総合評価
「光学ファインダーを覗いて写真を撮る」という行為は、画家が両手の指でフレームを作って絵のデザインをする、あのポーズに似ていると思います。指の内側と外側の世界は同じ光のなかで連続性をもち、その一部を切り取る…そして、そこに自らの感じた色彩で仕上げていく…。私にとってK-3 Mark IIIは、素敵な絵の具と、それを描けるスケッチブックになりました。「対話するように撮る」とはこんなことでしょうか。また、「あの時はこう考えて撮影したんだ!」と楽しい記憶に残ることが「写真体験を資産にする」ことなのでしょう。K-3 Mark IIIは、それを見事に具現化してくれたカメラです。
製品コンセプト
まさに5つの PENTAX STATEMENT を具現化するカメラと思います。漁に例えてみると、最新ミラーレス機は、確実で大漁の獲れ高(撮れ高)を最優先にする「巻き網漁」とすれば、K-3 Mark IIIは「ルアーフィッシング」といったところでしょうか。工夫をこらした自慢のルアーを自作し、独自のテクニックでフィッシングを楽しむ…たとえ釣果が少なくても至福のひと時を過ごせる…。「明日、どんな獲物が獲れる(撮れる)んだろう?」とワクワクできますし、K-3 Mark IIIのおかげで、今まで以上に撮影法、画作りを考えるようになりました。とか、偉そうに言ってみても私は釣りはしないんですけどね。
光学ファインダー
私のPENTAX機の歴史は、銀塩のMEに始まり、デジタルはK-30、K-50、K-3を相棒にとしてきました。さすがにPENTAX機はいずれもファインダーも優秀ですので、正直なところ、K-3 Mark IIIのファインダー初めて覗いた時も、あまり皆さんが言うほどの感慨はありませんでした。なんと言ってもMEのファインダー視野が驚くほど広いので…(銀塩機と比べてはいけないのかもしれませんが)。ただし、カメラ店で他社機のファインダーと比較してみると一目瞭然!その見易さに圧倒されました。
画質
これはもう、元来、画質の評価が高いPENTAX機ですから言うまでもありません。液晶画面の高精細と相まって、撮影後のプレビューに息を吞みます。一層、磨きがかかりました。
動体性能
私の主な被写体は鉄道風景写真ですが、残念ながら新型コロナ緊急事態宣言下では表立った活動はできません。人混みを避けて早朝の江ノ電を撮影してみましたが、所詮、江ノ電のスピードでは評価できませんね(笑)。ただ、海辺で飛行する海鳥を狙ってみましたが、けっこうイケそうです。フォーカスエリアの拡大もあり、期待を込めての4★としました(旧型機なら2~3★ですから…失礼!)
操作性
如何せん私はMEを使用していた世代ですから、ガラケーからスマホに替えた時のように今は四苦八苦です。K-3初代から一気にK-3 Mark IIIですので、浦島太郎ですね。でも、スマホに慣れた今はスマホが必要不可欠なものになっているように、K-3 Mark IIIも「打てば響く」カメラになることでしょう。カスタマイズし放題!…こんな道具は「カメラ」に限らず他にも無いのでは?と思います。カメラ付属の取説では、この素晴らしさが、あまりにも伝わってこないのが残念です。K-3 Mark IIIの解説mookの発売を待ち遠しく思います。
デザイン
カメラを眺めて酒の肴にできるのは、PENTAX機とm4/3機の某メーカー機のみ!と昔から公言してきた私ですので、K-3 Mark IIIもとても良い「おつまみ」です。他のサイトで「K-3 Mark IIIはK-7を手にした時の感触」とコメントされた方がいましたが、私もまさに同感です。K-7発売当時、私は仕事の都合で他社機を購入したのですが、その時も「K-7が欲しい!あの凝縮感がたまらない!」とずっと憧れていました。デザインにも検討に検討を重ねたK-3 Mark IIIだけあってやはり秀逸です。私は昔から「カメラはシルバー!」と決めていて、初代K-3もシルバーエディションを購入したのですが、今回は「ブラックがむしろ似合ってた?」などと今でも思います。残念ながら2台は買えませんが…。
その他ご意見や、ご購入を検討されている方へのアドバイス
私はPENTAX機は「硬派も軟派もできる万能機」と思っています。「硬派」とは耐環境性能と精緻な画質、「軟派」とはカスタムイメージ「ほのか」やデジタルフィルターの豊富さです。約7年ぶりに新型機に触れて、ちょっと残念だったのは、その「軟派」が減ってきたことでした。正直、あまり使いませんでしたがデジタルフィルターの「水彩画」や「パステル」が無くなったこと、そして一番、残念だったのが再生パレットでの「インデックス」も無くなっていたことでした。もっとも、後から調べると、2014年以降の機種ではありませんでしたので、私が浦島太郎だったのですが…。「インデックス」は家族の記録として毎月ごとに作成するのが楽しみでしたので、復活していただければ幸いです。