9月のお題は…『消えゆくもの

ハービー・山口 師範

かつてかの木村伊兵衛さんは、新しいものより、時代に流されて消えてゆくものにレンズを向けていた、ということをある方からお聞きしました。あなたの周辺に消えゆくものがあったなら、ぜひ撮り残してください。

 

ハービー・山口 師範からの9月のお題は『消えゆくものでした。
このお題に投稿いただいた中から師範が選んだ作品を、添削コメントを添えてご紹介します。

9月の挑戦者その1:novitaさん

静岡県沼津市の商店街の撤去中のアーケードです。
近くに大型ショッピングモールも出来て、商店街には苦しい時代で、
さらに老朽化から撤去されてしまうアーケード。
このテーマを見た瞬間この写真が浮かびました。
魚眼でより広い視野で写すことでこの商店街を支え続けたアーケードが記録として残るかなと。
また、変わらないものは無いこの世の中で消えゆくものの儚さ、
見送る者の寂しさを銀残しの淡い色で表現できたらとカメラを持ったことを思い出します。

novita
神奈川県在住、男性。PENTAXの色味に惚れこんで、カブで地元の三浦半島を走り回って撮影したり、車で遠出したりしています。PENTAX K-70とHD PENTAX-DA FISH-EYE 10-17mm F3.5-4.5EDで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

もう一歩!

ハービー・山口 師範からの添削コメント

 

かつて繁栄した地元の商店街が時代の流れと共に消え去って行く。近くには大型ショッピングモールが現れ、新しい時代の波が押し寄せてくる。これはどこの地域でも抱える変化ですが、果たしてこの変化を人々は本当に望んでいるのだろうか、と考えてしまします。

個人の力では抗えない時代の変化を前にして、私たちは何を得、何を失うのかをしっかりと受け止めなければなりません。

魚眼を使ってのフォルムが朽ちて行くアーケードの全容を上手く表現しています。大がかりになりますが、ストロボを何灯か仕込んで、数件の店先を露出的に明るく持ち上げたいですね。

9月の挑戦者その2:tokutoku1002さん

北海道の廃線になった計呂地駅の車両宿に宿泊したとき、線路に白い花が風に揺れて綺麗でした。

tokutoku1002
東京都在住、男性。風景写真を中心に、旅写真やスナップ写真を楽しんでいます。PENTAX K-7とsmc PENTAX-DA★16-50mmF2.8 ED AL[IF] SDMで撮影。

 

師範の判定結果は・・・

もう一歩!

ハービー・山口 師範からの添削コメント

 

廃線はいつも絵になります。実は私自身も廃線が好きで、車で移動中など偶然に廃線を見かけると思わず車を停めて撮影します。

モノクロにより線路と白い花の対比が上手く構成されています。

消えつつあるものを見ると侘しくなりますが、この写真では廃線の行く末を、白い花が文字通り華を添えています。大袈裟に言うと、あらゆる事物には存在の意味、役割があることを物語っています。

遠方に見える駅舎も大切で、かつて線路が現役で使われていた時代が見えてきます。そして手前から遠方に続く線路ですが、可能な限り果てまで見せる構図は気持ち良いものです。

手前味噌ですが、私の写真を見ると、川、歩道、道路、線路などずっと向こうまで続いているものが写りこむ場合は、出来るだけ遠方まで見せる構図を取っています。

9月の挑戦者その3:YTさん

故郷、子供の頃から何度も訪れている近所の公園にて。
過去に自分も何度も乗ったブランコが撤去されようとする前の姿。
いろんな思い出がよぎり、切なくなった。

YT
福岡県在住、男性。どう写すかではなく、何を撮るのか。ドラマはあるか。PENTAX K-01とsmc PENTAX-DA 50mmF1.8で撮影。

 

師範の判定結果は・・・

お見事!

ハービー・山口 師範からの添削コメント

 

作者自らがかつてこのブランコで遊んでいたそうで、撤去される前の姿を眺め切なくなったという。この気持ちは大いに写真を見る人々の共感を呼び起こします。

この写真の優れているところは、撤去を待つブランコが黄色いフェンスで囲われいるのだと想像しますが、そのフェンス越しに、かつ浅い被写界深度を使って叙情的に表現したことです。

その浅いピント面にかろうじて捉えたブランコの一部分と手前の乾いた雑草が、記憶や時の流れによって生じた作者の感情に共感し、あたかも合唱しているがごとく儚く写っています。

 

YTさん免許皆伝おめでとうございます!「免許皆伝看板」「免許皆伝ミニ木札」をお贈りします!

novitaさん、tokutoku1002さんには「免許中伝ミニ木札」をお贈りします!
記念品は11月上旬にお届け予定ですので、しばしお待ちくださいませ。

その他の投稿作品をご紹介

最後に、9月のお題の投稿作品の一部をご紹介させていただきます。
こちらは師範の評価とは関係なく、今後挑戦される方に参考にしていただけるよう編集部にて選んで掲載しております。

〔クリックで写真が大きくなります〕

以降のお題へのご投稿もお待ちしています!

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