してるのが面白くて撮りました。

やっさん
愛知県在住、男性。コンテストの類に応募するほどじゃないのは自覚してますが、チャレンジしてみたくなってきた!PENTAX KPとHD PENTAX-DA 16-85mmF3.5-5.6ED DC WRで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

 

残念ながら

ハービー・山口 師範からの添削コメント

 

再開発されている場面に私たちは度々遭遇しますが、なんとも言えない懐かしさとか、記憶の底を刺激される感覚を覚えますね。

向かいのビルからの反射光が手前の四角いパターンを作っているのですね。街の一角に新たにビルが立ったりすると、ある季節やある時刻にかつては無かった思わぬ光と陰が出来上がっていて、写真家を楽しませてくれます。

この壁の中の四角い光の中に人物を入れ込んだのですね。この人物の存在感が無かったら、この写真はこれほど人目を惹く事にはならなかったでしょうね。この写真の主役がこの1名と影の存在ですね。
そう考えると、画面左奥にある白く輝いたビルが、強すぎて人物の存在より目立ってしまっているのです。白トビしているから余計目障りになっているようです。

新しいビルと古い建物との対比にこだわっていらっしゃるなら、露出のコントロールやHDRなどでトーンを調整するか、構図を工夫してこの白いビルを思い切って画面から半分以上を排除するくらいのフレーミングやトリミングを試して見て下さい。

今回もあえなく3名とも『門前払い』となってしまいましたが、師範のコメントをご参考にしていただき今後も撮影を楽しんでいただければと思います。

また、「門前払い ミニ木札」をお贈りします!



ぜひ以降のお題にもチャレンジしてみてください!

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