PENTAX official企画『#カメラおたくの裏の顔』

カメラ、写真を好きになる人たちにはどんな共通点、特徴があるんだろう?
そんな議論で盛り上がったPENTAX official編集部員が、試しに自身の“裏の顔”を明かしていきます。

 

なぜ列車の旅か・・・

>>前回の記事では旅の準備の話をしましたが、今回は目的地へ着くまでの「プロセス」の話をしようかと思います。

まぁ「時刻表」の話をしたくらいですからね。以前は鉄道で旅をすることが多かったわけです。まだ「夜行快速 大垣行き」などが全盛の時代から、これを乗り継いであちこちへ行けたことは幸せでした。もちろんお供は「青春18きっぷ」ですね。

 

青春18きっぷをお供にいくつもの旅をしました。

 

あ、そうそう。この「青春18きっぷ」を買うのも、旅への大事なプロセスですね。いつから「青春18きっぷ」が自動券売機で買えるようになったのか分かりませんが、かつては「みどりの窓口」で購入するものでした。

ちょっとドキドキしながら「青春18きっぷを一綴りください」と声に出して言う。ドキドキする必要は何もないのですが、なぜだか武者震いをするんですよ(笑)。そう、ここからもう旅は始まっているんですね。

さて話を戻して旅立ちの列車に乗り込みます。大垣で夜行快速から乗り換えてさらに西へ西へと進みます。記憶がおぼろげですが、大阪あたりで通勤ラッシュにぶつかったのではないかと思います。そこからさらに山陽本線を西へ進みます。初めてこのルートをたどったとき、乗り降りする乗客から聞こえる「言葉」がだんだん変わってくることに気付きました。この「乗り降りする乗客の言葉が変わってくる」というのは、新幹線や飛行機、マイカー、夜行バス・・・ 他の交通手段では味わえません。こういう些細な積み重ねが「遠くまで来た」という気分を高揚させてくれるのですよね。

 鉄道ではありませんが、五島列島へ旅した時は、博多港から夜行フェリーで小値賀島を目指しました。2等船室で雑魚寝なのですが、ほとんどの人が博多で買い物をしたり、遊んだりして帰ってくる、島の人たちでした。そんななかぽつんと一人、ちょっと不安な心持ちになりながらも、島の人たちの言葉を聞きながら「あぁ、今まさに島へ向かっているんだな」と思わせてくれました。

 

五島列島への旅は博多からの夜行フェリーでした。

 

現地へ到着するにはもっと早くて便利な手段がたくさんあります。でもいきなり現地に到着すると、この「遠くへ来た」という気持ちが追い付かないまま、体だけ到着しちゃうんです。旅先で写真を撮ろうと思った時、この「遠くへ来た」という気持ちはとても大切だと思っています。

 旅先の喫茶店

いつもやるわけではないのですが、時々旅先について最初に「喫茶店に入る」ということをします。朝だったら朝ごはんをやっているお店でもいいですね。

何回目かの尾道再訪の折でした。それは駅前の普通のチェーン店のコーヒーショップでしたが、入って長い夜行の疲れを癒しながら地図と睨めっこして「今日はどこを廻ろうかな?」と想像をめぐらしていた時です。隣でコーヒーとドーナッツで世間話を楽しんでいたおじさん二人が声をかけてくれました。「お兄ちゃん、今日はどこを廻ろうと思っているんだい?」と。そこから二人は「僕のおすすめはねぇ、この路地をずっと行って〇〇寺まで行く道だね」「あぁそれもいいね。そしたらその後はこっちへ行ってみなさい」とあれこれアドバイスをしてくださり、最後に「いい旅をしていってくださいね」と送り出してくれました。どんなガイドブックよりも素敵な観光案内でした。

 映画は先に観ない方がいい

時系列が逆転するのですが、あまり旅先の情報を仕入れ過ぎない方がいい、ということもあります。上にも書いた、長崎は五島列島に旅をしたときのことでした。五島列島に行くことをSNSで予告したら、友人が島を舞台にした映画「くちびるに歌を」を「これを観てから行くといいよ」と勧めてくれたのです。なんだかんだで映画は観ずに旅に出ることになったのですが、旅先から帰ってきてしばらくしてこの映画を観て思ったのです。

 「先にこの映画を観てしまってから旅に出ていたら、きっと『ロケ地巡り』で終わってしまっただろうな」と。

 映画では確かにその地の美しい、印象的な場所を映像にしています。でもそれはあくまでも脚本家や監督の視点。そればかりを追いかけていては自分の目でその地を見ることにならないんですよね。

だから「先に映画を観ない」なんです。ま、そんなにこだわらなくてもいいと思いますが。

古い時刻表を見て前回の記事を書きながら思い出した、旅先のあれこれをとりとめもなく書いてしまいましたが、いかがでしたでしょうか。私はたまたま「旅」であり「写真」なのですが、そこに行きつくまでの「プロセス」にもいろんな愉しみがあり、またそれらはきっとそこで撮る「写真」にも何らかの影響を及ぼすのだろうなぁとあらためて思いました。

まだまだ出掛けづらい日々が続きますが、そんなことに思いをはせながら旅や撮影の計画を立てるのも、また楽しいのではないでしょうか。

 

尾道は何度訪れても旅人に優しい町でした。あちこちで声をかけられ道案内をされました。

 

街が変われば乗り降りする人の言葉も変わります。

 

五島列島(福江島)。こんな美しい光景にも出会えるのはもちろんですがが・・・

 

ガイドブックに頼らない旅をしているとたまにこんな素敵な出会いもあります。

 

こんな出会いも偶然でした。2年の島での赴任を経て本島へ帰ってゆく先生を見送る島の人々。