こんにちは。ファームウェア担当の一人、ねじです。

今回は撮影可能枚数についてお話させてください。

デジタルカメラのスペックシートに記載されている「撮影可能枚数」の数字をみなさん参考にされていると思います。例えば、新製品の K-3 Mark III であれば「約800枚」と書かれていますね。

この800枚という数字はどのように決められているのか、ざっくりと、本当にざっくりと説明したいと思います。

数値の決め方

デジタルカメラの撮影可能枚数はあるルールに則って決められます。 CIPA の電池寿命測定法です。 この規格はメーカーの裁量で多少自由度がありますが、ペンタックスもリコーGRもなるべくルール通りになるよう測定しています。

このルールでは30秒に1回撮影することになっています。ときどき電源オフさせながら撮影していくと K-3 Mark III なら800枚撮れるということになります。さて、みなさんはこのルールと同じように撮影をすることがあるでしょうか?あるとすればインターバル撮影を利用した場合が近いでしょうか。

本当は何枚撮れる?

リコーとペンタックスではルール通りなら撮影可能枚数を下回らないような数にしているので、もうほんの少しだけ撮れるはずです。でもみなさんが気にしているのはそんなことではないですよね。ガンガン連写して何枚撮れる?ということ、気になりますよね。

でもこの数字、中の人もほとんど知りません。私も知りません。理由はいくつかあるのですが、代表的なのは「たくさん撮れる」からでしょうか。K-3 Mark III は連続撮影枚数が 37コマで 連写は最高で毎秒 12 コマ、一気に撮るとたった 3秒ほどで 37 コマです。カードに全部書き込むには何秒かかかりますが、これを繰り返すという作業は実にヘビーなんです。あまりカメラにも優しくありませんし。

私の試算では 10分もあれば 1000枚は軽く超えます。(カメラに優しくないので写真を撮る目的ではない実験はお控えください。耐久力が減ってしまいますよ!) 800枚というのはあっという間にオーバーしてしまいますね。

しかしこの 10分の撮影だけで電池が空っぽになったりはしません。

 

テスト撮影のモデルはいつも愛犬(報酬はドッグランで)

撮影可能枚数をどのように活かすか

撮影の仕方で撮れる枚数が変わるということはお分かりいただけたと思います。ここでさらに踏み込んでみましょう。

仕様の表に電池寿命の再生時間という項目があります。K-3 Mark III の場合、250分とありますね。これは写真を再生表示し続けられる時間を指します。写真を表示するだけのほとんど止まったままの状態で250分、撮影可能枚数と比べるとだいぶ簡単な概念です。単位が枚数ではなく時間ですので 800枚とはそのまま比較できません。

しかし撮影可能枚数のルールでは1枚あたりにかかる時間が決まっています。30秒ごとに1枚の撮影ですので、800枚なら最低でも 400分*かかります。撮影と撮影の間の 30秒には節電が多少入りますので、節電の割合が少ない再生時間 250分より長くなっています。つまり節電しながらのんびり撮影していると 400分くらいの撮影ができることになります。また節電せずにテンポよく撮影を続けると 250分は保たないだろう**という目安になります。

400分だと6時間半、 250分だと 4時間以上です。相当頑張って撮影しても 2時間くらいは手堅く撮影出来ると予想できます。もちろん気温やレンズ、AFの回数や環境の明るさなど、条件によって変わってしまうのが難しいところです。

* 途中休憩が入りますがその間は電源OFFなので無視してください。
** さすがに撮影は再生よりも電力を消費します。

つまりデジタルカメラの!?

ということでデジタルカメラの撮影可能枚数というのは枚数として捉えるよりも、撮影時間の目安として捉えたほうが実用的と言えるのではないでしょうか。だったら最初からそのように仕様に書くべき、というのはとても良くわかりますが、ルールは守らなくてはなりませんし、撮影のテンポは人それぞれですのでお伝えすべき数字を定めにくく、今の形に落ち着いています。

開発現場(自宅)にて

ちなみに GR III の場合は撮影可能枚数が約200枚、再生時間が 約180分***です。同様に考えてみると 撮影時間が 100分くらいしか保たず、再生だけの方が電力消費がかなり少ないことがわかります。これは常にレンズ越しの情報をディスプレイしているライブビューが、いかに電力を消費するかということを表してもいます。一眼レフが省エネであるというのは広く知られていることですが、やっぱり光学ファインダー有ってこそですね。

*** 小さい電池でこの数字はすごいと思います。