PENTAX official企画『#カメラおたくの裏の顔』

カメラ、写真を好きになる人たちにはどんな共通点、特徴があるんだろう?
そんな議論で盛り上がったPENTAX official編集部員が、試しに自身の“裏の顔”を明かしていきます。

本記事は“車好き”代表のラリーより

 

皆さんこんにちは、ラリーです。

新型コロナウィルスの影響で、遠出をして撮影する機会が減ってしまったという方も多いのではないでしょうか。私もその一人で、昨年から写真を撮りに行く機会がかなり減ってしまいました。

さらにもう一つの趣味が車でドライブ(して地方の美味しいモノを食べること)なので、趣味を一度に2つも失ってしまうことになり、2020年はかなり悶々とした日々を過ごしていました。

そんなある日、ふと気がついたのは「そうだ、自分の車を格好よく撮ったことなかった!」ということ。確かに今まで所有した車の写真は、手元にほとんど残っていません。というのも、私のメインの被写体は人物であり、車は移動手段でしかなかったからです。

現在の愛車はフォルクスワーゲンのゴルフ6なのですが、この車の購入にいたるまで、色々な車遍歴がありました。

 

 

 

最近の車選びといえば低燃費で環境に優しいハイブリッド車、さらには衝突安全性能や直近では自動運転などのハイテク機能、そしてもちろん購入予算などが優先順位の上位に来ると思われますが、私の場合は流行からちょっとずれていて、まず最初にどれだけ気持ちよく走れるかということを重視しています。といっても別に走り屋というわけでもなく、例えばドアは4枚以上が条件です。

これは学生時代のメイン被写体がポートレートだったためで、後席にモデルさんを乗せるときに窮屈な思いをさせないようにとの考えからだったのですが、そんな機会がほとんど無くなってしまった今でも無意識に2ドア車は選択肢から外しています。

次に長距離ドライブでも疲れにくいこと。これはシートの形状や乗車位置が自分に合っているかどうかで大きく変わってくる重要なポイントです。

例えば日産スカイライン(R32)に乗っていたときは、前モデルから大幅にスポーティー路線に回帰したモデルだったので車高も低くなり、シートもセミバケットタイプでかなりタイトなものでした。これまでで一番運転が楽しかった車でもあったのですが2時間も走ると腰が痛くなり、渋滞にはまると見えるのは高速道路の遮音壁だけで、走りながら風景を楽しむこともままなりませんでした。

自分が乗った中で一番疲れなかったのは、断トツでボルボです。東京~大阪間を一人で運転して往復しても、ソファでくつろいでいるかのような座り心地で疲労も少なく、スキーに行くときは荷物もたくさん積めるし車内泊もしやすい。かなり贅沢で無理もしたのですが、腰痛持ちの私にとっては当時ベストな車であり、2台(850、V70)で20年乗り続けました。ただ、その後本社に転勤することになり、駐車場代の高さと1台あたりのスペースの狭さに驚かされ、もう少しコンパクトな車に興味がシフトし始めました。
さらに走行距離が8万キロを超えたあたりから主要パーツのメンテナンスがあちこち必要になってきたのですが、なんといっても部品代が泣くほど高い(大体国産車の3倍くらい)。

そして最近はかなり改善されつつあるようですが、国産車だったら絶対に壊れないだろ!というパーツが普通に壊れます。異常を検知するためのセンサーが先に壊れて間違った警告を出しまくるとか、給油口のドアが開かなくなるとか、日本の排ガス規制強化に急遽対応させたマフラーが目詰まりして最高時速30kmしか出せなくなったりとか、話題には事欠きません。

でも、しっかりと整備さえしてやれば運転はとても気持ちよく、長距離を走って帰ってきても心地よい疲労感に包まれながら、次はどこに行こうかと早くも次のお出かけプランを考え始めているのです。この辺は、苦労して納得のいく撮影ができたあと、それに満足せずにもう次の撮影をしたくてたまらなくなるという写真好きの気持ちと似たような感情かもしれません。

その後、オーバーヒートという今時では珍しいトラブルでボルボを手放すことになったのですが、メンテナンス費用や都内で扱いやすいサイズなどを考えた結果、一度はもう車にはお金をかけない!と決心し、中古でお買い得価格だったトヨタのランクスに乗り換えます。車自体はこれまでよりもコンパクトなハッチバックでしたので普通にキビキビと走って燃費も良く大きな故障もしない、そして何と言ってもアフターサービスのきめ細かさはさすが世界のトヨタだと、あらためてリスペクトしたのでした。ただ、どうしても一つだけ、運転しているときの高揚感、言いかえれば目的がなくても運転するためにどこかへ出かけたくなるようなドキドキワクワク感が自分には足りなかったのです。そこで車検&消費税増税前に買い替えすることにしたのですが、これまでの車のイイとこ取りをした車種というのは案外見つからないもので、結果的に「取り回しがしやすいけどキビキビ走れて長距離でも疲れにくいシート」を重視した結果、今のゴルフに落ち着きました。

随分と前置きは長くなってしまいましたが、いざ車の写真を撮ろうと思っても世の中は緊急事態宣言の真っただ中。近場が大前提になりますが、その他にも違法駐車をしない、周りに迷惑をかけないなど、案外ハードルがたくさんありました。近所を走り回ってやっと見つけたのが荒川の土手です。いざ撮り始めるとなかなか奥が深く、刻一刻と変化する夕暮れ時は、メタリック塗装への映り込みも目まぐるしく変化していきます。

これまでただ通り過ぎるだけの何気ない風景が、一瞬で愛車を記録するためのスタジオに変化し、天気の良い週末は何度も足を運ぶようになっていました。

 

エンブレムは車の象徴であり撮りやすい被写体の一つ

 

 

ナンバープレートカバーを自作してディーラー作例風に(外し忘れに注意!)

 

ここで写真を撮っていたら遠くに富士山のシルエットが見えることを発見

 

 

映り込みを積極的に利用することでまた違った雰囲気に

パースを強調した撮影ができるHD PENTAX-DA15mmF4ED AL Limitedは愛車撮影におススメの1本です。

これまで乗り換えてきた車種は決して多くない私ですが、ここにきてカメラも車も愛着がとても大事だなぁと感じています。これは単純に機種や車種の違いということではありません。自分が使い込んだ道具だからこそ小さな異変にも素早く気づくことができ、早めに対処できることがあります。

そして何よりも自分の愛機や愛車のクセを知りつくし、ある意味信頼関係を築いておくことで撮影や運転に集中し、思い通りの作品制作や快適なドライブを楽しむことができるのではないでしょうか。

とはいえ、カメラも車もいつかは買い替えの時期がやってきます。実は今の車で一つだけ妥協してしまったポイントがあって、それはエンジン音でした。

1400ccのエンジンからスーパーチャージャーやターボでパワーを絞り出すのが馬力と燃費を両立する最近のトレンドなのですが、さすがに音だけは6気筒エンジンの吹け上がりや大排気量エンジンの重厚なサウンドには遠くおよびません。私にとって音の大切さはカメラでも同様で、昔PENTAX Z-1を使っていた時にシャッターのリズムが今一つ自分に合わなかったのですが、その後にZ-1Pが出て連写速度も上がり、心地よいシャッター音を聞きながらリズムよく撮影できるようになって、納得いく作品のヒット率が飛躍的に上がったことを今でも覚えています。

聞いた話だと、最近のBMWでは気持ちよく運転してもらうためにフェイクのエンジン音をアクセルと連動してスピーカーから流しているそうで、自分の気持ちや満足感を高めるために、音はそれほど重要な要素なのです。そしてまもなく登場するPENTAX K-3 Mark IIIですが、個人的にはファインダーの見やすさよりも何よりも、撮影意欲を掻き立てられるシャッター音の切れの良さだけで次期愛機の座は確定済みです。

とはいえ、趣味のためのお財布は小さいのが一つしかありません。私にとっての愛車撮影は、今の車への愛着をより深めて車の買い替え欲求を抑え込み、ちょっと誕生まで時間がかかっているカメラの購入資金には手を付けない!という崇高な目的にも一役買ってくれているのでした。